【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

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第3章 迷宮道中膝栗毛!!

第110話 不確定名“きみょうなもの”

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「おせーぞ。何してたんだ。」

「いやあ、あのアホ犬が寝坊してきたもんで。」


 ファルちゃんはイライラしている。ちょっと遅くなっただけなんだが。


「言い訳してんじゃねえ。だいたい、今からやろうとしてることの意味を考えろ。そんな考えが通用する場所じゃねえんだぞ。下手すりゃ死ぬぞ。」

「ええ~!?」


 相変わらずお堅いなあ。多少は心にゆとりがあった方がいいのでは?


「ホラホラ、喧嘩してる暇があったら、さっさと行くよ。変なところでエネルギー使ってんじゃないの!」


 ジュリアが仲裁に入ってきた。確かにこんなところで体力、精神力を消耗してもしょうがないな。

「姐さん、ところでアイツら、いっつもこんな仲悪いんか?」

「さあのう。以前の一件では妾は行動を共にしていたわけではないからのう。彼奴ら自身もほんの少しの間しか共闘しとらんはずじゃ。」


 言われてみればそうだ。ファル、ジュリアとはほんの三、四日程度しか一緒じゃなかった。むしろ今となっては、エルちゃんの方が一緒にいた期間が長い。


「まあ、そのわりにはよう喧嘩しとるわ。むしろ、それは逆に仲がいいということの裏返しなのではないのか?」

「ま、せやろな。“仲良く喧嘩しな”とも言うからな。」

「誰が仲良しだ!」


 俺とファルちゃんは同時に同じことを言った。思わずお互いに顔を見合わせ、即、にらみ合いになった。


「なんだ、コラ!」

「真似したのはそっちだろ!」

「コラコラ、もうやめーい。」


 ますます、加速しそうになるところで、ジュリアの仲裁が再び入った。


「そろそろ行くかのう。皆のもの、準備は良いか?」

「おう!いつでも行けるぜ!」


 参加メンバーは、サヨちゃん、エルちゃん、ゲンコツのおっちゃん、ファルちゃん、ジュリア、メイちゃん、そして俺の計七人だ。


「糸も持ったしな!」

「糸か。まあ、それも基本やけど……、」


 おっちゃんは何か言いたげだった。そして、懐から何か取り出した。履き物のような“きみょうなもの”が出てきた。


「ナニソレ?お守りみたいなヤツ?」


 なんか観光客用のお土産として売られてそうな、そういう感じのものだった。


「まあ、昔はそういう意味合いもあったらしいけどな。これは実用品や。“帰還”の魔法が使えるアイテムや。他に石とか骨のヤツもあるで。」


 そうなのか。タニシはそんな話全然してなかった。色々とアイツの情報には穴があるな。


「基本、ダンジョン入ったら、何が起こるかわからへん。色々、予防線張っとくのが一番なんや。」


 やっぱ、ベテランは言うことが違うなあ。

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