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第5章 完成!究極の超次元殺法!!
第297話 拳覇の奥義
しおりを挟む「鎧を脱ぎ捨て身軽になったとしても、私の技を凌ぎきれるとは思わぬことだ。」
それは百も承知している。先程のような鎧通しの技以外も使ってくるということだろう。だがそれでも構わない。
「おお、そういえば忘れておった。貴様の技に対しての見解を聞かせてやろう。」
スクリュウ・ガストの事か?あれほど完膚なきまでに防がれてしまっては、安易に使うわけにもいかなくなったからな。それだけでも十分だというのにまだ何かあるというのか?
「あの技は相手の体を破壊するという点においては申し分なかろう。だが、威力を追求するあまり精度を著しく欠いておる。精度が低ければ急所に当たらず、相手を仕留め損ねる。これは私の推測だが、貴様は急所の概念のない敵ばかりを相手にしすぎておるのではないか?」
まさかな。一つの技だけで私の素性まで見抜かれてしまうとは。恐ろしいほどの洞察力だ。
「正解だ。普段の私は悪魔退治を主任務としている。技のみで推察するとは恐れ入る。」
会話の途中で痛めた右腕に持つ剣を、左手に持ち直す。基本は右手に持ってはいるが、戦場ではトラブルは日常茶飯事だ。片方の腕が使用不能になった場合でも、どちらの手でも使えるようにしているのだ。
「ふはは!常日頃、修羅道に身を置いておるとはな。ますます気に入った。ならば見せてみよ、悪魔のみに見せる本性を我が前で解き放って見せよ!」
今度は珍しく相手の方から仕掛けてきた。余程、気に入られたようだ。相変わらず鋭い攻撃だが、決死の覚悟を持った今の私ならば辛うじて反応できる。甲冑を脱いだことも相まって、躱すことが出来るようになった。それでも相手は構うことなく、殺気のこもった全力の一撃を立て続けに繰り出してくる。
「ますます良い動きをするようになった!やはり、鎧など足枷に過ぎぬのだ!」
嵐のような連撃は止まることなく繰り出される。先程までとは立場が逆になっている。だが、今の自分には攻撃の機会が見いだせない事が大きな違いだろう。こうなれば……、
「とうっ!」
「むっ!?」
私はとっさに蹴りを繰り出した。当たりはしなかったものの、相手の意表を突き、間合いを離すことには成功した。あの技をお見舞いするチャンスが出来た。
「間合いを取って、大技でも仕掛けるつもりか?よかろう、受けて立とう!」
私は前傾姿勢を取り、光の闘気を剣へと集中させる。あの勇者の三奥義に全てを賭ける!
「シャイニング……ガスト!!」
かつてはロアに破られた技ではあるが、あの日以降鍛錬を重ね、より磨きをかけた。それに加え今は鎧を脱ぎ、スピードが増している。より勢いを増しているはずだ!
「一0八計、開門……、」
相手もこちらに向かってきた。私の予測通り、あの技で迎え撃つつもりのようだ。二度も同じ技は食わん!
「転んでも、ただでは起きないのが私の流儀だ!」
突きの姿勢から、横薙ぎの一撃へと変化させる。これなら、あの技で受けることは出来ないはずだ!
「一0八計が一つ、死門霍鐐!」
なぎ払った瞬間、相手が視界から消えた。と、同時に自分の足に何かが絡まる感触がし、いつの間にか私の視線は空を仰ぎ見る形になっていた。転倒させられたのだ!
「止めだ!」
(ゴギッ!)
左肘に耐えがたい苦痛が走る。腕の関節を外されたようだ。
「むぐぅぅ!?」
「どうだ?これではもう戦えまい!」
両の腕に損傷を与えられてしまった。どうやら、相手は降参を求めているらしい。だが……、
「まだだ!まだ私の戦いは終わっていない!」
なるべく、足だけの力で起き上がる。まだ、立ち上がれる以上は戦いをやめるわけにはいかない。
「まだ立ち上がるか?ここで止めにしておく方が、貴様のためだぞ。」
「言ったはずだ。私だけの意志ではない。相棒の思い、それだけではない。私の全ての仲間や、声援を送ってくれている人々のためにも、私はまだ倒れるわけにはいかんのだ!」
自分自身のためだけに戦っているのではない。チャンプである以上はそれ相応の戦いをしなくてはならない。それに……、
「こだわる男だな、貴様は。負けるとわかっている戦にそこまで体を張れるのは何故だ?」
「貴公が処断しようとしている男から学んだことだ。例え望みが少なくとも、最後まで諦めない事をな!」
「あの腑抜けからか?」
「腑抜けなものか!彼の人を救いたいという“思い”がなければ、私はあの日、命を落としていただろう。彼一人の働きであの場にいた仲間全員が命を救われたのだ!」
だからこそ、今ここに私はいる。技を破られ、腕を壊されようと、生きている限りは戦いを続ける。
「正直、私も初めて対面したときは見くびっていた。勇者としての自覚が薄く、動きにも洗練さが欠けるとさえ思っていた。だが、彼はその印象を覆し、想像を超える働きを見せた。」
相手はまだ眉をひそめ、私の言葉に疑念を持っているようだ。
「あの日の彼は悪魔の力に体を蝕まれた娘を慈悲の刃によって、救ったのだ。しかも、貴公らの流派の奥義によってだ。私もその身に受けたからこそわかるのだ。断言してもいい。彼は奇跡を起こして見せたのだ!」
「八刃が慈悲の刃だと?」
“八刃”という言葉を口にした瞬間、彼の目の光が鋭くなった。ただならぬ気配を感じる。
「あんな未熟者にそんな大それた芸当が出来るものか!……良かろう、特別に真の奥義の姿を見せてやろう。紛い物との違いをはっきりと見るがよい!」
相手は技の構えをとった。剣術と拳術の違いがあるとはいえ、気配でわかる。次に来るのはあの奥義で間違いない。
「拳覇奥義、闡嘉八掌!!!」
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