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第4章 勇者の剣と剣の巫女

第210話 暴虐の破壊者

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「今度は俺様の番だ!巫女ちゃんも長年の恨みを晴らしたんだ。俺も恨みを晴らさないとなあ!」


 魔王はその口から鋭い牙をむき出しにして、両手の指の関節をボキボキと鳴らした。ただでさえ恐ろしい姿なのに、更に凶悪さを強調した。


「違う!ウチはそんなことしてない!アンタなんか知らないもん!」

「つれねえことを言うなよ。俺たちゃ、一蓮托生だろう?」


 遊び人は必死に抗議する。それでも魔王は意に介していない。魔王は遊び人を共犯に見せかけようとしている様でもある。それより……、


「恨みって言っても、“牛頭の魔王”自体はずっと前に倒されていたんだろ?怒りの矛先を俺に向けるの間違ってない?」


 倒したのはシャルルだ。俺はエルちゃんを救うために残りカスを処理しただけなんだけどなあ?


「あぁ?うるせえ、止めを刺しやがったのはテメエだろうが!俺のダチを消しやがった罪は重いぜ!」


 魔王は中指を立てて、敵意を強調した。問答無用ということか。だったら、やるしかない。剣の不備という不安要素があるけど。


「サヨちゃん、周囲の人を避難させてくれ!巻き込む可能性はあるし、デーモン・シードの影響もあるかもしれないし……、」

「デーモン・シードだぁ?安心しな!俺ぁ、そんな野暮なモンは使やしねえぜ!」


 何々、どういうこと?使わないっていうのか?前にエドから聞いた話じゃあ、基本的に垂れ流しになってるから危ないんじゃなかったか?


「へっ!ありゃあ、蛇の奴がやり出した小細工よ!おおっぴらに戦争でも始めない限りは使わねえよ、少なくとも俺はな!肉体がやられてコアだけになっちまったら話は別だがよ!」


 コアが本人の制御から離れたら、垂れ流しになるのか。なんかよくわからんけど。ていうか、“蛇”って誰?またなんか新しいヤツの情報が出てきたな?


「まあ、あんなモン使わなくとも余裕って事よ。聞いたぜ、勇者?オメエ、今、剣がないんだってなあ?だったら、尚更、オメエを嬲り殺しにするには絶好の機会じゃねえか?つまんねえ小細工は剣の破壊だけで十分なんだよ。後は俺様だけの力で遊ぶだけだ!」


 どこからそんな情報を聞いたのだろう?魔王軍の関係者と会うのは、コイツが初めてのはずなんだけどな?どこから漏れたのやら?考えてもわからないことなので、今はコイツを倒すことに専念しよう。刀を抜いて戦闘態勢を取る。


「あなたの思い通りにはさせません!」

「あぁ?なんだ、お前は?」


 エルちゃんが俺のとなりに進み出てきた。その手には既にライなんとかっていう武器を手にしていた。大型の鎌の刃を展開している。


「うん?それは……ゴズの野郎が使っていた武器じゃねえか!さてはお前……アイツが最後に依り代にしてた女か?じゃあ、お前もついでに始末してやる。勇者と仲良くあの世へ行きな!」


 虎魔王は戦闘態勢に入ろうとしていた。ただでさえ強いオーラをさらに噴出させて、恐ろしい殺気を放っている。


「まずは挨拶代わりにコイツを喰らいな!」


 拳に黒いオーラを纏わせ、俺達に向かって突き出した。黒いオーラがこちらに向かって飛んでくる!前に魔王化したエルちゃんが使ってきた攻撃とは比べものにならない!


「くそう、霽月八刃!」


 エネルギーの塊ならこれで斬れるはず!でも、手にしている武器は使い慣れていない刀だ。刃を黒い塊に当てた瞬間、若干斬りにくさを感じた。それでもなんとか、魔王の攻撃を凌ぐことは出来た。飛んできた黒いオーラは消滅した。


「へぇ!案外、やるじゃねえか!タイガー・ブラストを無効化するたぁ、大したモンだ!俺はこの攻撃で数え切れないほどの人間どもを倒してきたんだぜ。もちろん、その中に何人か勇者も混じってるぜ?」


 無効化したのはいいが、手の痺れが収まらない。十分強力な攻撃だ。何発も撃たれると凌ぎきれないかもしれない。せめて剣が自分に合った物を使えるんなら、なんとかなりそうなんだけどな……。
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