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第5章 完成!究極の超次元殺法!!
第315話 先生の素顔
しおりを挟む「先生……なんで、あんなことを……。」
私は控え室で意識を取り戻した後、すぐさま闘技場の方へと向かった。一緒に戦えると思っていたのに、先生は一人で試合へ赴いた。私が気弱な所を見せてしまった…悟らせてしまったから、こんなことになってしまったんだと思う。
「……自分の無力さを痛感しながら、沈むが良い!」
闘技場に辿り着いた時、もう既に手遅れになっていることを悟った。先生は膝をつき、苦しそうに行きを乱している。相対する宗家さんは技の構えを取っている。イグレスさんへ最後の攻撃を行ったときと同じ形だった。間違いなく、先生に止めの攻撃を行おうとしている!
「拳覇奥義、闡嘉八掌!!!」
間に合わなかった。先生は為す術なく、無慈悲な攻撃を全身に受けていた。壊れた人形のように先生の体は宙を舞っていた。反撃の意志は微塵にも感じられない。完全に負けを受け入れているようにも感じた。
「……擂折っ!!!」
最後の攻撃が先生の顔に当たった。その反動で付けていた仮面にヒビが入った。先生の体はそのまま、地面に落下し、ピクリとも動かなくなった。ヒビの入っている仮面は落下の衝撃で真っ二つに割れ、その下から美しい素顔が露わになった。
「やはりな。正体は貴様だったか。」
「そんな……まさか……先生、」
その美しい顔は普段発せられている声の印象と、あまりにもかけ離れていた。声の印象は壮年の男性のものだった。素顔の人物と先生は別人なのではないかと疑いたいくらいだ。
「……私と同じ、女性だったんですね……。」
先生の正体は声の印象通り、彼の兄だと思っていた。彼の身近な存在、家族だと思っていた。それは間違っていなかった。……確かに、彼の師父には義理の娘がいるとは聞いていた。彼にとっては姉のような存在だったと……。
「先生の正体は……レンファさんだった……。」
当然、名前も聞いていた。彼本人からではなくて、サヨさんから。彼の記憶を覗いた事のある彼女が教えてくれた。彼の初恋の相手だとも聞かされた。さすがに彼本人からそんな話は聞けない。私が彼に特別な思いを抱き始めた頃に聞かされたのだ。破門後、祖国を離れた際にはそういう感情は捨てたらしいとも教えてもらった。
「なんということでしょう! ヘイフゥ選手の正体が女性だったことが発覚しました! しかも、絶世の美女です! ブラック・ロータスは美女の師弟コンビだったのです!」
会場からは驚きとざわめきが混じったような反応が巻き起こっている。正直、私としては騒ぎ立てるようなことはして欲しくなかった。先生が晒し者になっているように感じて、不快に思えてしまう。
「試合の結果は出た。次はあの男の処刑を行うのみか……。」
宗家はその場から立ち去ろうとしている。まだ、終わってない。私がいるのに!
「させません!」
私は言葉を遮るように、彼の目的を阻止する意志を伝えた。彼は足を止め、ゆっくりと振り返った。
「何と申した?」
「させないと言ったんです!」
「貴様がか?」
彼は私を睨み付け、私の近くまでやってきた。
「本日から貴様を弟子としてもらい受けることになった。その女…貴様の師と試合前に交わした条件だ。私が勝利した故、その権限を実行させてもらう。」
「その前に私たちブラック・ロータスはまだ負けていません! 私を倒してからにしてください。」
見ているだけで震えが止まりそうにないくらい、恐ろしい威圧感を相手は放ってきている。私は勇気を振り絞って、毅然と立ち向かう姿勢をとった。先生のためにも……そして、私の愛する彼のためにも、立ち向かわないといけないと思ったから!
「貴様のような者が私に敵うと思っているのか? 即刻、棄権せよ。私に勝つ事など、天地がひっくり返ろうとも、起こりえない事だ。無謀な挑戦は止せ。」
「私は引きません!」
「貴様がここで戦おうとも、結果は何も変わりはせんのだ。貴様を弟子にすること、あの男を処刑するという事実に影響することはない。無駄だ。無駄な努力は身を滅ぼすぞ。」
「そんなことは絶対にさせません! 私は命を賭けても、あなたを止めてみせます!」
相手は私の言葉に怯むどころか、ますます威圧感を強め、戦闘の意志を示し始めた。
「よかろう。身を以て私の強さを思い知らせてやろう。さすれば、弟子になることを決心することになるであろう。」
更なる絶望感が私を襲う。それでも立ち向かわなくてはいけない。彼を失うわけにはいかないから。
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