83 / 401
第2章 黒騎士と魔王
第83話 さらば友よ!また逢う日まで!!
しおりを挟む
「いやあ、ギルド長にあんな過去があったなんてなあ!」
祝賀会ムードに包まれた冒険者ギルドを後にしながら余韻に浸っていた。主に、ギルド長の武勇伝の、だけど。
「もう、やめましょうよ。ギルド長がかわいそうです。」
「そう言うエルちゃんこそ、大笑いしてたじゃないか。」
「うう。見てたんですね。だって……もう、何年も笑った事なんてなかったから……。」
そうか。エルちゃんの境遇からすると、そういうことになるのか。でも、笑えるような環境になってよかったね!
「それにみんな笑ってるだけじゃありませんでしたよ?自分もギルド長ほどではないけど、似たような経験があるって。ギルド長に親近感が湧いた、ってみんな励ましてました。」
みんな、多かれ少なかれ、失敗ぐらいはしてるんだな。自分だけではなかったんだ。
「おっ!あれがクルセイダーズの支部所か!」
次はクルセイダーズの支部所に用事があった。用事と言っても、今回、世話になった人たちに別れの挨拶をしにきたんだ。エドワードがメンバーを待機させているとのことだ。
「よう、相変わらず元気そうじゃねえか?」
建物の前にはウネグがいた。向こうも相変わらず、ふてぶてしさ全開だった。
「おめえと別れる前に最後の挨拶をしておきたかったンだよ。あ、それと宣戦布告な!」
「宣戦布告!?」
いきなり喧嘩売られたあ!よりにもよって、一番相手にしたくない人に!
「俺ァ、最初おめえのことをとんでもねえヘタレだと思ってたんだがよ。結局、蓋を開けてみれば、どうだ?そんなタマじゃなかったンだってことがわかったワケよ!」
うう、やっぱ、なんでもかんでもハッキリ言いたいことを言う人だな。なんか目を付けられているらしいことはよくわかった。
「なんたって、魔王やエドの旦那とタイマン張りやがった!しかも、魔王を自分の女にしちまった上に、旦那に手加減して勝ちやがった!そんなヤツぁ、今まで俺は見たことがねえ!」
随分、熱っぽく語るな。そんだけ、俺を評価してくれてるっってことか。……でも、ちょっと待って。エルちゃんはまだ俺の彼女ではない。そう見えるなら、嬉しいけど。
「そこでだ!俺とタイマンしようぜ!」
なっ!?タイマン?無理無理!絶対無理!今の勢いで来られたら絶対負ける。
「……冗談だよ!本気にしてんじゃねえよ!どうせヤッても、俺は勝てねえ。今はな!」
よかった。ホントにどうしようかと思った。
「今度会ったときは勝ってみせるぜ!そんときまで誰にも負けんじゃねえぞ!俺が勝つ価値がなくなっちまうからな。」
結局、いつかは対決するハメになるのか。どうにかして会わなくてもいい方法を探さないと。
「それと最後に俺の舎弟を紹介しておこうと思ってよ。……おっ、ちょうど、ヤツがきたみてえだ。」
誰だ?後ろを振り向くと、見覚えのあるヤツがいた。馬に乗った力士がそこにいた。ヴォルフ!ていうか今はスモウ・ライダーじゃねえか!
「顔はもう知ってるだろうがよ、コイツは俺と故郷が同じなンだよ。名前はチョンだ。お前らにはヴォルフって名乗ってるだろうけど、意味は同じでオオカミだ。」
見た目と名前のイメージが違う。どちらかというと熊みたいなんだが。
「先輩、ウス!」
馬から下りてきた力士はウネグの前まで行き、かしこまった様子で挨拶した。
「聞いたぜ?おめえ、コイツを一撃で倒したそうじゃねえか?コイツぁ、俺の舎弟の中じゃ一番タフなんだぜ?それを倒しちまうンだからよ。対したもンだぜ!」
「ウス!勇者ドンは強かったでゴワス!」
「おめえも強くなりたかったら、コイツを見習いな!おめえも東国で修行してきたみてえだけど、まだまだ強えヤツは山ほどいるからな。」
「ウス!!」
様子を見てるとホントに仲のいい先輩、後輩のようだ。
「おっと、挨拶はこれぐらいにしとくか。後ろもつっかえてるしよ。俺らは旦那とは別れて、コイツの初陣がてら、一稼ぎしてくるつもりだ!」
と言って、馬に飛び乗った。彼の馬はすごい派手な装飾の付いた馬具が取り付けられている。これなら遠目に見ても、彼だとわかりそうだ。
「じゃあな、アバヨ!!」
「うす!!先輩!」
「そなたまで、力士と同じ口調になってどうするのじゃ!」
つい、つられてしまった。彼はそのまま、颯爽と走り去っていった。スモウ・ライダーと共に……。
「さて、次はジェイの番ニャ!」
次は猫の人がやってきた。この人とはあまりからみがなかったが、見ていてすごい強いのがわかった。ウネグと同じぐらい敵に回したくない人だ。
「今回の任務は色々あったけど、楽しかったニャ。また、機会があればご一緒したいニャ。」
と言って握手してきた。肉球の弾力がすごい!
「君みたいなヒーローは初めて見たニャ!子供達にあわせてあげたら、すごい喜びそうニャ!」
「え?子供がいるんすか?」
この人のということは、間違いなく同じ猫人なんだろうけど、子猫ってことになるよな。想像しただけで、すごいかわいいだろうな、とは思う。
「この中では唯一の既婚者なのニャ。これから家に帰って休養を取るつもりニャ。」
これから一稼ぎするウネグとは対照的だな。まあ、それは傭兵でも人それぞれってことか。
「では。さらばなのニャ!」
「バイバイにゃ!」
「だから、そなたまで同じになってどうする!」
猫の人は去って行った。
「彼らも貴公のことを気に入ってしまったようだな。」
「ていうか、一名、喧嘩を売ってきたんだが?」
「ハハハ、彼なりの讃辞だと思っておきたまえ。彼らほどの実力者に認められたのだ。これほど、最大級の栄誉は他にない。」
自分と同じ新人達からも慕われ、ベテランからも認められた。素直に嬉しい。とはいえ、その期待に負けないように、勇者としてがんばっていかなきゃいけない。
「エドワードはこれからどうするんだ?」
「私とクロエはこれから新たなる任務に付く予定だ。生憎、基本的に私には休みなどないのだよ。」
「大変だな。でもあんまり無理すんなよ。」
「ああ。次の目的地は遠い。その旅路で休息を取りながら向かうつもりだ。」
忙しいなりにも、休み方をしっかりか考えているんだな。これがプロフェッショナルというやつか。
「それから、私の呼び方について。貴公と私の仲だ。これからはエドで構わんよ。」
「わかった。じゃあ、俺の方もロアって呼んでくれ。」
「そうだな。そうさせてもらおう。」
「最後に。君に一つ伝言がある。」
「へ?誰から?」
俺からしたら、故郷を離れた以上、知り合いなんて数えるほどしかいない。誰からだ?まさか……、
「風刃の魔術師からだ。手が空いたら、ノウザン・ウェルまで来い、とのことだ。」
ファルからだと?アイツからお声がかかるとは。というかそれ以前に、ノウザン。ウェルってどこ?俺、土地勘ないからわかんない。
「ノウザン・ウェルじゃと!あんな場所に呼び出すとは、ダンジョン攻略でもするつもりか?」
「ダンジョン!?」
実在したんだ!本とかの資料でしか見たことがないシロモノだ。なんでも地下迷宮に入って、魔王なりドラゴンなりを倒して、お宝をゲットする話はよく見かけた。
「ダンジョンを甘く見ない方がよいぞ。特にお前のような駆け出しの冒険者はな。ベテランじゃろうと一歩間違えれば、即、死じゃ!」
なんかまた、やっかい事に巻き込まれそうな予感がしてきた。今度は強敵を倒すとかじゃない。罠とかその他恐ろしい何かを相手にしなきゃならないのか。
「詳細は到着してから話す、とのことだ。あとは、覚悟を決めてから来い、とも言っていた。君なら問題ないだろう。」
いやいやいや!問題あるって!未知の脅威が待ち受けてるのに。俺の奥義じゃ、アクシデントに対抗できないぞ。
「魔術師殿が無策で待っているとは思えん。その道のプロを雇っている可能性はある。胸を借りて、手取り足取り教えてもらうと良い。」
その道のプロ、ダンジョンのプロがいるんだ?水先案内人みたいなもんか。
「何はともあれ、互いに行き先は違うが、健闘を祈ろうではないか!」
「ああ!そうだな!そっちも死ぬなよ!」
「君が石と一体化しないことを祈ろう!」
「なにそれ?どういう意味?」
「地下迷宮に挑むものにとってのお約束のようなもんじゃ。意味合い的には一寸先の闇に気を付けろ、という格言に似ておる。」
「……?」
「ハハハ!行けば、イヤというほど実感することになるさ!」
意味を知らない俺にとってはなんのことやら、ちんぷんかんぷんだ。業界用語みたいなの言われてもわからん!でも、怖いな。「石と一体化」って何の意味があるというのか。
「では、また会おう!勇者ロア!」
「じゃあな!エド!」
エドは背を向けて、去って行った。と見ていたところで誰かの視線を感じた。クロエだ。
「あなたに言っておきたいことがあります。」
あいかわらず、冷ややかな目で俺を見ている。こわい。ヴァルとか圧倒的に強い奴らとはまた別の怖さがある。
「あなたのことはある程度、見直しました。イグレス様に勝ったことは認めてあげます。ですが次はイグレス様が絶対に勝ちます。それだけはお忘れなきよう。」
「んん、ああ、ハイ。」
「それと……、」
クロエの目線の先にはエルちゃんがいた。なんか俺に対しての目つきとは明らかに変化させている。珍しく、優しそうな目で見ている。
「確か、エルという名前でしたね?あの娘を大切にしてあげなさい。心から支えてあげるのですよ。」
そうか。エルちゃんに対して何も言ってなかったからわからなかったけど、この人なりに気遣ってくれてたのか。
「……返事は?」
「ハ、ハイ!もちろんですとも!」
「ワタクシにはそれが気がかりなのです。あなたにそれが全うできるかどうかが。……かつて、エドが私にそうしてくれたように……。」
最後のほうは聞き取りづらかったな。もしかして、この人自身のことを言っているのか?
「何でもありません。最後の方は聞かなかったことにしておいて下さい。では、お達者で。」
彼女は駆け足でエドの後を追いかけていった。
「フフ、なかなか味なことをしおるわ、あの女。そなたらはあの二人を見習うがよい。良い手本じゃ。」
手本ねえ?見習えとかいわれても、なあ?エルちゃんはともかく、俺はエドとキャラが違いすぎる。俺は、あんなイケメンとは違う。俺みたいなブサメンじゃアイツみたいにはなれそうにない。でも……俺なりに強くなってみせるさ!
「じゃあ、次の目的地も決まったことだし、支度しに行こうぜ。」
祝賀会ムードに包まれた冒険者ギルドを後にしながら余韻に浸っていた。主に、ギルド長の武勇伝の、だけど。
「もう、やめましょうよ。ギルド長がかわいそうです。」
「そう言うエルちゃんこそ、大笑いしてたじゃないか。」
「うう。見てたんですね。だって……もう、何年も笑った事なんてなかったから……。」
そうか。エルちゃんの境遇からすると、そういうことになるのか。でも、笑えるような環境になってよかったね!
「それにみんな笑ってるだけじゃありませんでしたよ?自分もギルド長ほどではないけど、似たような経験があるって。ギルド長に親近感が湧いた、ってみんな励ましてました。」
みんな、多かれ少なかれ、失敗ぐらいはしてるんだな。自分だけではなかったんだ。
「おっ!あれがクルセイダーズの支部所か!」
次はクルセイダーズの支部所に用事があった。用事と言っても、今回、世話になった人たちに別れの挨拶をしにきたんだ。エドワードがメンバーを待機させているとのことだ。
「よう、相変わらず元気そうじゃねえか?」
建物の前にはウネグがいた。向こうも相変わらず、ふてぶてしさ全開だった。
「おめえと別れる前に最後の挨拶をしておきたかったンだよ。あ、それと宣戦布告な!」
「宣戦布告!?」
いきなり喧嘩売られたあ!よりにもよって、一番相手にしたくない人に!
「俺ァ、最初おめえのことをとんでもねえヘタレだと思ってたんだがよ。結局、蓋を開けてみれば、どうだ?そんなタマじゃなかったンだってことがわかったワケよ!」
うう、やっぱ、なんでもかんでもハッキリ言いたいことを言う人だな。なんか目を付けられているらしいことはよくわかった。
「なんたって、魔王やエドの旦那とタイマン張りやがった!しかも、魔王を自分の女にしちまった上に、旦那に手加減して勝ちやがった!そんなヤツぁ、今まで俺は見たことがねえ!」
随分、熱っぽく語るな。そんだけ、俺を評価してくれてるっってことか。……でも、ちょっと待って。エルちゃんはまだ俺の彼女ではない。そう見えるなら、嬉しいけど。
「そこでだ!俺とタイマンしようぜ!」
なっ!?タイマン?無理無理!絶対無理!今の勢いで来られたら絶対負ける。
「……冗談だよ!本気にしてんじゃねえよ!どうせヤッても、俺は勝てねえ。今はな!」
よかった。ホントにどうしようかと思った。
「今度会ったときは勝ってみせるぜ!そんときまで誰にも負けんじゃねえぞ!俺が勝つ価値がなくなっちまうからな。」
結局、いつかは対決するハメになるのか。どうにかして会わなくてもいい方法を探さないと。
「それと最後に俺の舎弟を紹介しておこうと思ってよ。……おっ、ちょうど、ヤツがきたみてえだ。」
誰だ?後ろを振り向くと、見覚えのあるヤツがいた。馬に乗った力士がそこにいた。ヴォルフ!ていうか今はスモウ・ライダーじゃねえか!
「顔はもう知ってるだろうがよ、コイツは俺と故郷が同じなンだよ。名前はチョンだ。お前らにはヴォルフって名乗ってるだろうけど、意味は同じでオオカミだ。」
見た目と名前のイメージが違う。どちらかというと熊みたいなんだが。
「先輩、ウス!」
馬から下りてきた力士はウネグの前まで行き、かしこまった様子で挨拶した。
「聞いたぜ?おめえ、コイツを一撃で倒したそうじゃねえか?コイツぁ、俺の舎弟の中じゃ一番タフなんだぜ?それを倒しちまうンだからよ。対したもンだぜ!」
「ウス!勇者ドンは強かったでゴワス!」
「おめえも強くなりたかったら、コイツを見習いな!おめえも東国で修行してきたみてえだけど、まだまだ強えヤツは山ほどいるからな。」
「ウス!!」
様子を見てるとホントに仲のいい先輩、後輩のようだ。
「おっと、挨拶はこれぐらいにしとくか。後ろもつっかえてるしよ。俺らは旦那とは別れて、コイツの初陣がてら、一稼ぎしてくるつもりだ!」
と言って、馬に飛び乗った。彼の馬はすごい派手な装飾の付いた馬具が取り付けられている。これなら遠目に見ても、彼だとわかりそうだ。
「じゃあな、アバヨ!!」
「うす!!先輩!」
「そなたまで、力士と同じ口調になってどうするのじゃ!」
つい、つられてしまった。彼はそのまま、颯爽と走り去っていった。スモウ・ライダーと共に……。
「さて、次はジェイの番ニャ!」
次は猫の人がやってきた。この人とはあまりからみがなかったが、見ていてすごい強いのがわかった。ウネグと同じぐらい敵に回したくない人だ。
「今回の任務は色々あったけど、楽しかったニャ。また、機会があればご一緒したいニャ。」
と言って握手してきた。肉球の弾力がすごい!
「君みたいなヒーローは初めて見たニャ!子供達にあわせてあげたら、すごい喜びそうニャ!」
「え?子供がいるんすか?」
この人のということは、間違いなく同じ猫人なんだろうけど、子猫ってことになるよな。想像しただけで、すごいかわいいだろうな、とは思う。
「この中では唯一の既婚者なのニャ。これから家に帰って休養を取るつもりニャ。」
これから一稼ぎするウネグとは対照的だな。まあ、それは傭兵でも人それぞれってことか。
「では。さらばなのニャ!」
「バイバイにゃ!」
「だから、そなたまで同じになってどうする!」
猫の人は去って行った。
「彼らも貴公のことを気に入ってしまったようだな。」
「ていうか、一名、喧嘩を売ってきたんだが?」
「ハハハ、彼なりの讃辞だと思っておきたまえ。彼らほどの実力者に認められたのだ。これほど、最大級の栄誉は他にない。」
自分と同じ新人達からも慕われ、ベテランからも認められた。素直に嬉しい。とはいえ、その期待に負けないように、勇者としてがんばっていかなきゃいけない。
「エドワードはこれからどうするんだ?」
「私とクロエはこれから新たなる任務に付く予定だ。生憎、基本的に私には休みなどないのだよ。」
「大変だな。でもあんまり無理すんなよ。」
「ああ。次の目的地は遠い。その旅路で休息を取りながら向かうつもりだ。」
忙しいなりにも、休み方をしっかりか考えているんだな。これがプロフェッショナルというやつか。
「それから、私の呼び方について。貴公と私の仲だ。これからはエドで構わんよ。」
「わかった。じゃあ、俺の方もロアって呼んでくれ。」
「そうだな。そうさせてもらおう。」
「最後に。君に一つ伝言がある。」
「へ?誰から?」
俺からしたら、故郷を離れた以上、知り合いなんて数えるほどしかいない。誰からだ?まさか……、
「風刃の魔術師からだ。手が空いたら、ノウザン・ウェルまで来い、とのことだ。」
ファルからだと?アイツからお声がかかるとは。というかそれ以前に、ノウザン。ウェルってどこ?俺、土地勘ないからわかんない。
「ノウザン・ウェルじゃと!あんな場所に呼び出すとは、ダンジョン攻略でもするつもりか?」
「ダンジョン!?」
実在したんだ!本とかの資料でしか見たことがないシロモノだ。なんでも地下迷宮に入って、魔王なりドラゴンなりを倒して、お宝をゲットする話はよく見かけた。
「ダンジョンを甘く見ない方がよいぞ。特にお前のような駆け出しの冒険者はな。ベテランじゃろうと一歩間違えれば、即、死じゃ!」
なんかまた、やっかい事に巻き込まれそうな予感がしてきた。今度は強敵を倒すとかじゃない。罠とかその他恐ろしい何かを相手にしなきゃならないのか。
「詳細は到着してから話す、とのことだ。あとは、覚悟を決めてから来い、とも言っていた。君なら問題ないだろう。」
いやいやいや!問題あるって!未知の脅威が待ち受けてるのに。俺の奥義じゃ、アクシデントに対抗できないぞ。
「魔術師殿が無策で待っているとは思えん。その道のプロを雇っている可能性はある。胸を借りて、手取り足取り教えてもらうと良い。」
その道のプロ、ダンジョンのプロがいるんだ?水先案内人みたいなもんか。
「何はともあれ、互いに行き先は違うが、健闘を祈ろうではないか!」
「ああ!そうだな!そっちも死ぬなよ!」
「君が石と一体化しないことを祈ろう!」
「なにそれ?どういう意味?」
「地下迷宮に挑むものにとってのお約束のようなもんじゃ。意味合い的には一寸先の闇に気を付けろ、という格言に似ておる。」
「……?」
「ハハハ!行けば、イヤというほど実感することになるさ!」
意味を知らない俺にとってはなんのことやら、ちんぷんかんぷんだ。業界用語みたいなの言われてもわからん!でも、怖いな。「石と一体化」って何の意味があるというのか。
「では、また会おう!勇者ロア!」
「じゃあな!エド!」
エドは背を向けて、去って行った。と見ていたところで誰かの視線を感じた。クロエだ。
「あなたに言っておきたいことがあります。」
あいかわらず、冷ややかな目で俺を見ている。こわい。ヴァルとか圧倒的に強い奴らとはまた別の怖さがある。
「あなたのことはある程度、見直しました。イグレス様に勝ったことは認めてあげます。ですが次はイグレス様が絶対に勝ちます。それだけはお忘れなきよう。」
「んん、ああ、ハイ。」
「それと……、」
クロエの目線の先にはエルちゃんがいた。なんか俺に対しての目つきとは明らかに変化させている。珍しく、優しそうな目で見ている。
「確か、エルという名前でしたね?あの娘を大切にしてあげなさい。心から支えてあげるのですよ。」
そうか。エルちゃんに対して何も言ってなかったからわからなかったけど、この人なりに気遣ってくれてたのか。
「……返事は?」
「ハ、ハイ!もちろんですとも!」
「ワタクシにはそれが気がかりなのです。あなたにそれが全うできるかどうかが。……かつて、エドが私にそうしてくれたように……。」
最後のほうは聞き取りづらかったな。もしかして、この人自身のことを言っているのか?
「何でもありません。最後の方は聞かなかったことにしておいて下さい。では、お達者で。」
彼女は駆け足でエドの後を追いかけていった。
「フフ、なかなか味なことをしおるわ、あの女。そなたらはあの二人を見習うがよい。良い手本じゃ。」
手本ねえ?見習えとかいわれても、なあ?エルちゃんはともかく、俺はエドとキャラが違いすぎる。俺は、あんなイケメンとは違う。俺みたいなブサメンじゃアイツみたいにはなれそうにない。でも……俺なりに強くなってみせるさ!
「じゃあ、次の目的地も決まったことだし、支度しに行こうぜ。」
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説

望んでいないのに転生してしまいました。
ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。
折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。
・・と、思っていたんだけど。
そう上手くはいかないもんだね。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる