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第5章 完成!究極の超次元殺法!!
第337話 勇気を振り絞って
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「ちょっといいかな、みんな。次の行き先についてだけれど……、」
宿を出てしばらく歩いていたところで、エルが遠慮がちに口を開いた。まだ少し遠慮があるとはいえ、自分の意見をちゃんと言えるようになってきた。いい変化だと思う。
「行き先? クルセイダーズの本部だけど、何か問題でも?」
そう次の目的地はクルセイダーズの本部だ。ファルやエドから一度立ち寄って欲しいとの話があったのだ。何でも総長が俺に会いたいと言っているらしい。正直、気が進まないのは確かだ。ヘンに目を付けられたのではないかと疑っている。“十字剣のユーリー”とかいうご大層な呼び名まであるんだから、絶対に難儀な性格の人なのは間違いなさそう。
「方向は同じなんだけど……寄り道になってっしまうかもしれないけど、行ってもいいかな?」
「……どこへ?」
寄り道か。何かおいしい名物でも食べに生きたいんだろうか? 甘いお菓子とか? それだったらいいけど……。
「私の実家……故郷へ寄って欲しいの。」
「な、なんですと!?」
「エルるんの実家帰省!?」
「エルしゃんのおうちでヤンスか? 興奮してきたでヤンス!」
え? も、も、も、もしや? ご両親にご挨拶とか? いや……でも、お母さんは亡くなってたはず。じゃあ、お父さんか? 父上様ですか? なんかそう考えると緊張してきた。
「お父さんにご挨拶しに行ったほうがいいの?」
「私のお父さんは……いないの。生まれてから、会ったことがなくて……。」
いない? じゃあ誰と暮らしていたんだろう? とはいえ、結構いいとこのお嬢様だったはずだよな? エルの家ってそれなりに有名な魔術師の家系だったと言っていたような?
「それはまた別の機会に話すとして……実家の様子を見に行きたいの。今の実家は叔母が当主を務めているはずだから……。それに従姉妹にも会いたいし、色々決着を付けたいことがあるの。」
その目は決意に満ちていた。まだ少し恐れがあるような気がするけど、勇気を振り絞っているんだと思う。俺が宗家に立ち向かったように彼女も過去に決着を付けたいんだろう。なら、全力でサポートするまでだ。俺も恩返しをしないといけない。
「じゃあ、行こう! エルの実家に。みんなで行けば怖くない!」
「レッツゴー! エルるんを応援するぞ!」
「あっしもハッスルするでヤンスよ! ふおおおおおっ!」
「みんな……ありがとう。」
みんなやる気だ。この勢いでエルの実家に乗り込むぞ! あ! でもその前にやることがあった! さっきのサヨちゃんの件ですっ飛んでしまって、やり忘れていたのだ。
「ちょっと渡したい物があるんだけど?」
「……何?」
エルは怪訝そうな顔で俺の顔を見つめる。これならちょっとしたサプライズになりそうだ。いいタイミングだ。機会がずれたけど、今が絶好のチャンスだ。
「はい、これ!」
俺はある物を取り出し、エルの手に渡した。
「カ、カチューシャ!?」
ミヤコが驚きの声を上げる。え? 何? そういう呼び方もあるの? ヘアバンドと聞いていたのだが……。ちなみに仲直りしたときのために、試合の日の合間に買いに行っておいたのだ。仲直りの印にと、いうことでプレゼントしたかった。ちょっとお高い品物だったので、ファルに借金して買った。クルセイダーズ本部へ行く目的の半分は借金を返すためである。
「これは……もしかして?」
ヘアバンドの真ん中にに付いている宝石に触ってから、エルはヘアバンドを頭に付けた。その姿は……、
「ゆ、勇者でヤンス! 勇者が二人いるでヤンス!」
「もうっ! センスないデザインだと思ったらそういうことか! どうせ選ぶんなら、ウチを呼べ! もうちょっといいヤツ選んであげれたのに!」
「別にいいよこれで……。私も勇者になったみたいだから……。」
エルの表情が少し変わった。目に宿った光が強さを増した。喜んでくれているようだ。良かった。
「これで決心が付いたような気がする。ありがとう。大事にするね……、」
エルが不意に顔を近付けてきた。そのまま俺の口に自分の口を接触させてきた。……キスだ。
「ちょ! ウチらの前でそんなことすんな! リアルが充実してる奴等はまとめて爆発しろぉ!」
「おうあっ!? カノジョがいない身にとってはダメージが大きいでヤンス! キュウっ!」
人前でこんなコトしてしまった。エルの方からしてきたんだから、断れないだろ。まあいいだろ。それぐらい。それに見合う経験をしてきたんだからな。胸を張りたい。
『ヤツは泥だらけになっても、傷だらけになろうとも立ち上がる。
それはいつか、あなたの勇気に火を灯す……。』
第一部、完。
宿を出てしばらく歩いていたところで、エルが遠慮がちに口を開いた。まだ少し遠慮があるとはいえ、自分の意見をちゃんと言えるようになってきた。いい変化だと思う。
「行き先? クルセイダーズの本部だけど、何か問題でも?」
そう次の目的地はクルセイダーズの本部だ。ファルやエドから一度立ち寄って欲しいとの話があったのだ。何でも総長が俺に会いたいと言っているらしい。正直、気が進まないのは確かだ。ヘンに目を付けられたのではないかと疑っている。“十字剣のユーリー”とかいうご大層な呼び名まであるんだから、絶対に難儀な性格の人なのは間違いなさそう。
「方向は同じなんだけど……寄り道になってっしまうかもしれないけど、行ってもいいかな?」
「……どこへ?」
寄り道か。何かおいしい名物でも食べに生きたいんだろうか? 甘いお菓子とか? それだったらいいけど……。
「私の実家……故郷へ寄って欲しいの。」
「な、なんですと!?」
「エルるんの実家帰省!?」
「エルしゃんのおうちでヤンスか? 興奮してきたでヤンス!」
え? も、も、も、もしや? ご両親にご挨拶とか? いや……でも、お母さんは亡くなってたはず。じゃあ、お父さんか? 父上様ですか? なんかそう考えると緊張してきた。
「お父さんにご挨拶しに行ったほうがいいの?」
「私のお父さんは……いないの。生まれてから、会ったことがなくて……。」
いない? じゃあ誰と暮らしていたんだろう? とはいえ、結構いいとこのお嬢様だったはずだよな? エルの家ってそれなりに有名な魔術師の家系だったと言っていたような?
「それはまた別の機会に話すとして……実家の様子を見に行きたいの。今の実家は叔母が当主を務めているはずだから……。それに従姉妹にも会いたいし、色々決着を付けたいことがあるの。」
その目は決意に満ちていた。まだ少し恐れがあるような気がするけど、勇気を振り絞っているんだと思う。俺が宗家に立ち向かったように彼女も過去に決着を付けたいんだろう。なら、全力でサポートするまでだ。俺も恩返しをしないといけない。
「じゃあ、行こう! エルの実家に。みんなで行けば怖くない!」
「レッツゴー! エルるんを応援するぞ!」
「あっしもハッスルするでヤンスよ! ふおおおおおっ!」
「みんな……ありがとう。」
みんなやる気だ。この勢いでエルの実家に乗り込むぞ! あ! でもその前にやることがあった! さっきのサヨちゃんの件ですっ飛んでしまって、やり忘れていたのだ。
「ちょっと渡したい物があるんだけど?」
「……何?」
エルは怪訝そうな顔で俺の顔を見つめる。これならちょっとしたサプライズになりそうだ。いいタイミングだ。機会がずれたけど、今が絶好のチャンスだ。
「はい、これ!」
俺はある物を取り出し、エルの手に渡した。
「カ、カチューシャ!?」
ミヤコが驚きの声を上げる。え? 何? そういう呼び方もあるの? ヘアバンドと聞いていたのだが……。ちなみに仲直りしたときのために、試合の日の合間に買いに行っておいたのだ。仲直りの印にと、いうことでプレゼントしたかった。ちょっとお高い品物だったので、ファルに借金して買った。クルセイダーズ本部へ行く目的の半分は借金を返すためである。
「これは……もしかして?」
ヘアバンドの真ん中にに付いている宝石に触ってから、エルはヘアバンドを頭に付けた。その姿は……、
「ゆ、勇者でヤンス! 勇者が二人いるでヤンス!」
「もうっ! センスないデザインだと思ったらそういうことか! どうせ選ぶんなら、ウチを呼べ! もうちょっといいヤツ選んであげれたのに!」
「別にいいよこれで……。私も勇者になったみたいだから……。」
エルの表情が少し変わった。目に宿った光が強さを増した。喜んでくれているようだ。良かった。
「これで決心が付いたような気がする。ありがとう。大事にするね……、」
エルが不意に顔を近付けてきた。そのまま俺の口に自分の口を接触させてきた。……キスだ。
「ちょ! ウチらの前でそんなことすんな! リアルが充実してる奴等はまとめて爆発しろぉ!」
「おうあっ!? カノジョがいない身にとってはダメージが大きいでヤンス! キュウっ!」
人前でこんなコトしてしまった。エルの方からしてきたんだから、断れないだろ。まあいいだろ。それぐらい。それに見合う経験をしてきたんだからな。胸を張りたい。
『ヤツは泥だらけになっても、傷だらけになろうとも立ち上がる。
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第一部、完。
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