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第5章 完成!究極の超次元殺法!!
第335話 卒業……それぞれの明日へ
しおりを挟む「冗談だろ?」
「冗談ではない。本気じゃ。」
「なんで!?」
「まあ落ち着け。」
落ち着けと言われても……。俺はいつになく動揺していた。いつも当然だと思っていたことが……当たり前じゃなくなる。それを目の当たりにしたら、冷静ではいられない。
「まあ……そろそろ頃合いじゃと思ったんじゃ。そなたとエル坊は強くなった。はじめは妾がサポートしてやらねば、戦いは疎か、生きることすら困難な状態じゃったのう。」
俺は路頭をさまよった末に勇者になったのはいいが、力を引き出せずヴァルに殺されかけた。エルも監禁先から脱出したのはいいけど、体内のデーモン・コアのせいで普通には生きられなかった。サヨちゃんの手助けがなければ今頃死んでいたかもしれない。
「ずっと付いていてやらねばならないと覚悟はしとったんじゃが、もう手助けは必要ないと判断した。そなたらは二人で生きてゆけ。もう、そなたらの間に割って入れるような者は誰もおらん。どんな困難が立ちはだかっても乗り越えていけるじゃろう。それはそなたら自身も実感しておるのじゃないかえ?」
確かに実感はあった。二人そろって病室で過ごす日々で何度かそう感じたことはあった。でもあくまで感じただけだ。実際に出来るかどうかまではわからない。でもやってみせたい。それだけの意気込みはある。
「そなたらだけの事だけではない。妾自身も磨き直す必要があると感じたからじゃ。」
「別にそんなことしなくても、十分強いじゃないか、サヨちゃんは。」
サヨちゃんは強い。人間じゃなく、最強種族のドラゴンだ。魔法だって、町を一発で消し炭に変えてしまうぐらいの魔法を使える。それなのに何故?
「そなたらと比べたらな。とはいえ今のそなたらには勝てる気がせんわい。まあ、それは気にしておらん。問題は今の妾では仇敵たる邪竜に敵わぬからじゃ。」
「え? でもあの時は互角だったんじゃ?」
「そなたは見てたわけではなかろう? あやつには手も足も出んかった。命からがら、奇策で逃れたにすぎん。」
そうだったのか……。自信家のサヨちゃんでさえそう思ったのか。あの邪竜がそこまで強かったとは。さすがにヴァルと結託しているだけのことはある。
「そなたの技を見て名案が閃いたのじゃ。それをヒントに鍛え直すつもりじゃ。次会うときはアッと驚く技を披露して見せよう。」
俺の剣技がヒント? 魔法と剣じゃ、やり方とか戦法が全然違う。どう応用するんだ? 見当がつかない。
「それに、そろそろ里に行こうと思ってな。移転先にはまだ行っておらぬ故、クエレにも苦労ばかりさせるわけにもいかんしのう。」
「ああ……そういえばそうだったな。」
ヴァルのせいで隠れ里のありかがバレてしまった。それで移転を進めるという話を思い出した。……クエレさん元気かなあ。
「ウチらは? ウチらは特に進展してないんだけど?」
「そうでヤンス! あっしらは特にゴールインしてないでヤンス!」
「ミヤコ、そなたは大丈夫じゃ。そもそも一人で活動していた身であろう。それに生成・変成の魔術の秘技はこの一ヶ月で授けてやったじゃろうに。それに……似合いの男くらい、そなたならいくらでも探せるであろう。」
「ええ~? まあ、そこまで言われたんなら、納得しちゃおうかな。」
コイツ自身、俺らと出会う前は一人でダンジョン潜ろうとしてたりするくらいだから、ホントに大丈夫だろう。ていうか、知らん間に魔法を教えてもらっていたのか? 神聖魔法だけじゃなくて、魔術も使えるってこと? 両方使える人は滅多にいないって、サヨちゃんから聞いたけど、ミヤコは“賢者”とか言われる存在なのか? そんな才能があったとは……。
「あっしは? あっしは?」
「そなたは商売の足がかりを掴んだのではないのか? もっと腕を磨くがよい。商売に関しては妾は専門外じゃ。自分で勉強するのじゃ。」
「ええ~、しょんなぁ!?」
商売? なんか前に言ってた自作のキャラクターを使った商売をするとか言ってたヤツか?俺の知らないところで二人とも色々やってたんだな。
「そういうわけじゃ。そなたらは妾がおらんでも十分やっていける。要するに……卒業じゃ。」
「卒業か……。」
そう言われると感慨深い物があるな。俺達は強くなった。逞しくなった。肉体的にも、精神的にも。
「じゃあ、お別れだな。また会えるの楽しみにしてそれぞれの道を進もうぜ。」
「ほう、以外とドライなんじゃのう。号泣でもするかと思うておったのに。」
「永遠の別れじゃないんだから。いちいち泣いてても仕方ないだろ。サヨちゃんの考えを聞いて納得できたから、問題ない。」
「言うようになったのう。まあ……だからこそ卒業なんじゃがな。」
俺達は宿を出て、それぞれの道を歩き始めた。これから、新たなる旅が始まる。果てしない旅が……。
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