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第3章 迷宮道中膝栗毛!!
第104話 カリカリにはコリゴリ
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「カリカリはもうこりごりでヤンスぅぅ!!」
眠りに落ちていた犬の人はいきなり飛び起きた。しかも、言ってること意味わかんない!
「……ハッ!?……ゆ、夢だった。よ、よかったでヤンス。危うく、カリカリで死ぬところだったでヤンス。」
ますます意味がわからない。カリカリって何?どんな悪夢だったんだ。
「ごめんなさい。多分、ナイトメア・クラウドの影響です。」
そう、犬の人はエルちゃんの魔法で眠らされていたんだった。体に悪影響はないらしいが闇魔法の特性上、しばらくの間、寝るたびに悪夢にうなされるらしい。
「やっと起きよったか。目ェ覚ますなり、何言うとんねん!みんな、ドン引きしとるがな!」
うん。特にカリカリの下りがそう。説明求む!
「へうあ!?しゃ、社長!な、なんでここに!?……あれ、いつの間にタル屋にいるでヤンスか!?ダンジョンに直通路でも出来たでヤンスかぁ?」
タル屋って、今いる酒場の名前だったよな?やっぱり犬の人もここにしょっちゅう来てるってコトか。
「どアホ!なにが直通やねん!そんなもん、あらへんわ!」
「しゅいません……でヤンス。」
犬の人は叱責され、耳を後ろに倒して、しゅーんとなっている。やっぱり犬だ。ただの犬。
「おまえ、罠にかかっとったやろ?」
「な、何のことでヤ、ヤンスか?」
犬の人はそわそわしながら、俺に目で合図を送ってくる。「言わないでね!」的なことを伝えたいのだろう。
「わかってんねんぞ。ぜーんぶ、お見通しや。だいたい、あの罠しかけたん、誰やと思てんねん?」
「だ、誰でヤンスかね?きっと、意地が悪い人に決まってるでヤンス。」
ゲンコツのおっちゃんの言うとおり全部見ていたらしい。サヨちゃんの魔法で。水晶玉越しに一部始終を観察していたようだ。事務所に入ったところからだ。
「ワ・シ・や!」
おっちゃんは自分を指差し、犬の人に思いっきり顔を近付けていた。犬の人は体を仰け反らせながら、必死に目を逸らそうとしている。
「わー!とってもステキな罠だったでヤンス!罠のお手本といってもいいデキでヤンした!」
「しらじらしいわ!ドアホ!だいたい、おまえ、いっつも思い込みで行動しよるから、あんなしょうもない罠にかかりおるんやで!」
「しゅいヤせん!」
最早二人の会話は独特な方言が入り交じり、ところどころ意味がわからなかった。額冠の翻訳機能ですら追いつかなくなるとは!
「まあ、別に悪いところばっかりやったわけやないで。KFMはよかったんとちゃうか?ツッコミのキレはええと思うたわ。」
「ほ、ホントでヤンスか!」
……?なんだろうこの違和感。なんか褒めるところがおかしくないか?俺がボケまくってただけなんだけどなあ。
「とりあえず、おまえの好きな“ボリボリキャベツ”頼んどいたったさかい、食べーや。」
「まじでヤンスかあ!!いっただきっっまああすう!!」
(バリバリ、ボリボリ、バリボリバリ!!)
犬の人はむさぼるようにキャベツを食べ始めた。物凄い形相で食べている!キャベツに親でも殺されたのか、というくらいに。ちなみに“ボリボリキャベツ”とはキャベツまるごとそのまま一玉である。料理というより、食材そのものだった。
「えろう、すんまへんな。えらい騒がしてもうて。どんどん、飲んで、食べてえや!」
若干引き気味な俺とエルちゃんに料理と飲み物をすすめる。まあ、気を遣ってもらっているので遠慮なく頂くとしよう。
「遠慮をするでない。はようせんと妾がみんな食べてしまうぞい!」
サヨちゃんはというと……、さっきからのやりとりを物ともせずに一人だけマイペースにずっと食べ続けている。この底なしの食いしんぼさんめ!
「せや、お嬢ちゃん、あんた、母ちゃんも魔術師やってたりせえへんか?」
「……?」
なんだ?急に?まさかおっちゃんがエルちゃんに話を振るとは思わなかった。
「ワシ、長いことこのあたりでこういう仕事しとるさかい、色んな冒険者におうとるんやけど、二〇年くらい前にあんたにソックリな人に会うたことあるんや。」
「……!?」
エルちゃんはビクッとしたような素振りを見せている。聞かれたくない話だったのかもしれない。彼女の生い立ちを考えると。
「ちょうど背格好も同じくらいで、えらいべっぴんさんやったから、よう憶えてんねん。そんで、その髪の……リボンも同じやった。」
リボン……エルちゃんが頭の後ろで髪を結んでいる物だ。これの存在がエルちゃんのかわいさを際立たせていると言っても過言ではない!もちろん、付けてなくてもエルちゃんはかわいいのだが。
「これは……母の形見です。」
「形見?…ということは……もう……、」
「母は私が小さい頃に亡くなりました。」
「そうなんか。すまんな、悪いこと聞いてしもて……。」
ずっとテンションの高かったおっちゃんもさすがに、悪いと思ったようで、声のトーンを落とした。
「悪い事じゃありません。気にしないで下さい。むしろ、私の母を知っているのでしたら、その話を聞かせて下さい!」
「そうか。その前にあんたの母ちゃんの名前はエルフリーデ・グランテで間違いないな?」
「そうです。それが母の名前です。」
エルちゃんのお母さんがおっちゃんに会ったことがあるのは本当みたいだ。どんな人だったんだろう。
「母は何故ここへ来ていたんですか?」
「そうやな、あん時、あんたの母ちゃんは魔王討伐に参加しとったんや。」
眠りに落ちていた犬の人はいきなり飛び起きた。しかも、言ってること意味わかんない!
「……ハッ!?……ゆ、夢だった。よ、よかったでヤンス。危うく、カリカリで死ぬところだったでヤンス。」
ますます意味がわからない。カリカリって何?どんな悪夢だったんだ。
「ごめんなさい。多分、ナイトメア・クラウドの影響です。」
そう、犬の人はエルちゃんの魔法で眠らされていたんだった。体に悪影響はないらしいが闇魔法の特性上、しばらくの間、寝るたびに悪夢にうなされるらしい。
「やっと起きよったか。目ェ覚ますなり、何言うとんねん!みんな、ドン引きしとるがな!」
うん。特にカリカリの下りがそう。説明求む!
「へうあ!?しゃ、社長!な、なんでここに!?……あれ、いつの間にタル屋にいるでヤンスか!?ダンジョンに直通路でも出来たでヤンスかぁ?」
タル屋って、今いる酒場の名前だったよな?やっぱり犬の人もここにしょっちゅう来てるってコトか。
「どアホ!なにが直通やねん!そんなもん、あらへんわ!」
「しゅいません……でヤンス。」
犬の人は叱責され、耳を後ろに倒して、しゅーんとなっている。やっぱり犬だ。ただの犬。
「おまえ、罠にかかっとったやろ?」
「な、何のことでヤ、ヤンスか?」
犬の人はそわそわしながら、俺に目で合図を送ってくる。「言わないでね!」的なことを伝えたいのだろう。
「わかってんねんぞ。ぜーんぶ、お見通しや。だいたい、あの罠しかけたん、誰やと思てんねん?」
「だ、誰でヤンスかね?きっと、意地が悪い人に決まってるでヤンス。」
ゲンコツのおっちゃんの言うとおり全部見ていたらしい。サヨちゃんの魔法で。水晶玉越しに一部始終を観察していたようだ。事務所に入ったところからだ。
「ワ・シ・や!」
おっちゃんは自分を指差し、犬の人に思いっきり顔を近付けていた。犬の人は体を仰け反らせながら、必死に目を逸らそうとしている。
「わー!とってもステキな罠だったでヤンス!罠のお手本といってもいいデキでヤンした!」
「しらじらしいわ!ドアホ!だいたい、おまえ、いっつも思い込みで行動しよるから、あんなしょうもない罠にかかりおるんやで!」
「しゅいヤせん!」
最早二人の会話は独特な方言が入り交じり、ところどころ意味がわからなかった。額冠の翻訳機能ですら追いつかなくなるとは!
「まあ、別に悪いところばっかりやったわけやないで。KFMはよかったんとちゃうか?ツッコミのキレはええと思うたわ。」
「ほ、ホントでヤンスか!」
……?なんだろうこの違和感。なんか褒めるところがおかしくないか?俺がボケまくってただけなんだけどなあ。
「とりあえず、おまえの好きな“ボリボリキャベツ”頼んどいたったさかい、食べーや。」
「まじでヤンスかあ!!いっただきっっまああすう!!」
(バリバリ、ボリボリ、バリボリバリ!!)
犬の人はむさぼるようにキャベツを食べ始めた。物凄い形相で食べている!キャベツに親でも殺されたのか、というくらいに。ちなみに“ボリボリキャベツ”とはキャベツまるごとそのまま一玉である。料理というより、食材そのものだった。
「えろう、すんまへんな。えらい騒がしてもうて。どんどん、飲んで、食べてえや!」
若干引き気味な俺とエルちゃんに料理と飲み物をすすめる。まあ、気を遣ってもらっているので遠慮なく頂くとしよう。
「遠慮をするでない。はようせんと妾がみんな食べてしまうぞい!」
サヨちゃんはというと……、さっきからのやりとりを物ともせずに一人だけマイペースにずっと食べ続けている。この底なしの食いしんぼさんめ!
「せや、お嬢ちゃん、あんた、母ちゃんも魔術師やってたりせえへんか?」
「……?」
なんだ?急に?まさかおっちゃんがエルちゃんに話を振るとは思わなかった。
「ワシ、長いことこのあたりでこういう仕事しとるさかい、色んな冒険者におうとるんやけど、二〇年くらい前にあんたにソックリな人に会うたことあるんや。」
「……!?」
エルちゃんはビクッとしたような素振りを見せている。聞かれたくない話だったのかもしれない。彼女の生い立ちを考えると。
「ちょうど背格好も同じくらいで、えらいべっぴんさんやったから、よう憶えてんねん。そんで、その髪の……リボンも同じやった。」
リボン……エルちゃんが頭の後ろで髪を結んでいる物だ。これの存在がエルちゃんのかわいさを際立たせていると言っても過言ではない!もちろん、付けてなくてもエルちゃんはかわいいのだが。
「これは……母の形見です。」
「形見?…ということは……もう……、」
「母は私が小さい頃に亡くなりました。」
「そうなんか。すまんな、悪いこと聞いてしもて……。」
ずっとテンションの高かったおっちゃんもさすがに、悪いと思ったようで、声のトーンを落とした。
「悪い事じゃありません。気にしないで下さい。むしろ、私の母を知っているのでしたら、その話を聞かせて下さい!」
「そうか。その前にあんたの母ちゃんの名前はエルフリーデ・グランテで間違いないな?」
「そうです。それが母の名前です。」
エルちゃんのお母さんがおっちゃんに会ったことがあるのは本当みたいだ。どんな人だったんだろう。
「母は何故ここへ来ていたんですか?」
「そうやな、あん時、あんたの母ちゃんは魔王討伐に参加しとったんや。」
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