【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

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第2部  第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第5話 誰だって怖い

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一行は翌日、エルの故郷への旅を再開することにした。もう目と鼻の先まで来ているらしい。出発前の段階で、エルはずっとそわそわした様子だった。朝メシを食べているときもちょっと様子がおかしかった。でも彼女は他人に悟られないように振る舞っている。決心したとはいえ、やっぱり頭の中は不安で一杯なんだろう。


「……はあ……。」


 旅支度の途中でふと廊下に出てみると、エルが不安そうにため息をついていた。人気がないところで、不安を発散させているみたいだ。よっぽど考え込んでいるのか、俺が出てきたことに気付いていない。刺激しないようにそーっと彼女の視界に入るように移動した。


「……あっ……!?」


 これでようやく俺に気付いてくれた。彼女はビクッと体を揺らした。人に見られたくなかったんだろう。凄い戸惑ってる。やっぱり無理をしていることが良くわかった。


「やっぱり……恐い? 怖いんだよね?」

「ち、違うの……。そうじゃなくて……。」


 彼女は慌てて取り繕い、笑って明るく振る舞おうとする。明らかに無理をしているので痛々しかった。


「……無理しなくていい。正直に言ってくれ。」

「……。」


 彼女は笑おうとしていたのを止め、少しうつむいて黙り込んでしまった。




 しばらくの間、沈黙が続いた。それでも、俺は待った。決して急かさず、彼女の方から口を開くのを待ち続けた。さすがにこのままではマズいと思ったので、行動に出た。


「……!?」


 俺は何も言わずに彼女を抱きしめた。その瞬間、彼女が息を飲み込むのが伝わってきた。そして微かに震えているのもわかった。


「俺もさあ、怖がりなんだよ。俺、昔っから弱かったから。当然勇者になってからも。強い奴とばっかり戦ってきたけど、その間もずっと怖かった。」


 俺は正直に告白した。これは本音だ。嘘はない。怖くなかった、勇気を振り絞った、とか言ってしまうと嘘になってしまうからだ。


「怖さを否定して、エルに無理をして欲しくない。無理をするのは勇気じゃない。怖さと向き合って認めるのが勇気だと、俺は思ってる。」


 一旦彼女から離れ、肩に手を置いて正面から顔を見る。


「だから、一緒に怖がろう。二人で怖がれば、怖さも半減すると思うから!」

「……なにそれ……。言ってること、無茶苦茶だよ……。」


 彼女は目に溜まっていた涙を拭きながら、笑い始めた。確かにヘンなことを言ったかもしれない。でも本気だ。冗談を言ったつもりはない。


「……じゃあ、行きましょ。みんなを待たせたら悪いし……。」


 彼女は何かに吹っ切れたように、部屋へと戻って行った。入れ替わりでミヤコがやってきた。すれ違いざまに思いっきり背中を叩いてきた。


「……痛って!?」

「ほら! ボサボサすんな! 早く行くぞ!」


 なんだかよくわからんが、えらく上機嫌だった。なにコイツ……。まあ、いいや。俺も早く準備してこよう。
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