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第3章 迷宮道中膝栗毛!!
第156話 ……死ぬことと見つけたり。
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「刀が折れたぞ、オイ!交代だ!」
俺はすかさず前に出て、侍に交代を促した。しかし、ヤツはピクリとも動かなかった。剣を振り下ろした体勢のままで固まっている。刀を折られたショックで動けなくなってしまったか?
「パゴア、パゴア!哀れな奴よ!100年の鍛錬は無駄だったようだな。所詮、定命の者ではこの程度が限界よ!」
定命?聞き慣れない単語だな。寿命があるってこと?不死身になっただけでマウント取るなよ。俺なら確実にお前にダメージ与えれるんだからな。覚悟しとけよ。
「哀れな男には処刑という慈悲を与えてやろう。死んであの世で無為なる人生を送ったことを後悔するが良い!」
命の危険が迫っているのに、侍は動かない。石化でもしたんじゃないか?
「……武士道とは、死ぬことと見つけたり。」
突如、侍は口を開いた。何かヘンなこと言い始めた。辞世の句かな?
「どうした?遺言か?いいだろう、許可をくれてやる。敗者の弁でもなんでも良いから、言いたいのならば申すが良い。多少の時間はくれてやろう。」
むかつくなあ。余裕かまして侍をおちょくってやがる。俺なら速攻で八刃してやるんだけどなあ。
「修羅道とは……、」
何か言いかけたところで折れた刀を投げ捨て、構えを取った。今度は素手でやり合うつもりか?でも、手を見ると何か見えない刀を持っているかのような形になっている。とうとう、幻覚まで見え始めたのか?
「……倒すことと見つけたり!!」
(シュバッ!!!)
空気を切り裂いたような音が響き渡った。何が起きた?エア刀が奇跡を起こしたのか?……よく見ると、ダイヤ野郎の体に大きく斜めの刀傷が付いていた!しかも、侍の手には折れたはずの刀が握られている。
「貴様!どこにそんな物を隠し持っていた?」
「隠す?否、これは拙者が術により具現化した刀なり。これは常に拙者と一心同体、我が肉体の一部なり。」
今気付いたけど、さっき折れた妖刀は側に転がっていた。あれ?じゃああれはどこから出てきたの?一心同体とか言ってるけど、意味がわからない。体から生えてきたのか?お侍さん、刀、生えてますよ!
「あれはまさか!?アストラル・ブレイド!」
ファルちゃんが驚いている。あの手品のトリックがわかったのかな?
「え?何?明日取られる・無礼講?」
「アストラル・ブレイドだ!馬鹿!あれは魔力で錬成した武器だ。要は俺のヴォルテクス・ブレイドと似たようなもんだ。」
魔法で作った刀だと!じゃあホントに冗談じゃなくて、体から生えてきたのか。ファルちゃん、お得意の風の剣と同じ原理だとは。でも、なんか見た目が違うな?ファルちゃんのやつは実体がない空気の剣みたいだったし、侍のは本物そっくりの刀だ。実体がある。
「悔しいが、アイツのアレの方が精度が上だ。さすがに俺でも実体化は出来ない。」
「どういうこと?」
「魔力という物は強力な物ほど実体化するものなのじゃ。程度の差はあるが金剛石の王の体と同じじゃ。当然、魔光結晶の方が遙かに魔力は上質じゃ。」
「そんなにすごいのか、アレ!」
自前で剣が作れるほど、魔法が得意だなんて、ある意味チートじゃないか!何をしたらそんなことに……って100年迷宮にこもってたからか。俺もそんくらい修行すれば、同じ事ができるようになるだろうか?
「パゴア!我が肉体と同じく魔力錬成で作った物か。侍如きが使いおるとは!」
「拙者は……100年待ったのだ。お主のような分別のない外道に、武士道を穢されてたまるものか!」
侍は再び斬りかかった。目にも止まらない速さだ。俺と戦っていたときよりも速い。あの時はまだ本気を出してなかったのか。
(ピシュン!!)
「ぐおあ!?」
ゴトン、という音とともにダイヤ野郎の腕が切り落とされた。さすがにアイツも悲鳴を上げていた。処刑するつもりが、形勢逆転して処刑される立場になってしまったようだ。
「雷光一閃。神速の一太刀なり。」
侍の刀を見ると、刃の部分が雷を纏ったように光り輝いていた。魔法も併用しての一撃だったのか。
「ライトニング・ブレイドも併用してやがるのか!……いや、あの刀自体雷の魔力で錬成しているのか?」
雷の魔力?でも何か変だな。俺と戦っていたときもそうだったけど、地属性の魔法が得意だったんじゃないのか?いきなり雷を使うなんてどういうこと?雷らしい技は例の正拳突きぐらいしかなかったはず?でも、アレ、どこにも雷要素がなかったような……。
「地属性の魔法を使っていた貴様が何故、雷属性の魔法を使えるのだ?地属性は雷属性を阻害する故、相性は悪いはず!魔術師ならともかく侍の貴様が何故、こんな芸当が出来るのだ!」
「従来の常識ではそうであろう。物は使いよう、使い方によっては際立たせることも可能となる。これは100年の鍛錬の賜物なり。」
魔法属性同士の相性のことはサヨちゃんから聞いたことがある。火は氷に強く、氷は風に強く、風は土に強く、雷は水に強く、水は火に強い。というように順繰りに強弱関係が成り立っているらしい。
「拙者は本来雷属性の術を得意としているが、地属性の術を極め、刀を作ることを考えた。素材を見極める上で金属、鉱石の性質を吟味する内にあることに気が付いた。それは雷を遮断する物、雷を透過する物があると。」
人それぞれ、魔法属性には適性があるらしい。得意属性に弱い属性の魔法は使えなかったり、使えても効果が弱くなってしまうそうだ。風の魔法が得意なファルちゃんが偽竜帝と戦ったときに地属性魔法を使ってたけど、あれはあくまで低位の魔法だから使えたらしい。普通は熟練の魔術師しかできない芸当だそうだ。そういう意味では侍がそこまで使いこなせるのは異常なことなんだろう。
「拙者は雷の術を蓄える事が出来る素材を吟味して、雷と地属性を併せ持つ刀を作ったのだ。相互作用により雷の術を際立たせることが出来る。名付けて“地雷也”。我が最強の刀なり!」
俺はすかさず前に出て、侍に交代を促した。しかし、ヤツはピクリとも動かなかった。剣を振り下ろした体勢のままで固まっている。刀を折られたショックで動けなくなってしまったか?
「パゴア、パゴア!哀れな奴よ!100年の鍛錬は無駄だったようだな。所詮、定命の者ではこの程度が限界よ!」
定命?聞き慣れない単語だな。寿命があるってこと?不死身になっただけでマウント取るなよ。俺なら確実にお前にダメージ与えれるんだからな。覚悟しとけよ。
「哀れな男には処刑という慈悲を与えてやろう。死んであの世で無為なる人生を送ったことを後悔するが良い!」
命の危険が迫っているのに、侍は動かない。石化でもしたんじゃないか?
「……武士道とは、死ぬことと見つけたり。」
突如、侍は口を開いた。何かヘンなこと言い始めた。辞世の句かな?
「どうした?遺言か?いいだろう、許可をくれてやる。敗者の弁でもなんでも良いから、言いたいのならば申すが良い。多少の時間はくれてやろう。」
むかつくなあ。余裕かまして侍をおちょくってやがる。俺なら速攻で八刃してやるんだけどなあ。
「修羅道とは……、」
何か言いかけたところで折れた刀を投げ捨て、構えを取った。今度は素手でやり合うつもりか?でも、手を見ると何か見えない刀を持っているかのような形になっている。とうとう、幻覚まで見え始めたのか?
「……倒すことと見つけたり!!」
(シュバッ!!!)
空気を切り裂いたような音が響き渡った。何が起きた?エア刀が奇跡を起こしたのか?……よく見ると、ダイヤ野郎の体に大きく斜めの刀傷が付いていた!しかも、侍の手には折れたはずの刀が握られている。
「貴様!どこにそんな物を隠し持っていた?」
「隠す?否、これは拙者が術により具現化した刀なり。これは常に拙者と一心同体、我が肉体の一部なり。」
今気付いたけど、さっき折れた妖刀は側に転がっていた。あれ?じゃああれはどこから出てきたの?一心同体とか言ってるけど、意味がわからない。体から生えてきたのか?お侍さん、刀、生えてますよ!
「あれはまさか!?アストラル・ブレイド!」
ファルちゃんが驚いている。あの手品のトリックがわかったのかな?
「え?何?明日取られる・無礼講?」
「アストラル・ブレイドだ!馬鹿!あれは魔力で錬成した武器だ。要は俺のヴォルテクス・ブレイドと似たようなもんだ。」
魔法で作った刀だと!じゃあホントに冗談じゃなくて、体から生えてきたのか。ファルちゃん、お得意の風の剣と同じ原理だとは。でも、なんか見た目が違うな?ファルちゃんのやつは実体がない空気の剣みたいだったし、侍のは本物そっくりの刀だ。実体がある。
「悔しいが、アイツのアレの方が精度が上だ。さすがに俺でも実体化は出来ない。」
「どういうこと?」
「魔力という物は強力な物ほど実体化するものなのじゃ。程度の差はあるが金剛石の王の体と同じじゃ。当然、魔光結晶の方が遙かに魔力は上質じゃ。」
「そんなにすごいのか、アレ!」
自前で剣が作れるほど、魔法が得意だなんて、ある意味チートじゃないか!何をしたらそんなことに……って100年迷宮にこもってたからか。俺もそんくらい修行すれば、同じ事ができるようになるだろうか?
「パゴア!我が肉体と同じく魔力錬成で作った物か。侍如きが使いおるとは!」
「拙者は……100年待ったのだ。お主のような分別のない外道に、武士道を穢されてたまるものか!」
侍は再び斬りかかった。目にも止まらない速さだ。俺と戦っていたときよりも速い。あの時はまだ本気を出してなかったのか。
(ピシュン!!)
「ぐおあ!?」
ゴトン、という音とともにダイヤ野郎の腕が切り落とされた。さすがにアイツも悲鳴を上げていた。処刑するつもりが、形勢逆転して処刑される立場になってしまったようだ。
「雷光一閃。神速の一太刀なり。」
侍の刀を見ると、刃の部分が雷を纏ったように光り輝いていた。魔法も併用しての一撃だったのか。
「ライトニング・ブレイドも併用してやがるのか!……いや、あの刀自体雷の魔力で錬成しているのか?」
雷の魔力?でも何か変だな。俺と戦っていたときもそうだったけど、地属性の魔法が得意だったんじゃないのか?いきなり雷を使うなんてどういうこと?雷らしい技は例の正拳突きぐらいしかなかったはず?でも、アレ、どこにも雷要素がなかったような……。
「地属性の魔法を使っていた貴様が何故、雷属性の魔法を使えるのだ?地属性は雷属性を阻害する故、相性は悪いはず!魔術師ならともかく侍の貴様が何故、こんな芸当が出来るのだ!」
「従来の常識ではそうであろう。物は使いよう、使い方によっては際立たせることも可能となる。これは100年の鍛錬の賜物なり。」
魔法属性同士の相性のことはサヨちゃんから聞いたことがある。火は氷に強く、氷は風に強く、風は土に強く、雷は水に強く、水は火に強い。というように順繰りに強弱関係が成り立っているらしい。
「拙者は本来雷属性の術を得意としているが、地属性の術を極め、刀を作ることを考えた。素材を見極める上で金属、鉱石の性質を吟味する内にあることに気が付いた。それは雷を遮断する物、雷を透過する物があると。」
人それぞれ、魔法属性には適性があるらしい。得意属性に弱い属性の魔法は使えなかったり、使えても効果が弱くなってしまうそうだ。風の魔法が得意なファルちゃんが偽竜帝と戦ったときに地属性魔法を使ってたけど、あれはあくまで低位の魔法だから使えたらしい。普通は熟練の魔術師しかできない芸当だそうだ。そういう意味では侍がそこまで使いこなせるのは異常なことなんだろう。
「拙者は雷の術を蓄える事が出来る素材を吟味して、雷と地属性を併せ持つ刀を作ったのだ。相互作用により雷の術を際立たせることが出来る。名付けて“地雷也”。我が最強の刀なり!」
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