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第5章 完成!究極の超次元殺法!!
第333話 泥まみれでも二人なら……、
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「……はっ!? あ、あれ!?」
気が付けば、俺は天井を見上げていた。手足の感触からすると、ベッドに寝かされているらしい。体を動かそうとしても体中に違和感がある。体のあちこちが色んな器具で固定されているみたいだ。何カ所も骨折したからだろう。しかし、いつの間にこんなとこへ来たんだろう? 俺はエルを医務室へ連れて行く途中だったはずだが? なにか記憶が飛んでいるような気がする。……それはそうと、なにか視線を感じる。すぐ側から。なにか温かい気配がする。
「気が付いた?」
首を動かしてエルの方向を見る。隣のベッドに彼女はいた。優しげな目で俺を見ている。
「ここは?」
「ここは町の病院。ずっと医務室を使うわけにもいかないからって、移動したの。せっかくだから部屋も同じ所にしてもらったの。ちょっとお金はかかったみたいだけど。」
ふつうは男女別々になりそうなとこだけど、一緒にしてもらえたのか。病院側はともかく、ミヤコあたりが大反対しそうなことなのに。良く説得できたもんだ。どれだけお金を出したのだろうか。
「この前はありがとう。」
「……この前?」
「あなたは三日間意識がなかったの。あの後、私を医務室に連れて行って、ベッドに私を寝かせた途端、気を失って倒れたの。」
まるっきり記憶が無い。エルを抱きかかえて、中に入っていったところまでしか憶えていない。完全に記憶が飛んでいる。
「そのあと、あなたは男性用の医務室に運び込まれて……集中的に治療が行われたの。あとから聞いてみたら、大変だったらしいよ。本当に生きているのが奇跡的なくらいだったの。骨が何カ所も折れていたのに、私を抱きかかえたり、戦ったり、説明が出来ないくらい不思議な事が起きてた。左腕が折れてたのに、だよ?」
そういえば試合の過程で折られたはずだ。利き腕ではないからという理由で唯一完全に破壊されていたはず。でも、最後らへん、気を失ったあたりからで自然に両手を使っていた。痛みも感じなかった。何故だろう?
「あと他にも不思議な事があって……勇者の額冠だけど、試合の前に外したんだよね? 私は最初から見ていなかったから知らなかったけど。ファルさんがこの前返しに来て初めて気付いたの。」
なにを言おうとしてるのかがわからない。そこのなにが不思議なんだろう?
「外したはずの額冠があなたの額に見えていたの。他の人に聞いたら、途中から浮かび上がってきたらしいわ。不思議でしょう?しかも体から金色のオーラが迸っていたって、みんな言ってるよ。見間違いじゃなくて、本当に起きていたの。奇跡を起こしていたのよ、あなたは。」
奇跡? 確かに思い返してみれば、途中から額冠を付けたときのような高揚感がこみ上げてきたような……。奥義を放つ前も何か額が熱くなって、勇気が迸ってきた。外した状態でも勇者の力を発現できるようになったのだろうか?
「それとね……あの時は言えなかったけれど、これだけは言わせて。……かっこよかったよ!」
「……!?」
ま、マジで! そんなこと生まれて初めて言われたような気がする。嬉しいのは確かだけど、不思議と落ち着いていた。あの試合を経て、精神的なものが色々変化したような気がする。今なら……。
「……なあ、これからもずっと一緒に生きていこう。俺と一緒に来てくれるかい?」
「うん。いいよ。その言葉をずっと待ってた。やっと言ってくれたね。」
「やっと言えるようになった。君の目を見ながらね。」
「ありがとう。」
俺は右手をエルの方へと伸ばした。彼女もそれに応じて手を伸ばしてきた。そして、手を繋ぐ。
「……ううっ。」
「……いてて!」
お互い怪我をしてロクに動けない身だ。そうなるのは必然だった。それでも、やった。怪我とかそういうのは今関係ない。
「痛いね……。」
「痛いけど……嬉しい。ずっとこうしていたい。」
「ホントはキスでもしたかったけど、今は無理だな。怪我が治るまでお預けだな。」
「多分、罰が当たったんだよ。お互い無茶しすぎたから……。」
「……そうかもな。」
そこで急に笑いがこみ上げてきた。遠慮せずに笑った。彼女もつられて笑っている。でも……、
「……いてて。」
「……痛い。」
最早、笑うときでさえ痛みを感じるぐらい二人はボロボロになっていた。多分これからもそうやって生きていくのだろう。二人一緒なら、どんなことでも乗り越えていけるだろう。
気が付けば、俺は天井を見上げていた。手足の感触からすると、ベッドに寝かされているらしい。体を動かそうとしても体中に違和感がある。体のあちこちが色んな器具で固定されているみたいだ。何カ所も骨折したからだろう。しかし、いつの間にこんなとこへ来たんだろう? 俺はエルを医務室へ連れて行く途中だったはずだが? なにか記憶が飛んでいるような気がする。……それはそうと、なにか視線を感じる。すぐ側から。なにか温かい気配がする。
「気が付いた?」
首を動かしてエルの方向を見る。隣のベッドに彼女はいた。優しげな目で俺を見ている。
「ここは?」
「ここは町の病院。ずっと医務室を使うわけにもいかないからって、移動したの。せっかくだから部屋も同じ所にしてもらったの。ちょっとお金はかかったみたいだけど。」
ふつうは男女別々になりそうなとこだけど、一緒にしてもらえたのか。病院側はともかく、ミヤコあたりが大反対しそうなことなのに。良く説得できたもんだ。どれだけお金を出したのだろうか。
「この前はありがとう。」
「……この前?」
「あなたは三日間意識がなかったの。あの後、私を医務室に連れて行って、ベッドに私を寝かせた途端、気を失って倒れたの。」
まるっきり記憶が無い。エルを抱きかかえて、中に入っていったところまでしか憶えていない。完全に記憶が飛んでいる。
「そのあと、あなたは男性用の医務室に運び込まれて……集中的に治療が行われたの。あとから聞いてみたら、大変だったらしいよ。本当に生きているのが奇跡的なくらいだったの。骨が何カ所も折れていたのに、私を抱きかかえたり、戦ったり、説明が出来ないくらい不思議な事が起きてた。左腕が折れてたのに、だよ?」
そういえば試合の過程で折られたはずだ。利き腕ではないからという理由で唯一完全に破壊されていたはず。でも、最後らへん、気を失ったあたりからで自然に両手を使っていた。痛みも感じなかった。何故だろう?
「あと他にも不思議な事があって……勇者の額冠だけど、試合の前に外したんだよね? 私は最初から見ていなかったから知らなかったけど。ファルさんがこの前返しに来て初めて気付いたの。」
なにを言おうとしてるのかがわからない。そこのなにが不思議なんだろう?
「外したはずの額冠があなたの額に見えていたの。他の人に聞いたら、途中から浮かび上がってきたらしいわ。不思議でしょう?しかも体から金色のオーラが迸っていたって、みんな言ってるよ。見間違いじゃなくて、本当に起きていたの。奇跡を起こしていたのよ、あなたは。」
奇跡? 確かに思い返してみれば、途中から額冠を付けたときのような高揚感がこみ上げてきたような……。奥義を放つ前も何か額が熱くなって、勇気が迸ってきた。外した状態でも勇者の力を発現できるようになったのだろうか?
「それとね……あの時は言えなかったけれど、これだけは言わせて。……かっこよかったよ!」
「……!?」
ま、マジで! そんなこと生まれて初めて言われたような気がする。嬉しいのは確かだけど、不思議と落ち着いていた。あの試合を経て、精神的なものが色々変化したような気がする。今なら……。
「……なあ、これからもずっと一緒に生きていこう。俺と一緒に来てくれるかい?」
「うん。いいよ。その言葉をずっと待ってた。やっと言ってくれたね。」
「やっと言えるようになった。君の目を見ながらね。」
「ありがとう。」
俺は右手をエルの方へと伸ばした。彼女もそれに応じて手を伸ばしてきた。そして、手を繋ぐ。
「……ううっ。」
「……いてて!」
お互い怪我をしてロクに動けない身だ。そうなるのは必然だった。それでも、やった。怪我とかそういうのは今関係ない。
「痛いね……。」
「痛いけど……嬉しい。ずっとこうしていたい。」
「ホントはキスでもしたかったけど、今は無理だな。怪我が治るまでお預けだな。」
「多分、罰が当たったんだよ。お互い無茶しすぎたから……。」
「……そうかもな。」
そこで急に笑いがこみ上げてきた。遠慮せずに笑った。彼女もつられて笑っている。でも……、
「……いてて。」
「……痛い。」
最早、笑うときでさえ痛みを感じるぐらい二人はボロボロになっていた。多分これからもそうやって生きていくのだろう。二人一緒なら、どんなことでも乗り越えていけるだろう。
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