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第4章 勇者の剣と剣の巫女

第232話 勇者の底力

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「よう、勇者?そろそろ年貢の納め時だなァ、オイ!!」


 タニシと子猫は救った。アイツは傷つき、ふらつきながら子猫を連れて逃げることに成功した。後は魔王に追いつかれない距離まで到達してくれれば、問題ない。俺が囮になって魔王の注意を引きつければいい。


「これからたっぷりと痛めつけてから、トドメを刺してやるからな!」


 とりあえず今は逃げた二人のことは気にしていないようだ。このまま釘付けにするには都合がいい。


「オラァ!!」

(ドカッ!!)

「うぐあっ!?」


 魔王の一撃で傷ついた体を蹴り飛ばしてきた。相手を殺すとかそういう目的が感じられない。こちらの痛みが強くなるような死なない程度の攻撃だった。


「おっとっと!悪い、悪い!ついつい怪我の所に当たっちまったわ!次は間違えねえからな。よっと!」

(ゲシィッ!!)

「ぐぐっ!?」

「まただぁ!俺様ってば、不器用だなあ!またやっちまったよ、すまん、すまん!」


 傷の所を執拗に攻めてくる。非常に苦しい。まだ、出血も止まっていない。痛いのはともかく、出血はマズい。いつまで体が持つかわからない。動けなくなる前に状況を打開しないと……。


「へっ、健気なもんだな、勇者ってのは!お前ぇも逃げちまえばいいのによ。立場が立場だから逃げるわけにはいかないってか?そりゃそうだよなあ!名声に傷が付いたらシャレになんねえもんなあ!」


 そうだ。立場上逃げるわけにもいかない。俺は勇者だ。勇者が勇気を無くしてしまったら終わりだ。例え絶望的な状況で勝ち目がなかったとしても。でも……待てよ?そういえば、先代のカレルは追い詰められた時、何をした?ヴァルから逃げたからこそ、俺に出会ったんじゃないか?彼は自分に出来うる限りのことをしたんだ。俺も自分なりの方法で打開すべきなのでは……。


「どうした?急におとなしくなっちまいやがって。諦めが付いたか?それとも、意識が朦朧として何も考えられなくなったか?」


 意識が朦朧としているから、むしろ冷静になってきているかもしれない。


「俺が協力してやるよ!気付けに一発キツいのをお見舞いしてやんよ!」


 さらに状況が悪化しそうだ。だけどやれることはある。この状況ならあの技しかない。
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