【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

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第3章 迷宮道中膝栗毛!!

第148話 卑怯とは言うまいな?

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「何だ?また東洋風かよ。」


 侍の後を追って次のダンジョンへやってきた。でも、内装が極東の国の屋敷とか城の中みたいだった。本物は見たことないけど、なんとなくそれっぽい雰囲気になっている。目の前には引き戸のような扉があった。


「すげーな。ちゃんとした絵が描いてあるぞ。それにこれは風神と雷神じゃねーか。」


 東洋の世界での風の神・雷の神の姿そのものだった。絵だけじゃなくて装飾もちゃんとされている。さっきまでの殺風景なダンジョンとは大違いだった。


「ヘッ、ダンジョン如きにご大層なこった。」

「お前さあ、情緒ってモンはないのかよ。なかなかよく出来てるぞコレ。」

「生きるか死ぬかのやりとりをしてるってのに、呑気なもんだな。」


 ファルちゃんは絵とか装飾には関心を示さずに、ピリピリしていた。この先に待っているのが、おそらくアイツなためだろう。


「さっさと行くぞ!」


 ファルちゃんが豪快に引き戸を開けた。だが、先にはまた同じ引き戸があった。


「チッ!まどろっこしい!」


 もう一度開ける。でもまた、同じ光景があった。


「チッ!」


 同じ事が何回も続いた。別にループしているわけではなさそうだ。ファルちゃんが気にせず開けているところを見ると、そういう仕掛けはないみたいだ。


「ああ!鬱陶しい!」


 また、続くのかと思いきや、やっと辿り着いた。やけにだだっ広い部屋だった。なんだか武術の道場のような見た目だった。そして、奥の方には見覚えのあるヤツが座っていた。


「よくぞ参った。我が迷宮へ。」


 俺たち二人の予想通り、奴自身も迷宮の主だった。今までの言動や行動は芝居だったんだろう。本人は隠すつもりもなかったようなので、俺らには丸わかりだったが。


「アンタ、どういうつもりだ?」

「どういうつもりとは?」

「質問に質問で答えるんじゃねえ!」


 ファルちゃん、激おこ。そんなに怒らんでも、ええやねん。


「拙者はただ、お主らと戦うだけのために、実力の判定をしていただけのこと。」

「試していやがったのか!」

「もちろん、不公平故、拙者も力の片鱗は披露させてもらった。」

「そんなもんで、公平なはずがあるかよ!」


 公平じゃないけど、すごいやばいヤツだというのはよくわかったから、俺の方は不満はない。それでも、色々疑問はあるので聞いておこう。


「でもさあ、なんで味方のはずの他の主達を倒すようなことしたの?」

「何か勘違いをしておらぬか?ここはそもそも修練の間だ。互いに競い合う事こそ本望よ。」

「そうなのか、じゃあいいや。最初の迷宮で二人以上でないと先に進めないって言ってたのは嘘?」

「半分は嘘だったことは認めよう。」

「半分って何?」

「一人でも進むことは出来る。だが最終局面では、ある理由から先には進めぬ。正確には最終局面にて選ばれた一人のみが神の間に到達できる。」


 神の間?まだ先があるのか?しかも神!神が待っているのか!


「選ばれるっていうのはまさか……。」

「ご察しの通り、勝ち抜いて両の足で立っている者のみ。」


 やっぱ、戦わなきゃいけないのか。だったらやるしかない。


「二人がかりで勝てるつもりなのかよ、アンタは?」


 そうだそうだ!こっちは二人だぞ。勝てるつもり?二人がかりでも卑怯とは言うまいな?


「二人?何を勘違いしている?拙者と資格のある者はただ一人。」


 ビシ、と侍は指をさした。さされているのは俺の方だった。


「なめんじゃねえぞ、コラ!俺に資格はないっていうのかよ!」


 当然、ファルちゃんはご立腹だった。ファルちゃんが怒るのも無理はない。プライドを踏みにじられたんだし。


「ない。今まで実力は見させてもらったが、忍者如きに苦戦しているようではとても、とても……。」

「こうなったら意地でも、認めさせてやんよ!」


 ファルちゃんは両手の拳を前に突き出し魔法の準備を始めた。この魔法は前にも見たことがある!ファルちゃんとっておきのアレじゃないか!


「ヴォルテクス・カノン!!」


 一点に集中した風がらせん状になって、侍の方まで飛んでいく。


(ヴォォォン!!!)


 当たったと思った瞬間、鈍い音がして、竜巻がこっちに向かってきた。どういうこと!


「チィィ!ウインド・シールド!」


 ファルちゃんはとっさに風のバリアを作って身を守った。風の渦は周囲に拡散していった。


「魔障結界陣。もしや、忘れていたのではあるまいな?」


 その声は俺たちの後ろから聞こえた。いつの間に後ろに回った?気付いたときにはもう遅かった。


(バシッ!!)


 侍がファルちゃんの首筋に手刀をたたき込んでいた。そのまま、ファルちゃんは気を失って倒れた。


「だから言っておるのだ。拙者には勝てぬと。」
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