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第3章 迷宮道中膝栗毛!!
第137話 アクセレイション!
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「一体何をした!」
私は身体能力を向上させる魔法を使った。サヨさんの理論を参考に闇の魔力で体力・筋力を変質させた。
「魔術師とは思えん身体能力だ!」
実は下級悪魔の群れと戦っているときに、ヘイフゥさんと申し合わせていたことだった。ドッペルゲンガーが私を狙っている可能性があることを話し、私が囮になることを決めた。私にアクセレイションという切り札があることも話していた。
「おのれ!ちょこまかと!」
身体能力と合わせて、動体視力も向上させている。動きが良くなっても、相手の攻撃が見えないと躱しようがない。とはいえ、慣れない感覚に自分を合わせるだけで精一杯だった。いつまで保つだろう?
「これならどうだ!」
「……!?」
ドッペルゲンガーは大きく踏み込んで、切り込んできた。横へ飛んで避けようとした。でも、避けきれない!
「……くっ!?」
避けることは出来た。でも、大きく体勢が崩れてしまった。この状態で次の攻撃が来たら……、
「とうとう、捉えたぞ!死ねえ!」
(ズッ!)
無慈悲な攻撃が私の体に突き刺さった。胸をひと突きされ、実体のない刃が体に食い込んでいる。
「エルちゃん!?」
離れたところで休んでいたメイちゃんが悲痛な声をあげた。目の前の惨状を目にしたら誰でも同じ反応をすると思う。その当事者の私は何故か冷静にそんなことを考えていた。
「くけけけ、倒し……?」
「……!?」
私は異変に気が付いた。……痛みがない。痛みがないどころか、今もまだ意識がはっきりしている。心臓を貫かれているのに?
(……主よ。)
この状況で頭の中に声が鳴り響いた。一体誰だろう?
(主よ、よくぞ戻られた。我もその手に戻ることを願わん。)
戻る?誰が誰の元へ?一向に声の正体がわからない。
「ぐぬ!何故だ!止めを刺したというのに何故死んでいないんだ!……剣が抜けん!」
ドッペルゲンガーは力を込めて必死に剣を抜こうとしている。剣は相変わらず、私の体に刺さったままだった。
《資格無き者よ、滅びるがいい!》
「ぐわあああっ!?」
頭の中に声が響いた途端、ドッペルゲンガーは見えない力で後方に吹き飛ばされた。何が起きたのか理解できなかった。
(主よ、今こそ我をその手に……。)
その手に?そこで私はハッとなった。もしかして、剣が私に話しかけている?私は恐る恐る、剣の柄に触れてみた。
「……えっ!?」
手にした途端、闇の刃が消え失せた。予想外の出来事に私は戸惑いを隠せなかった。
(主よ、念じ給え。我は主の刃なり。)
言われるままに剣に闇の力を込めてみた。すると剣の柄だった物が見る見るうちに、細長く湾曲した棒状の形に変わっていった。変化が終わると次は先端部分の側面から湾曲した闇の刃が吹き出した。……これは鎌?
(主よ、思うがままに我を振るい給え。)
私は大鎌をどう振るっていいかわからず、なんとなく構えることしか出来なかった。
「馬鹿な!黒牛の尖角が裏切ったとでもいうのか!」
《裏切りではない。貴様はただ、我に利用されただけだ。主の手に戻るだけのために。》
「利用しただと!ただの武器の分際で!」
《下級悪魔ごときの貴様が何を言う。頭が高いぞ。》
黒牛の尖角はドッペルゲンガーにも語りかけているみたいだった。ドッペルゲンガーは見下されて激怒している。
「こうなれば、力尽くで奪い返すまでだ!」
ドッペルゲンガーは襲いかかってきた。
(主よ、我を用いて愚か者に鉄槌を下し給え。)
私は思いきって大鎌を振るってみせた。
「グガアアアッ!?」
ドッペルゲンガーは斜めに切り裂かれ、ドロドロと溶けるように消えていった。
「やったね…エルちゃん…。」
メイちゃんはホッとしたのか、少しよろめきながら、私の勝利を祝福してくれた。勝ったとはいっても、彼女にはまだ休んでいてもらわないといけない。
「見事だ、軍師殿!」
ヘイフゥさんが駆けつけてきた。彼もちょうどバイドパイパーの撃退に成功したみたいだった。
「ヘイフゥさんのおかげです。それにハプニングがなかったら、死んでいたのは私の方でした。」
そう、魔王の遺産が手を貸してくれなかったら、私は確実に死んでいた。想定外の出来事が勝利につながったのは間違いなかった。
「フフ、憶えておき給え、“運も実力のうち”さ。時には運も味方に付けてこそ、真の強者だ。」
「そうなんでしょうか?」
私には実感がわかなかった。今までの人生の中で戦うとか、勝つとか、そういうものに縁がなかったからよくわからない。
《主の勝利は必然だった。我が保証しよう。》
「魔王の遺産とやらもそう言っているのだ。もっと胸を張っていい。」
「はい、そうなれるように努力してみます。」
目の前の危機は去った。ひとまずは。でも、まだ問題はたくさんあった。ここから脱出すること、そして、勇者様の行方を探さなきゃいけない。今は少し休んでから、考えよう。
私は身体能力を向上させる魔法を使った。サヨさんの理論を参考に闇の魔力で体力・筋力を変質させた。
「魔術師とは思えん身体能力だ!」
実は下級悪魔の群れと戦っているときに、ヘイフゥさんと申し合わせていたことだった。ドッペルゲンガーが私を狙っている可能性があることを話し、私が囮になることを決めた。私にアクセレイションという切り札があることも話していた。
「おのれ!ちょこまかと!」
身体能力と合わせて、動体視力も向上させている。動きが良くなっても、相手の攻撃が見えないと躱しようがない。とはいえ、慣れない感覚に自分を合わせるだけで精一杯だった。いつまで保つだろう?
「これならどうだ!」
「……!?」
ドッペルゲンガーは大きく踏み込んで、切り込んできた。横へ飛んで避けようとした。でも、避けきれない!
「……くっ!?」
避けることは出来た。でも、大きく体勢が崩れてしまった。この状態で次の攻撃が来たら……、
「とうとう、捉えたぞ!死ねえ!」
(ズッ!)
無慈悲な攻撃が私の体に突き刺さった。胸をひと突きされ、実体のない刃が体に食い込んでいる。
「エルちゃん!?」
離れたところで休んでいたメイちゃんが悲痛な声をあげた。目の前の惨状を目にしたら誰でも同じ反応をすると思う。その当事者の私は何故か冷静にそんなことを考えていた。
「くけけけ、倒し……?」
「……!?」
私は異変に気が付いた。……痛みがない。痛みがないどころか、今もまだ意識がはっきりしている。心臓を貫かれているのに?
(……主よ。)
この状況で頭の中に声が鳴り響いた。一体誰だろう?
(主よ、よくぞ戻られた。我もその手に戻ることを願わん。)
戻る?誰が誰の元へ?一向に声の正体がわからない。
「ぐぬ!何故だ!止めを刺したというのに何故死んでいないんだ!……剣が抜けん!」
ドッペルゲンガーは力を込めて必死に剣を抜こうとしている。剣は相変わらず、私の体に刺さったままだった。
《資格無き者よ、滅びるがいい!》
「ぐわあああっ!?」
頭の中に声が響いた途端、ドッペルゲンガーは見えない力で後方に吹き飛ばされた。何が起きたのか理解できなかった。
(主よ、今こそ我をその手に……。)
その手に?そこで私はハッとなった。もしかして、剣が私に話しかけている?私は恐る恐る、剣の柄に触れてみた。
「……えっ!?」
手にした途端、闇の刃が消え失せた。予想外の出来事に私は戸惑いを隠せなかった。
(主よ、念じ給え。我は主の刃なり。)
言われるままに剣に闇の力を込めてみた。すると剣の柄だった物が見る見るうちに、細長く湾曲した棒状の形に変わっていった。変化が終わると次は先端部分の側面から湾曲した闇の刃が吹き出した。……これは鎌?
(主よ、思うがままに我を振るい給え。)
私は大鎌をどう振るっていいかわからず、なんとなく構えることしか出来なかった。
「馬鹿な!黒牛の尖角が裏切ったとでもいうのか!」
《裏切りではない。貴様はただ、我に利用されただけだ。主の手に戻るだけのために。》
「利用しただと!ただの武器の分際で!」
《下級悪魔ごときの貴様が何を言う。頭が高いぞ。》
黒牛の尖角はドッペルゲンガーにも語りかけているみたいだった。ドッペルゲンガーは見下されて激怒している。
「こうなれば、力尽くで奪い返すまでだ!」
ドッペルゲンガーは襲いかかってきた。
(主よ、我を用いて愚か者に鉄槌を下し給え。)
私は思いきって大鎌を振るってみせた。
「グガアアアッ!?」
ドッペルゲンガーは斜めに切り裂かれ、ドロドロと溶けるように消えていった。
「やったね…エルちゃん…。」
メイちゃんはホッとしたのか、少しよろめきながら、私の勝利を祝福してくれた。勝ったとはいっても、彼女にはまだ休んでいてもらわないといけない。
「見事だ、軍師殿!」
ヘイフゥさんが駆けつけてきた。彼もちょうどバイドパイパーの撃退に成功したみたいだった。
「ヘイフゥさんのおかげです。それにハプニングがなかったら、死んでいたのは私の方でした。」
そう、魔王の遺産が手を貸してくれなかったら、私は確実に死んでいた。想定外の出来事が勝利につながったのは間違いなかった。
「フフ、憶えておき給え、“運も実力のうち”さ。時には運も味方に付けてこそ、真の強者だ。」
「そうなんでしょうか?」
私には実感がわかなかった。今までの人生の中で戦うとか、勝つとか、そういうものに縁がなかったからよくわからない。
《主の勝利は必然だった。我が保証しよう。》
「魔王の遺産とやらもそう言っているのだ。もっと胸を張っていい。」
「はい、そうなれるように努力してみます。」
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