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第3章 迷宮道中膝栗毛!!
第132話 魔王の玉座
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「さしずめ、玉座の間といったところか?」
地下10Fを探索していた私たちはとうとう、魔王の玉座のある部屋に辿り着いた。ここまでは魔物がたくさんいたけど、この部屋は意外と静まりかえっていた。
「変ですね?何もいないなんて……。」
周りを見渡すと割と広いことがわかった。玉座以外には悪魔の姿をした石像が規則正しく並べられていた。
「油断はするな。罠の可能性もある。」
私も何か嫌な予感がした。これはまるで……、地下9Fに来た時の様子に似てる……。
「ふふふ。また、お会いしましたね、皆さん。」
それは突然現れた。聞いたことのある声だ。あの時、私たちをだました人の声だった。いつの間にか玉座に座り、こちらを観察していた。
「姿を眩ましていたかと思えば、このような場所で出迎えとは……何のつもりだ、物の怪め!」
「私を物の怪呼ばわりとは!次期魔王と呼んで欲しいですなあ!」
魔物は尊大な態度で自らを“魔王”と名乗った。最初に目にしたときもそうだったけど、まるっきり魔の気配が感じられなかった。見た目も普通の冒険者の戦士にしか見えなかった。顔以外は……。
「人間にしか見えないことを不思議に感じているな?私は何を隠そう、ドッペルゲンガーだ。」
鏡像のデーモン?他者の頭を喰らい、そっくり入れ替わることを得意とする下級のデーモンだったと思う。ということは、今の姿は犠牲になった冒険者のものということになる。
「私は牛頭の魔王が倒された後、息を潜めて隠れていたのさ。いつか人間共に復讐するために!私は力が弱いデーモン故、ヤツらは俺に気が付かなかったのさ。」
下級のデーモンの中でも一際弱いため、他の生物の姿を奪って活動する、という生態がありとあらゆる書物に出てきた。その能力ため、下級のデーモンだとしても恐れられ、警戒されてきた歴史がある。
「だがあるとき、私にチャンスが巡ってきた。テレポーターの罠で迷い込んできた人間がいたのさ。私はそいつを喰らい体を奪ってやった。」
入れ替わりが成功すれば、魔の気配が薄れてしまう。そのため、熟練者でも見分けるのが困難とされていたはず。その証拠に私たちも完全にだまされてしまった。
「しかも、幸運なことに何度も迷い込んで来やがった!私はそいつらを餌にして次第に強くなっていった。罠を仕掛けたヤツが何者かは知らないけどなあ。感謝したいものだよ。」
罠に掛かった人々が行方不明になっていたのはこのデーモンに食べられてしまったからなんだ……。
「そしてまた、生きのいいヤツがやってきた!これでまた一歩、魔王へと近付いたというわけだ。」
「先程からお前は我々に勝ったつもりでいるようだが、我々を甘く見ない方が身のためだぞ。」
「くけけけ!そうでもないさ。準備は十分してあるのさ。」
(パチン!)
ドッペルゲンガーは指を鳴らした瞬間、あたりに置いてあった石像が動き始めた。表面の石材の下からバリバリと音を立てデーモンが次々と姿を現し始めた。
「まさか……、わざと石化させて気配を悟らせないようにしていたなんて……。」
普通の生き物は全身が石化すれば死んでしまう。でも、デーモンたちは石化させることが出来ても殺すことは出来ないと聞いたことがある。石の中で仮死状態になって生命活動を一時的に停止する。そのため、魔の気配はなくなる。石化させても決して気を抜いてはいけないと言われている。
「如何にも悪魔らしい小賢しさだ。悪知恵だけはよく働くものだな。」
あたりには下級のデーモンで溢れかえってしまった。これじゃさすがに多勢に無勢で勝ち目がない。
「サンクチュアリの魔法を使います!」
メイちゃんが防護魔法を展開した。魔の種子に耐性のある私はともかく、メイちゃんとヘイフゥさんは感染の対策をしなくちゃいけない。
「これでわかったろう?自分たちが絶望的な状況に身を置かれていることに!」
極めて不利な状況だった。ヘイフゥさんは槍の武術、メイちゃんは浄化の魔法を使えば対抗できるけど、私は使える魔術の大半が闇属性でデーモンは通常魔術に対して抵抗力がある。私だけが足手まといになるのは明らかだった。
「君はさっき私が話した通り、戦況を見極めることに専念してくれ。」
ヘイフゥさんは私に耳打ちしてきた。私が不安に感じていることを察してくれたんだと思う。
「さあ、かかってこい!一つ残さず調伏してくれようぞ!」
ヘイフゥさんが取り囲むデーモン相手に応戦していった。目にも止まらない槍捌きで私たちに手が及ばないように牽制しつつ戦っていた。
「グローイング・アロー!」
メイちゃんが怯んだデーモンにすかさず浄化魔法を打ち込んだ。倒すまではいかないけれど、致命的なダメージを負わせている。
「今です!ヘイフゥさん!」
「了解した!」
浄化魔法で弱ったデーモンに止めを刺していく。うまく連携が取れれば、数が多くても対抗できるかもしれない。
「くけけけ!いつまでその調子が続くかなあ?」
地下10Fを探索していた私たちはとうとう、魔王の玉座のある部屋に辿り着いた。ここまでは魔物がたくさんいたけど、この部屋は意外と静まりかえっていた。
「変ですね?何もいないなんて……。」
周りを見渡すと割と広いことがわかった。玉座以外には悪魔の姿をした石像が規則正しく並べられていた。
「油断はするな。罠の可能性もある。」
私も何か嫌な予感がした。これはまるで……、地下9Fに来た時の様子に似てる……。
「ふふふ。また、お会いしましたね、皆さん。」
それは突然現れた。聞いたことのある声だ。あの時、私たちをだました人の声だった。いつの間にか玉座に座り、こちらを観察していた。
「姿を眩ましていたかと思えば、このような場所で出迎えとは……何のつもりだ、物の怪め!」
「私を物の怪呼ばわりとは!次期魔王と呼んで欲しいですなあ!」
魔物は尊大な態度で自らを“魔王”と名乗った。最初に目にしたときもそうだったけど、まるっきり魔の気配が感じられなかった。見た目も普通の冒険者の戦士にしか見えなかった。顔以外は……。
「人間にしか見えないことを不思議に感じているな?私は何を隠そう、ドッペルゲンガーだ。」
鏡像のデーモン?他者の頭を喰らい、そっくり入れ替わることを得意とする下級のデーモンだったと思う。ということは、今の姿は犠牲になった冒険者のものということになる。
「私は牛頭の魔王が倒された後、息を潜めて隠れていたのさ。いつか人間共に復讐するために!私は力が弱いデーモン故、ヤツらは俺に気が付かなかったのさ。」
下級のデーモンの中でも一際弱いため、他の生物の姿を奪って活動する、という生態がありとあらゆる書物に出てきた。その能力ため、下級のデーモンだとしても恐れられ、警戒されてきた歴史がある。
「だがあるとき、私にチャンスが巡ってきた。テレポーターの罠で迷い込んできた人間がいたのさ。私はそいつを喰らい体を奪ってやった。」
入れ替わりが成功すれば、魔の気配が薄れてしまう。そのため、熟練者でも見分けるのが困難とされていたはず。その証拠に私たちも完全にだまされてしまった。
「しかも、幸運なことに何度も迷い込んで来やがった!私はそいつらを餌にして次第に強くなっていった。罠を仕掛けたヤツが何者かは知らないけどなあ。感謝したいものだよ。」
罠に掛かった人々が行方不明になっていたのはこのデーモンに食べられてしまったからなんだ……。
「そしてまた、生きのいいヤツがやってきた!これでまた一歩、魔王へと近付いたというわけだ。」
「先程からお前は我々に勝ったつもりでいるようだが、我々を甘く見ない方が身のためだぞ。」
「くけけけ!そうでもないさ。準備は十分してあるのさ。」
(パチン!)
ドッペルゲンガーは指を鳴らした瞬間、あたりに置いてあった石像が動き始めた。表面の石材の下からバリバリと音を立てデーモンが次々と姿を現し始めた。
「まさか……、わざと石化させて気配を悟らせないようにしていたなんて……。」
普通の生き物は全身が石化すれば死んでしまう。でも、デーモンたちは石化させることが出来ても殺すことは出来ないと聞いたことがある。石の中で仮死状態になって生命活動を一時的に停止する。そのため、魔の気配はなくなる。石化させても決して気を抜いてはいけないと言われている。
「如何にも悪魔らしい小賢しさだ。悪知恵だけはよく働くものだな。」
あたりには下級のデーモンで溢れかえってしまった。これじゃさすがに多勢に無勢で勝ち目がない。
「サンクチュアリの魔法を使います!」
メイちゃんが防護魔法を展開した。魔の種子に耐性のある私はともかく、メイちゃんとヘイフゥさんは感染の対策をしなくちゃいけない。
「これでわかったろう?自分たちが絶望的な状況に身を置かれていることに!」
極めて不利な状況だった。ヘイフゥさんは槍の武術、メイちゃんは浄化の魔法を使えば対抗できるけど、私は使える魔術の大半が闇属性でデーモンは通常魔術に対して抵抗力がある。私だけが足手まといになるのは明らかだった。
「君はさっき私が話した通り、戦況を見極めることに専念してくれ。」
ヘイフゥさんは私に耳打ちしてきた。私が不安に感じていることを察してくれたんだと思う。
「さあ、かかってこい!一つ残さず調伏してくれようぞ!」
ヘイフゥさんが取り囲むデーモン相手に応戦していった。目にも止まらない槍捌きで私たちに手が及ばないように牽制しつつ戦っていた。
「グローイング・アロー!」
メイちゃんが怯んだデーモンにすかさず浄化魔法を打ち込んだ。倒すまではいかないけれど、致命的なダメージを負わせている。
「今です!ヘイフゥさん!」
「了解した!」
浄化魔法で弱ったデーモンに止めを刺していく。うまく連携が取れれば、数が多くても対抗できるかもしれない。
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