【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

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第5章 完成!究極の超次元殺法!!

第323話 決意の先に見た幻影

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「さあ、皆さんお待ちかね、決勝戦の日がやって参りました!一体どれだけの方がこの日を待ち望んだことでしょう!」


 俺達がやってくる頃には会場の盛り上がりが最高潮に達していた。この試合は俺の処刑も兼ねていることはほぼ誰も知らないはずだ。それを知らずに楽しもうとしているのだから、少し気の毒に思う。例え少しでも無様な戦いにならないようにしたい。


「この大武会の決勝まで勝ち昇ってきたのは、ザ・タービュレンスと梁山泊・宗家の二チームです。我らが勇者コンビと東洋の達人の対決となります。両者はどんな戦いを見せてくれるのでしょうか?」

「ちょっといいかな?」

「おっと、ここで勇者様から何かお話があるようです!」


 誤解を生むといけないので、ここで宣言しておきたい。最初からファルは戦わずに一対一で戦うことになるから。


「決勝戦は俺一人だけで相手と戦う。相手も一人だから、その方がいいと思う。」


 会場からどよめきが起こる。そりゃそうだ。基本タッグ戦形式で進めて来たわけだし、観客もそれを期待していたはずだ。


「何ということでしょう! 準決勝に続き、一対一の試合を希望している様です!しかし、パイロン選手は了承するのでしょうか?」

「構わぬよ! 良い覚悟だ。受けて立とうではないか!」


 いつの間にか宗家も姿を現していた。こちらの希望は受け入れられたようだ。


「だが、私も一つ提案がある。試合形式についてだ。」

「試合形式ですか?」


 次々に出場者から提案を持ち込まれ、司会の人も戸惑っている。試合形式の提案とは一体何なのか?


「梁山泊名物“百修百業”で試合を行いたい。」

「“百修百業”だと……!?」

「何だよ、それは? 俺にも説明しろ!」


 ファルが抗議の声を上げる。同時に会場からも更なるざわめきが巻き起こった。俺もまさか、そんな単語をこんな所で聞くとは思ってなかった。しかも……あの荒行をここでやるというのか!


「一本先取では試合はすぐ終わる。それではつまらん。観客も見に来た甲斐がなくなってしまうであろう。“百修百業”であればその心配はない。百回戦う内に勝利回数が相手を上まるか、相手を戦闘不能に陥らせた時点で勝敗を決する。この方式であれば、観客も大いに満足するであろうよ。」

「恐るべき提案です! 百回も戦い続ける試合形式は聞いたことがありません! 採用すれば想像を絶する試合となることは必至です!」


 “百修百業”。それは梁山泊が誇る、屈指の荒行の一つである。これが行われるのは五覇の選定、違反者の処刑に用いられる。百本戦うことにはなっているが、最後まで続けられた話は伝わっていない。大抵はどちらかが途中で命を落とすからだ。


「わかった。それでいいよ。」


 俺は了承した。確かに一本形式では即座に負ける可能性はある。命がけの荒行とは言え、元々死ぬ可能性が高いのだ。それならいっそ提案を受け入れることにした。甘い考えかもしれないが、せめて一本だけでも取れるようにしたい。


「勇者様が試合形式の提案を受け入れました! さすがは勇者様です! その勇気を大いに讃えねばなりません! もしかしたら、我々は新たな伝説を目の当たりにすることになるかもしれません!」


 大げさに言ってくれるなあ。観客も盛り上がってくれたみたいだし、文句は言えないかな。あとは……、


「なあ、ファル。預かっておいて欲しい物があるんだけど?」

「あ? 何を預かればいいんだ?」


 俺は頭に付いている、“アレ”に手をかけた。それを目にしたファルは明らかに動揺している。「マジかよ!」って言いたげな雰囲気だ。でも、そのまま“アレ”を頭から外した。案外、すんなりと外れてしまった。昔は外そうとしても外れなかったのに。


「テメエ、何やってんだ! それを外すのはどういう意味かわかってんのか!」


 俺は“勇者の額冠”を外した。この戦いはあくまで“俺自身”の戦いだ。“勇者”としての戦いじゃないから、俺は勇者を止める決意をした。勇者が処刑されて死んだなんて実績を残すわけにはいかなかったからだ。


「俺が死んだら、お前が勇者になってくれよ。お前自身も勇者になるつもりだったんだろう?」

「縁起でもないこと言うんじゃねえ! 俺はお前に勝って、勇者になるつもりなんだ。死ぬな!」

「そうか、わかった。善処するよ。」


 俺は額冠を相棒に預け、最後の戦いへと向かう決意を固めた。


『……君のその勇気に敬意を表する……。』


 誰かもわからないような声が聞こえたような気がした。俺はその時、幻を見た。白い鎧を着た騎士が目の前にいた。顔は何故か見えない。後光が差して、眩しくて見えなかった。彼は俺に対して敬礼をしていた。さっきの声もこの人物が発したものかもしれない。


「……誰?」


 俺が名前を聞こうとしたときには、その人物は姿を消していた。本当に幻だった。歴代勇者の誰かなんだろうか? でも、勇者王の剣に触れたときはあんな人はいなかったような気がする。あんな立派な騎士なら一度見たら忘れられないはずなのに……。
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