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第3章 迷宮道中膝栗毛!!
第136話 武道覚醒~鎧脱いだら本気出す~
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「貴様ら、正気か!たった一人で私に挑んで勝てるとでも思っているのか!」
「お主の方こそ、我らに勝てるのか?全力を持って挑むことをお勧めする。」
互いの主張は平行線で決して、交わりそうになかった。でも、それが男の戦いである。折れた方が負けるのだ。でも、敢えて折れた振りをするのもありかもしれない。敢えて相手の戦法に合わせるみたいな感じで。
「もういい!一人ずつ始末してやる!」
トゲ野郎はなにか武器を取り出した。トゲのいっぱい付いた棍棒のようなものだった。武器までトゲトゲなのかよ……。そんなに相手を血祭りにしたいのか。
「これぞ、棘刺棘棘剣だ!これで切り刻んでやる。」
え?何?棘のトゲトゲ?それ、剣なの?もうどこから突っ込んでいいのやら……。
「死ねええ!」
お面の人は避けようともしなかった。
(ガギッ!)
鈍い音と共に棘の方が何個かはじけ飛んだ。不思議だ。お面の人の鎧は傷一つ付いていない。見た目は大部分が布っぽくて、胴体、前腕、顔面の部分はかろうじて堅そうに見えるだけだ。
「馬鹿な!そんなはず!では、これはどうだ!」
棘野郎は体当たりを仕掛けた。結局、そんなお粗末な攻撃しかできないのか。まあ、普通にそんなことされたら、穴だらけになりそうだけど。
(ガギッ!……ボンッ!)
「ぐわああ!?」
また、棘がはじけ飛び、挙げ句の果てに逆に吹き飛ばされていた。鎧の棘が折れたり、所々、ひん曲がっている。剣…もとい棍棒と同じ結果に終わった。
「ひ、卑怯な!そんな鎧があるから、お前は強くなっているだけだ!」
とうとう言いがかりを付け始めた。情けない棘野郎だ。
「なるほど、アイアン・スウェットか。どおりで堅いはずだ。」
「アイアム・スイーツ?おいしいの、それ?」
「バカは黙ってろ。」
「ぐぬぬ、トゲ刺すぞ。」
また、わけのわからない単語が出てきた。これにトゲが効かないことに関係あるんか?ちゃんと、説明しろ!
「アイアン・スウェット……、そのような呼び名もあったな。拙者は砂塵の鎧と呼んでおる。」
「ただのアイアン・スウェットじゃない。実体化に加えて、変質までしてある。侍のわりには、えらく高等な魔術を使いやがるな。」
俺が昔見た書物によると、侍、忍者とかいう連中は魔法に似た呪術を使うらしい。俺の国にも、風水術を使いこなす剣士とかもいるし、それと似たようなもんか?
「鎧のおかげで強くなっていると言ったな?ならば、鎧なしで戦って進ぜよう。」
お面の人は敵の言いがかりに答えようとしている。その宣言通り、鎧が砂になって、地面に落ちた。そこから姿を現したのは、鎧の印象とはかけ離れた黒い長髪の細身の男だった。細いとはいえ異様に密度の高い筋肉を持っていた。まさに無駄な肉が付いていない。しかも……イケメンじゃねえか!
「これで満足か?」
砂の鎧を解除したとはいえ、部分的に鎧をつけてはいる。しかも、上半身はほぼ裸だった。なに、コイツ!
「ハハ、本当に脱ぎやがった!じゃあ、遠慮なく行かせて頂く!」
トゲ野郎は再びトゲの剣で攻撃をしかけた。しかし、こんな状況でもブドーは避けようともしない。まさか……、
(ガギッ!)
「……!?」
「何!?どういうことだ!」
トゲ野郎は当然だが、何故かファルちゃんも驚いている。あれ?もしかして、ご存じでない?
「これは東洋武術、硬氣功なり。自らを鋼へと変容する術なり。」
「なんだよ、そりゃ!」
「知らないの?流派梁山泊じゃ基本中の基本だよ。前にも言っただろ?鎧はいらないって。あれはそういうことなの。」
「知るか!こんなもの、ほぼ魔術じゃねえか!」
「否。これは魔術にあらず。闘気を操る術なり。別系統の技術で御座る。」
完全にトゲ野郎は蚊帳の外だった。呆気にとられて棒立ちになっている。
「クッ、馬鹿な!おかしなことばかりしやがって!」
「おお、すまぬ。まだ途中であったな。今度はこちらから参るぞ。」
参るとか言いながら、その手には何も持っていない。武器は?素手で戦うつもり?トゲ野郎の真正面に立ち、何やら構えを取った。
「では、特上の一撃をお見舞いして進ぜよう。」
「な、何言って……。」
ブドーは息を深く吸い込むと固めた拳を後ろへ下げた。素手で殴るのか?
「雷破音速拳!!」
(ズドォォォォォォンン!!!)
雷が落ちたかのような、大きい音が響いた。気付けば、トゲ野郎が壁に大の字の姿勢でめり込んでいた。鎧の胸の部分が見事にひしゃげている!当然、ヤツはピクリともしていない。お亡くなりになったかな?
「手加減したとはいえ、いささか、やり過ぎてしまったかもしれぬな。」
て、手加減ありでこれですか?コイツは相当ヤバイかも。刀を使わせたらどんなことになるんだ。とにかく、すごい男だ!
「これは一度たりとも気が抜けそうにねえな。」
ファルちゃんはボソリとつぶやいた。たしかに俺もそう思った。こいつは強いし、頼りになるかもしれない。でも、真の目的がわからない以上は気を許せない相手でないことが直感でわかった。なにか嫌な予感がする。
「お主の方こそ、我らに勝てるのか?全力を持って挑むことをお勧めする。」
互いの主張は平行線で決して、交わりそうになかった。でも、それが男の戦いである。折れた方が負けるのだ。でも、敢えて折れた振りをするのもありかもしれない。敢えて相手の戦法に合わせるみたいな感じで。
「もういい!一人ずつ始末してやる!」
トゲ野郎はなにか武器を取り出した。トゲのいっぱい付いた棍棒のようなものだった。武器までトゲトゲなのかよ……。そんなに相手を血祭りにしたいのか。
「これぞ、棘刺棘棘剣だ!これで切り刻んでやる。」
え?何?棘のトゲトゲ?それ、剣なの?もうどこから突っ込んでいいのやら……。
「死ねええ!」
お面の人は避けようともしなかった。
(ガギッ!)
鈍い音と共に棘の方が何個かはじけ飛んだ。不思議だ。お面の人の鎧は傷一つ付いていない。見た目は大部分が布っぽくて、胴体、前腕、顔面の部分はかろうじて堅そうに見えるだけだ。
「馬鹿な!そんなはず!では、これはどうだ!」
棘野郎は体当たりを仕掛けた。結局、そんなお粗末な攻撃しかできないのか。まあ、普通にそんなことされたら、穴だらけになりそうだけど。
(ガギッ!……ボンッ!)
「ぐわああ!?」
また、棘がはじけ飛び、挙げ句の果てに逆に吹き飛ばされていた。鎧の棘が折れたり、所々、ひん曲がっている。剣…もとい棍棒と同じ結果に終わった。
「ひ、卑怯な!そんな鎧があるから、お前は強くなっているだけだ!」
とうとう言いがかりを付け始めた。情けない棘野郎だ。
「なるほど、アイアン・スウェットか。どおりで堅いはずだ。」
「アイアム・スイーツ?おいしいの、それ?」
「バカは黙ってろ。」
「ぐぬぬ、トゲ刺すぞ。」
また、わけのわからない単語が出てきた。これにトゲが効かないことに関係あるんか?ちゃんと、説明しろ!
「アイアン・スウェット……、そのような呼び名もあったな。拙者は砂塵の鎧と呼んでおる。」
「ただのアイアン・スウェットじゃない。実体化に加えて、変質までしてある。侍のわりには、えらく高等な魔術を使いやがるな。」
俺が昔見た書物によると、侍、忍者とかいう連中は魔法に似た呪術を使うらしい。俺の国にも、風水術を使いこなす剣士とかもいるし、それと似たようなもんか?
「鎧のおかげで強くなっていると言ったな?ならば、鎧なしで戦って進ぜよう。」
お面の人は敵の言いがかりに答えようとしている。その宣言通り、鎧が砂になって、地面に落ちた。そこから姿を現したのは、鎧の印象とはかけ離れた黒い長髪の細身の男だった。細いとはいえ異様に密度の高い筋肉を持っていた。まさに無駄な肉が付いていない。しかも……イケメンじゃねえか!
「これで満足か?」
砂の鎧を解除したとはいえ、部分的に鎧をつけてはいる。しかも、上半身はほぼ裸だった。なに、コイツ!
「ハハ、本当に脱ぎやがった!じゃあ、遠慮なく行かせて頂く!」
トゲ野郎は再びトゲの剣で攻撃をしかけた。しかし、こんな状況でもブドーは避けようともしない。まさか……、
(ガギッ!)
「……!?」
「何!?どういうことだ!」
トゲ野郎は当然だが、何故かファルちゃんも驚いている。あれ?もしかして、ご存じでない?
「これは東洋武術、硬氣功なり。自らを鋼へと変容する術なり。」
「なんだよ、そりゃ!」
「知らないの?流派梁山泊じゃ基本中の基本だよ。前にも言っただろ?鎧はいらないって。あれはそういうことなの。」
「知るか!こんなもの、ほぼ魔術じゃねえか!」
「否。これは魔術にあらず。闘気を操る術なり。別系統の技術で御座る。」
完全にトゲ野郎は蚊帳の外だった。呆気にとられて棒立ちになっている。
「クッ、馬鹿な!おかしなことばかりしやがって!」
「おお、すまぬ。まだ途中であったな。今度はこちらから参るぞ。」
参るとか言いながら、その手には何も持っていない。武器は?素手で戦うつもり?トゲ野郎の真正面に立ち、何やら構えを取った。
「では、特上の一撃をお見舞いして進ぜよう。」
「な、何言って……。」
ブドーは息を深く吸い込むと固めた拳を後ろへ下げた。素手で殴るのか?
「雷破音速拳!!」
(ズドォォォォォォンン!!!)
雷が落ちたかのような、大きい音が響いた。気付けば、トゲ野郎が壁に大の字の姿勢でめり込んでいた。鎧の胸の部分が見事にひしゃげている!当然、ヤツはピクリともしていない。お亡くなりになったかな?
「手加減したとはいえ、いささか、やり過ぎてしまったかもしれぬな。」
て、手加減ありでこれですか?コイツは相当ヤバイかも。刀を使わせたらどんなことになるんだ。とにかく、すごい男だ!
「これは一度たりとも気が抜けそうにねえな。」
ファルちゃんはボソリとつぶやいた。たしかに俺もそう思った。こいつは強いし、頼りになるかもしれない。でも、真の目的がわからない以上は気を許せない相手でないことが直感でわかった。なにか嫌な予感がする。
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