【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

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第3章 迷宮道中膝栗毛!!

第155話 武士道とは……、

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「ちくしょう!許さねえぞ!」


 俺は怒りにまかせ、ダイヤ野郎の前に躍り出た。


「パゴア、許さないだと?むしろ、許さぬのは私の方だ。貴様らはこの場に立ち入ることを許可していない。不法侵入だということを自覚しておらぬようだな?」

「うるさい!知るかよ!だいたい、変なダンジョンに閉じ込めたのはそっちの方だろ!」


 被害者はこっちなんだからな!人を空き巣狙いみたいに言うのはやめろ!


「勇者殿、ここは一旦引いて貰いたい。此奴に挑む権利は拙者にある。」


 俺の前に侍が立ちはだかった。


「何だよ!空気読めよ!こっちは仲間がバカにされたんだからな。引き下がれるもんかよ!」


 これだけ言っても、侍はどこうとしない。


「お主の場合、昨日、おとといの話ではないか。拙者は……100年待ったのだ!この機会をむざむざ逃すわけにはいかぬ。」

「だったら、いっしょに戦えばいいじゃないか!」

「それは出来ぬ。どうあっても、譲れぬよ。拙者一人で挑む。」

「この石頭!100年で頭が化石になったんじゃないか!」

「もういい。いい加減にしないか、ロア。」


 背後から聞き慣れない声でとがめられた。振り向くと狐面の男がいた。


「ここは侍殿に任せておけば良い。お前はもう少し冷静になるべきだ。」

「なんだよ!邪魔すんな!」

「やめないか!」


 狐面は怒声を上げて俺を制した。ビックリした。なんか、久々に師父に叱られた感じがする。なつかしい。師父とは見た目も声も違うのに。不思議と何故か素直に従おうという気になってしまった。


「何者かは存ぜぬが、礼を言う。」

「構わぬよ。貴公の意志を尊重したかっただけだ。健闘を祈る。」


 俺は素直に引き下がることにした。アイツが勝てるかどうかはわからないが、ダイヤ野郎との対決がおあずけになるのは悔しいが、ダイヤ野郎がどんな戦い方をするのかを見ることはできる。


「貴様から処刑をしてやろう。我が軍門に下る振りをして、招かれざる者をおびき寄せたことは許しがたい。」


 侍は最初からダイヤ野郎と戦うつもりで、俺たちをおびき寄せた。俺たちに戦わせるつもりがないくせに。巻き込まれただけの俺たちをかばうつもりで?アイツの狙いがよくわからない。


「100年の成果を今見せてくれよう!」


 侍はダイヤ野郎に斬りかかっていった。


(ガギィィィン!!!)


 ダイヤ野郎は刀を避けようともせず、真正面から受け止めた。でも、傷一つ付いていない。ただ普通に斬りかかるのは無謀とも思えた。何しろ相手の体はダイヤモンドみたいになっているからな。俺の霽月八刃なら斬れるとは思うけど。


「パゴア!無策に刀剣が通用すると思っておるのか?我が肉体は魔光結晶で出来ておる。傷一つ付かぬわ。」

「……。」


 攻撃が効かなかったにも関わらず、侍は表情一つ変えていなかった。あえて効かないと思わせておいて、その隙に攻撃しようと考えているのかもしれない。アイツはありとあらゆる手段で攻撃してくる。それは俺自身が身を以て知っている。


「あのさ、魔光結晶って何?」

「莫大な魔力を凝縮し、純度を極限まで高めて物質化したものが、魔光結晶じゃ。魔力エネルギーが強力なものであるほど、物質化し、手で触れることが出来るようになる。」

「魔力って触れるようになるの?」

「彼奴の存在自体がそれを証明している。伝説では魔光結晶の研究をしていた、とされておる。自身の肉体を魔光結晶で作り、それに自らの魂を移し替えた。それ故、不老不死・不壊となった。完全無欠の存在となり、何処かへと姿を消した。これが彼奴の伝説の全貌じゃ。」

「で、実際にはここにずっと引きこもってたってワケか。」

「パゴア、パゴア!どうだ恐ろしかろう?伝説が残っておるのはどういうことか?それは誰も私に比肩する者などおらず、誰もが私を恐れ敬っておったからよ!」


 距離は離れているが俺たちの会話は聞こえていたようだ。大した地獄耳だ。自分の噂話を聞いて悦に入ってやがる。やっぱりなんかイヤな奴だな。さっきのサヨちゃんへの仕打ちも許せんし、早くコイツをぶちのめしたい。


「地磊震!」


 その隙を突いてか、侍はあの技で斬りかかっていた。俺が不覚にも剣を落とすことになった技だ。あの技ならヒビくらいは入るかもしれない。


(ゴギャァァァン!…ゴギャァァァン!!)


 例の二連続だ!当然、三発目もあるだろう。


(ゴギィ!パキィィィン!!)


 三発目で異変が起きた。……なんと!侍の刀が折れてしまっていた!


「パゴア、パゴア!私を傷付けられる者等、この世にはおらぬ!私は不死身なのだ!」


 どうするんだこれ?侍はダイヤ野郎を倒すと息巻いていたのに、あっさり武器が壊れてしまった。あれって伝説の妖刀じゃなかったっけ?……早くも、俺のターンが回ってきそうだ。言わんこっちゃない。
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