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第5章 完成!究極の超次元殺法!!
第334話 心機一転、新装公開!
しおりを挟む入院生活は長く続いた。でも、楽しかった。ひたすら二人で話をしたりしていたので退屈しなかった。そのおかげで二人の仲はよりいっそう深まった。怪我の功名とはよく言ったものである。
「おおーっ、良いね、新コスチューム!」
旅立ちの日の朝、俺は新調した服に着替え、姿見の鏡で自分の姿を確認していた。前のはボロボロになってしまったので、入院中に作ってもらっていたのだ。前の野暮ったい服装に比べれば随分と格好良くなっていた。
「さて、みんなにも披露してやるか!」
みんな宿の一階にある酒場で待っている。ほとんどの仲間はこの町から帰ってしまっている。
クルセイダーズのメンバーはメイちゃん以外全員それぞれの仕事へ戻っていった。あのエドでさえだ。俺らほどではないが怪我だらけだったのに、ある程度治った時点で仕事に復帰したのだ。……働き過ぎだろ。いつか過労死するのでないかと心配になる。
「お待たせっ! どうだ、格好いいだろ!」
侍はいつの間にかいなくなっていた。今回は挨拶すらしなかった。とはいえ、アイツのことだ、また修行の旅に出たに違いない。次会うときもトンデモ戦法を身に付けているに違いない。
レンファさんはすぐに故郷へと帰っていった。名残惜しそうにはしていたが、新しくできた弟子の二人を守る必要があったので、この国を早めに離れたのだ。落ち着いたら、いずれ合流すると言っていた。
「悔しいけど、似合ってるんじゃない? ウチがデザインしたから、文句言えない。むむーう!」
今回の服装はミヤコがデザインしたものだ。この前、エルの服を作ったときはサヨちゃんの生成魔法との組み合わせだったが、今回は布から自分で作り上げたそうだ。案外、器用な特技を持っているモンだな。商売が出来そうなクオリティである。
「お待たせしました、皆さん。」
エルがやってきた。俺同様、新コスチュームだ。実は……俺の服とお揃いのデザインになっている。彼女の希望でそうなった。ミヤコが猛反対したが、エルも絶対に希望を曲げなかったので、そのまま押し通された。そのデザインはかわいい、美しいというよりも、格好いいという感じに仕上がっている。
「悔しいなあ! ウチのデザイン案の方が絶対似合うはずなのに。」
「ゴメンね。どうしても同じ感じにしたかったの。あのアイデアはまたの機会に、ということで、ね!」
デザイン的にはエルが着ても格好良くなるように主眼を置いたそうだ。それに引っ張られる様な感じで俺の服も格好いい物になった。ミヤコからすると不本意ではあるらしい。ということは何か、俺はダサい服のままでいいっていうのか?
「すまぬ、遅くなってしもうたわ。エル坊の化粧に手こずってしまってのう。」
サヨちゃんが後から出てきた。そういえば、エルは珍しく化粧をしている。今までは特にしていなくても綺麗だとは思っていたが、今日はいつもより、その綺麗さが際立っていた。こんなん、惚れ直してしまうだろ!
「ロアよ、そなた以外と落ち着いておるのう。妾の知っておるそなたであれば、エル坊の姿を見て顔を真っ赤にしておっただろうに。……急に大人になりおったのう。」
「いや、そんなことない。変わってないだろ? エルの姿を見て嬉しいのは変わりないし、そんな大げさにリアクション取る必要ないし。」
「態度もそうじゃが、その呼び方! いつからちゃん付けをやめたんじゃ?エル坊も揃って名前で呼びおるし……変わりおったな。」
「……なんでだろ? いや、なんか、もう自然にというか……。」
「私も……なんとなく…かな?」
お互いに心の垣根を越えた、という気がする。もう、他人行儀でなくパートナーとして接しようとしただけだ。それは彼女も同じ様に思ったのだろう。
「それはそうと……旅立つ前に二つほど話しておきたいことがある。」
「……二つ?」
二つということで話が長くなりそうな予感がした俺は間近にあった椅子に座った。みんなも俺に合わせて座った。
「まずは一つ目。あの男……宗家からの伝言じゃ。そなたの処遇について……今後、命を狙うような事はしない、との事じゃった。そなたを梁山泊の“分派”としての活動を認める、とも言っておった。」
「俺が“分派”!?」
意外な処断だった。まさかそんな結果になるとは思わなかった。せいぜい戻ってくるように言われるのかと思っていたが……。まあ、いいや。とりあえず勇者はそのまま続けられそうだ。
「じゃが、その一方で“蚩尤一族”に気を付けよ、と言っておった。奥義を究めたのであれば、必ず奴等が命を狙いに現れると、な。特に“四凶”の“トウテツ”に警戒せよ、と。これが何を意味しておるのか、妾でさえもさっぱりわからん。あの男がここまで言うんじゃ。警戒するに越したことはないであろう。」
“蚩尤一族”? “四凶”? “トウテツ”? 初めて聞いたが、なんだろう? 何か心がざわめくのを感じた。無意識の部分がソイツらを警戒しろ、と言わんばかりだった。
「伝言はこれで終わりじゃ。次の二つ目の話に入るかのう。結論だけ先に言う。……妾は本日から、旅の同行を取りやめることにした。」
「な、なんだって!」
俺は思わず立ち上がってしまった。耳を疑いたかった。嘘だと思いたい。でも、それを否定するかのようにサヨちゃんの表情は真剣だった。……いつもなら意地悪そうな顔をして、ほくそ笑んでいたのに……。
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