139 / 401
第3章 迷宮道中膝栗毛!!
第139話 賢者と黒狐の問答~ロアに対しての見解~
しおりを挟む
「何?流派梁山泊、槍覇のヘイフゥじゃと?」
サヨさんはヘイフゥさんの名乗りに驚きを隠せていなかった。勇者様と同じ流派の人が現れたのだから当然かもしれない。
「へぇー?実在したんだ、あの流派。」
「アンタ、疑っとったんかいな。」
「聞いたことなかったし、第一、うさんくさかっただもん。」
「うさんくさい……。その流派の人間の前でそんなことよう言うわ。あんた、正直すぎや。」
勇者様、疑われてたんだ……。ジュリアさんは色々ハッキリと思っていることを口に出す人だとは思っていたけど、ここまで正直に言うなんて。
「槍覇程の立場の者が何用で彼奴を追っておるのじゃ?破門された彼奴を見守る必要があるのか?実は彼奴を始末するつもりで追っておるのではないか。」
そんなはずない!私は彼から理由を聞いていたので、そのことをサヨさんに告げようとした。
「それは……、」
「いや、いい。私自身が説明しよう。」
言おうとする私を制して、ヘイフゥさんはサヨさんと向き合った。
「では、弁明を聞こうか?」
「まずは立場上の話をさせてもらおう。そういう意味では、貴殿の推測は正しい。破門し追放された人間は密かに刺客によって抹殺される定めにある。門外不出、半端者を生かしてはおけない。それが我が流派の掟だ。」
勇者様は命を狙われている!破門されたら殺されるなんて。あまりにも情け容赦ない掟だと思った。
「だが、現に彼奴はまだ生きておる。何故じゃ?」
「私は彼に対しての刺客に命ぜられた。私が彼の師と友人であることを知っていたからこそ、流派への忠義と、友人の弟子への情のどちらを取るか、試すつもりなのだ。私と彼の師は宗家と方針の違いから対立する立場にあった。今の状況を利用して私をも処分するつもりなのだろう。」
「ほう。ではそなたも流派に狙われる立場になってしまったわけじゃな。何故、そうまでして彼奴を庇う?」
ヘイフゥさんも流派から命を狙われているなんて。でも、そうまでして、勇者様を庇ったのは何か特別な理由があったんだと思いたい。
「彼が腑抜けなままなら殺すつもりだった。彼の様子を窺う中で、何の縁かはわからぬが勇者となってしまった。そして、彼は曲がりなりにも奥義を体現し、竜食いの男を倒した。以降の戦績は言わずもがなだ。」
「未だに、そなたの話の結末が見えてこぬな。まだ、妾の質問に答えておらぬぞ。」
「すまぬ。貴殿の問いに誠実に答えようとするあまり、前提が長くなってしまった。最大の理由は彼の師の言葉にある。」
「その言葉とは?」
「彼はいずれ流派奥義の神髄に到達するだろう、と予言めいた言葉を残していた。彼に出会った時に直感めいた物を彼から感じたのだそうだ。ただの一介の農夫にすぎなかった彼をだ。実は彼から志願してきたわけではないのだ。師によって、その才能を見いだされたのだ。」
勇者様は元々農夫だった?そんな話は知らなかった。勇者様は一度も話してくれたことがなかった。もっと、そういう話を聞いてみたい。
「なるほど、妾が見た彼奴の力の根源を師も、直感という形で認識しておったのじゃな。その目に狂いはなかったということじゃ。」
「私は以前は疑っていた。だが、実際に彼の戦いぶりを見て信じてみたくなった。それが貴殿の質問に対しての答えだ。」
「随分と回り道をしてくれたものじゃな。じゃが、妾は納得した。そなたのことは信頼するとしよう。」
よかった。二人が納得してくれて。これで勇者様の捜索を協力しあえそう。
「勇者の兄ィちゃんの話は決着ついたかもしれへんけど、ワシもアンタに聞きたいことがあるねん。」
続いてゲンコツさんが質問をヘイフゥさんに投げかけた。
「ここは封印されとって入れへんかったはずや。封印を壊したんは、アンタの仕業か?」
「その認識で間違いない。やはり、許可を取る必要があったか?」
「ホンマのこと言うたらせやねんけど、人命優先でここへ入ったのは事実でっしゃろ?……まあ、なんとかワシらより先に入ったのは誰もおらんかった、って報告しとくわ。」
「すまぬ、気を遣ってもらってかたじけない。」
ヘイフゥさんは胸の前で左手の拳を右手の平で押さえる仕草をした。東の国の礼儀作法なのかな?
「かまへん、かまへん!頭カチカチの迷宮管理委員会なんかの相手する必要なんかあらへん。」
立ち入り禁止区域の封印を勝手に破ってしまった場合は、犯罪になってしまうはず。そして、結構罪は重かったと思う。罰金ぐらいではすまないはず。ゲンコツさんはそのことを承知で見逃してくれたんだと思う。私たちのために……。
「さて、妾達も休息をとらねば。本当にやっかいなのはこの先にあるものじゃからな。備えだけはしっかりとな。」
やっぱり、サヨさん達もこの迷宮に隠された謎を解き明かすつもりなんだ。その先には……きっと勇者様がいることを信じて……。
サヨさんはヘイフゥさんの名乗りに驚きを隠せていなかった。勇者様と同じ流派の人が現れたのだから当然かもしれない。
「へぇー?実在したんだ、あの流派。」
「アンタ、疑っとったんかいな。」
「聞いたことなかったし、第一、うさんくさかっただもん。」
「うさんくさい……。その流派の人間の前でそんなことよう言うわ。あんた、正直すぎや。」
勇者様、疑われてたんだ……。ジュリアさんは色々ハッキリと思っていることを口に出す人だとは思っていたけど、ここまで正直に言うなんて。
「槍覇程の立場の者が何用で彼奴を追っておるのじゃ?破門された彼奴を見守る必要があるのか?実は彼奴を始末するつもりで追っておるのではないか。」
そんなはずない!私は彼から理由を聞いていたので、そのことをサヨさんに告げようとした。
「それは……、」
「いや、いい。私自身が説明しよう。」
言おうとする私を制して、ヘイフゥさんはサヨさんと向き合った。
「では、弁明を聞こうか?」
「まずは立場上の話をさせてもらおう。そういう意味では、貴殿の推測は正しい。破門し追放された人間は密かに刺客によって抹殺される定めにある。門外不出、半端者を生かしてはおけない。それが我が流派の掟だ。」
勇者様は命を狙われている!破門されたら殺されるなんて。あまりにも情け容赦ない掟だと思った。
「だが、現に彼奴はまだ生きておる。何故じゃ?」
「私は彼に対しての刺客に命ぜられた。私が彼の師と友人であることを知っていたからこそ、流派への忠義と、友人の弟子への情のどちらを取るか、試すつもりなのだ。私と彼の師は宗家と方針の違いから対立する立場にあった。今の状況を利用して私をも処分するつもりなのだろう。」
「ほう。ではそなたも流派に狙われる立場になってしまったわけじゃな。何故、そうまでして彼奴を庇う?」
ヘイフゥさんも流派から命を狙われているなんて。でも、そうまでして、勇者様を庇ったのは何か特別な理由があったんだと思いたい。
「彼が腑抜けなままなら殺すつもりだった。彼の様子を窺う中で、何の縁かはわからぬが勇者となってしまった。そして、彼は曲がりなりにも奥義を体現し、竜食いの男を倒した。以降の戦績は言わずもがなだ。」
「未だに、そなたの話の結末が見えてこぬな。まだ、妾の質問に答えておらぬぞ。」
「すまぬ。貴殿の問いに誠実に答えようとするあまり、前提が長くなってしまった。最大の理由は彼の師の言葉にある。」
「その言葉とは?」
「彼はいずれ流派奥義の神髄に到達するだろう、と予言めいた言葉を残していた。彼に出会った時に直感めいた物を彼から感じたのだそうだ。ただの一介の農夫にすぎなかった彼をだ。実は彼から志願してきたわけではないのだ。師によって、その才能を見いだされたのだ。」
勇者様は元々農夫だった?そんな話は知らなかった。勇者様は一度も話してくれたことがなかった。もっと、そういう話を聞いてみたい。
「なるほど、妾が見た彼奴の力の根源を師も、直感という形で認識しておったのじゃな。その目に狂いはなかったということじゃ。」
「私は以前は疑っていた。だが、実際に彼の戦いぶりを見て信じてみたくなった。それが貴殿の質問に対しての答えだ。」
「随分と回り道をしてくれたものじゃな。じゃが、妾は納得した。そなたのことは信頼するとしよう。」
よかった。二人が納得してくれて。これで勇者様の捜索を協力しあえそう。
「勇者の兄ィちゃんの話は決着ついたかもしれへんけど、ワシもアンタに聞きたいことがあるねん。」
続いてゲンコツさんが質問をヘイフゥさんに投げかけた。
「ここは封印されとって入れへんかったはずや。封印を壊したんは、アンタの仕業か?」
「その認識で間違いない。やはり、許可を取る必要があったか?」
「ホンマのこと言うたらせやねんけど、人命優先でここへ入ったのは事実でっしゃろ?……まあ、なんとかワシらより先に入ったのは誰もおらんかった、って報告しとくわ。」
「すまぬ、気を遣ってもらってかたじけない。」
ヘイフゥさんは胸の前で左手の拳を右手の平で押さえる仕草をした。東の国の礼儀作法なのかな?
「かまへん、かまへん!頭カチカチの迷宮管理委員会なんかの相手する必要なんかあらへん。」
立ち入り禁止区域の封印を勝手に破ってしまった場合は、犯罪になってしまうはず。そして、結構罪は重かったと思う。罰金ぐらいではすまないはず。ゲンコツさんはそのことを承知で見逃してくれたんだと思う。私たちのために……。
「さて、妾達も休息をとらねば。本当にやっかいなのはこの先にあるものじゃからな。備えだけはしっかりとな。」
やっぱり、サヨさん達もこの迷宮に隠された謎を解き明かすつもりなんだ。その先には……きっと勇者様がいることを信じて……。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる