323 / 401
第5章 完成!究極の超次元殺法!!
第323話 決意の先に見た幻影
しおりを挟む「さあ、皆さんお待ちかね、決勝戦の日がやって参りました!一体どれだけの方がこの日を待ち望んだことでしょう!」
俺達がやってくる頃には会場の盛り上がりが最高潮に達していた。この試合は俺の処刑も兼ねていることはほぼ誰も知らないはずだ。それを知らずに楽しもうとしているのだから、少し気の毒に思う。例え少しでも無様な戦いにならないようにしたい。
「この大武会の決勝まで勝ち昇ってきたのは、ザ・タービュレンスと梁山泊・宗家の二チームです。我らが勇者コンビと東洋の達人の対決となります。両者はどんな戦いを見せてくれるのでしょうか?」
「ちょっといいかな?」
「おっと、ここで勇者様から何かお話があるようです!」
誤解を生むといけないので、ここで宣言しておきたい。最初からファルは戦わずに一対一で戦うことになるから。
「決勝戦は俺一人だけで相手と戦う。相手も一人だから、その方がいいと思う。」
会場からどよめきが起こる。そりゃそうだ。基本タッグ戦形式で進めて来たわけだし、観客もそれを期待していたはずだ。
「何ということでしょう! 準決勝に続き、一対一の試合を希望している様です!しかし、パイロン選手は了承するのでしょうか?」
「構わぬよ! 良い覚悟だ。受けて立とうではないか!」
いつの間にか宗家も姿を現していた。こちらの希望は受け入れられたようだ。
「だが、私も一つ提案がある。試合形式についてだ。」
「試合形式ですか?」
次々に出場者から提案を持ち込まれ、司会の人も戸惑っている。試合形式の提案とは一体何なのか?
「梁山泊名物“百修百業”で試合を行いたい。」
「“百修百業”だと……!?」
「何だよ、それは? 俺にも説明しろ!」
ファルが抗議の声を上げる。同時に会場からも更なるざわめきが巻き起こった。俺もまさか、そんな単語をこんな所で聞くとは思ってなかった。しかも……あの荒行をここでやるというのか!
「一本先取では試合はすぐ終わる。それではつまらん。観客も見に来た甲斐がなくなってしまうであろう。“百修百業”であればその心配はない。百回戦う内に勝利回数が相手を上まるか、相手を戦闘不能に陥らせた時点で勝敗を決する。この方式であれば、観客も大いに満足するであろうよ。」
「恐るべき提案です! 百回も戦い続ける試合形式は聞いたことがありません! 採用すれば想像を絶する試合となることは必至です!」
“百修百業”。それは梁山泊が誇る、屈指の荒行の一つである。これが行われるのは五覇の選定、違反者の処刑に用いられる。百本戦うことにはなっているが、最後まで続けられた話は伝わっていない。大抵はどちらかが途中で命を落とすからだ。
「わかった。それでいいよ。」
俺は了承した。確かに一本形式では即座に負ける可能性はある。命がけの荒行とは言え、元々死ぬ可能性が高いのだ。それならいっそ提案を受け入れることにした。甘い考えかもしれないが、せめて一本だけでも取れるようにしたい。
「勇者様が試合形式の提案を受け入れました! さすがは勇者様です! その勇気を大いに讃えねばなりません! もしかしたら、我々は新たな伝説を目の当たりにすることになるかもしれません!」
大げさに言ってくれるなあ。観客も盛り上がってくれたみたいだし、文句は言えないかな。あとは……、
「なあ、ファル。預かっておいて欲しい物があるんだけど?」
「あ? 何を預かればいいんだ?」
俺は頭に付いている、“アレ”に手をかけた。それを目にしたファルは明らかに動揺している。「マジかよ!」って言いたげな雰囲気だ。でも、そのまま“アレ”を頭から外した。案外、すんなりと外れてしまった。昔は外そうとしても外れなかったのに。
「テメエ、何やってんだ! それを外すのはどういう意味かわかってんのか!」
俺は“勇者の額冠”を外した。この戦いはあくまで“俺自身”の戦いだ。“勇者”としての戦いじゃないから、俺は勇者を止める決意をした。勇者が処刑されて死んだなんて実績を残すわけにはいかなかったからだ。
「俺が死んだら、お前が勇者になってくれよ。お前自身も勇者になるつもりだったんだろう?」
「縁起でもないこと言うんじゃねえ! 俺はお前に勝って、勇者になるつもりなんだ。死ぬな!」
「そうか、わかった。善処するよ。」
俺は額冠を相棒に預け、最後の戦いへと向かう決意を固めた。
『……君のその勇気に敬意を表する……。』
誰かもわからないような声が聞こえたような気がした。俺はその時、幻を見た。白い鎧を着た騎士が目の前にいた。顔は何故か見えない。後光が差して、眩しくて見えなかった。彼は俺に対して敬礼をしていた。さっきの声もこの人物が発したものかもしれない。
「……誰?」
俺が名前を聞こうとしたときには、その人物は姿を消していた。本当に幻だった。歴代勇者の誰かなんだろうか? でも、勇者王の剣に触れたときはあんな人はいなかったような気がする。あんな立派な騎士なら一度見たら忘れられないはずなのに……。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―
物部妖狐
ファンタジー
小さな村にある小さな丘の上に住む治癒術師
そんな彼が出会った一人の女性
日々を平穏に暮らしていたい彼の生活に起こる変化の物語。
小説家になろう様、カクヨム様、ノベルピア様へも投稿しています。
表紙画像はAIで作成した主人公です。
キャラクターイラストも、執筆用のイメージを作る為にAIで作成しています。
更新頻度:月、水、金更新予定、投稿までの間に『箱庭幻想譚』と『氷翼の天使』及び、【魔王様のやり直し】を読んで頂けると嬉しいです。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる