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第3章 迷宮道中膝栗毛!!

第133話 悪魔の企み

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「戦技一0八計が一つ、円弧征錐!!」


 槍が綺麗な円弧を描いたかと思うと、まわりのデーモンがなぎ倒された。


「グローイング・レイン!」


 錫杖の先端に集中した光球が光の雨になって、倒れたデーモンを浄化していく。これで大半のデーモンは倒すことができた。


「ぐぬぬ!おのれ、ここまで抵抗するとは……。」


 ドッペルゲンガーは悔しそうにしている。でも、あまり動揺していないように見えるのは気のせいかな?あわせて、自分たちの様子を確認してみると、メイちゃんの消耗が激しいみたい。肩で息をしているし、額に汗を浮かべている。


「くけけけ、まあある程度は想定内だ。これで私を倒すだけの力は残っているかな?」


 あくまで私たちの体力を消耗させるだけのために他のデーモンに戦わせていた?……ということはあちらにはまだ何か切り札があるということかもしれない。


「さあ、こちらも仕上げに入らせてもらうよ!」


 ドッペルゲンガーは目の前に魔方陣を出現させ、何かを召喚しようとしている。


「さあ来い!バイドパイパー!」


 バイドパイパー!確か地獄の道化師っていう別名があるデーモンだったはず。その名に違わず、強力な魔法を使い、武器の扱いにも長ける死神の様な存在。そんな恐ろしいものを呼び寄せるなんて!


「気を付けて下さい。あれは恐ろしい悪魔です。先程までのデーモンとは比較になりません!」

「うむ、その様だな。恐ろしい殺気だ。」


 デーモンの知識が少ないヘイフゥさんに注意を促した。あれは道化師のようなふざけた外見をしているけど凄く強い。ヘイフゥさんも直感であれを恐ろしいものと判断してくれたみたい。


「では行け!バイドパイパー!お前はあの仮面の男を倒すのだ。そして真の道化師がどんなものか教えてやれい!」

「ふふ、仮面を付けているからといって、私を道化師扱いするとは、後悔するぞ!エレオノーラ、こいつは私に任せてくれ!」

「はい!お願いします。」


 私とメイちゃんでドッペルゲンガーと対峙することになった。でも、メイちゃんは休ませないといけない。無理はさせられない。


「くけけけ、これでようやく目的を達成できそうだぞ。」

「目的?」


 目の前のデーモンは言う。目的なんてどうでもいいけど、ヘイフゥさんと私たちをわざわざ分断させる様なことをしているのだから、何か特別な理由があるんだろう。


「お前、デーモン・コアを持っているだろう?」

「デーモン・コア……、そんなものは持っていません!」

「嘘をつけ!お前からは牛頭の魔王の魔力をわずかに感じる。隠したって無駄だ。どの道、食ってしまうから関係ないがな!」


 デーモン・コアは本当にない。勇者様が斬り捨て、消滅させてしまったから。でも自分の体は闇のエネルギーの影響を多く受けている。それがこのデーモンにはわかってしまったんだろう。


「本来ならば、お前たちごとき相手に必要はないが、特別にコレを見せてやろう。」


 ドッペルゲンガーは目の前に黒いモヤを出現させ、そこから何かを取り出した。何の生物の骨のような物を組み合わせた奇妙な杖が出てきた。


「くけけけ!これが魔王の遺産、黒牛の尖角だ。コレを手にした時点で私が魔王になることは決まっていたのだ。」


 手にした武器は次第に形を変えていき、大きな剣の柄の形になった。そこから黒い炎が吹き出し、青白く光る刃が形成された。多分、闇の力を持った刃だ。


「どうだ驚いただろう?こいつは持ち主の意志で自由に姿を変えれるのさ。そして今はお前たちを処刑するのにふさわしい姿にしてやったのさ。」


 得意げに語るドッペルゲンガーは刃の切っ先をこちらに向けた。私たちは近接戦闘の専門家ではないので、対処が難しそう。ハッキリ言って不利だった。


「メイちゃん!私が囮になるから、あなたは休んでいて!」

「エルちゃん、無理だよ。魔術師のあなたじゃ不利すぎるよ。」

「絶対になんとかしてみせるから!」


 メイちゃんの制止を振り切り、私は潔く前に進み出た。はっきりいって何も策は考えていなかった。多分、あの人に影響されたからだと思う。あの時のあの人は魔王になった私に対して、なんとかしようと立ち向かってきた。無謀だけれど、こういう時こそ、好きなあの人の様になってみたいと思ったんだ。


「くけけけ、正気か?魔術師たるお前が前に出てくるとは!まあいい、先にお前を処刑して食ってやる!」


 相手は闇の刃を振るってきた。後ろに飛び退いて避ける。あまり動き回るのが得意でない私にはこれが精一杯の動きだった。基本的な戦闘の訓練はサヨさんにしてもらっているけど、どこまで通用するかわからない。ある意味これが初めての実戦だった。


「そんな動きがいつまで続くかな?」


 普通ならすぐに体力が尽きていたと思う。でも、そのときのために、サヨさんから切り札を授けてもらっていた。


「アクセレイション!」

「何!?」


 一瞬にして俊敏になった私の動きにドッペルゲンガーは戸惑っていた。魔術師の私が急に戦士や盗賊顔負けの動きをし始めたから当然だ。

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