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第2章 黒騎士と魔王
第41話 ライセンス試験、開始!
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「ふい~、やっと終わった。」
終わったと言っても、筆記試験が終わっただけである。体感としては正直、微妙といったところか。問題は幸いにも、四択が大半を占めていたため、うろ覚えでもたいていはなんとかなった。
「あの、もしかして勇者様ですよね?」
突如、誰かから話しかけられた。相手はなんと、かわいい女の子である。こんなことは初めてである。これも勇者の力故か。
「うん、まあ、そうだけど?」
「勇者様がライセンス試験を受験されるなんて、思ってもいませんでした!」
まあ、そりゃそうか。勇者ともなれば、一流の冒険者の象徴ともいえる存在だろうから、常識的に考えると、こんな所にいるのはある意味ヘンだろう。
「まあ、ぶっちゃけ、勇者っていってもまだ、なりたてなもんだから。勇者とはいえ特別というわけじゃないんだヨ。」
俺も当初は勇者様特権で冒険者ライセンス顔パスぐらいには思ってましたよ。しかし、そうは問屋は卸さない、もとい、ギルドは通さないのであった。まあ、勇者様なら試験なんて余裕でしょうなんてギルドのオッサンはフォローしてくれたけどな。
「へー、そうなんですか?……なんだか親近感が湧きます!」
めっちゃ良い娘じゃないか。今日はそれだけで頑張れそうな気がするわ。と、こんかやりとりをしているとなんだか他の受験生もわらわらと集まってきた。やっぱ勇者パワー半端ないわ。
「わたし、アルケミストを目指しているんです!一緒に頑張りましょう!」
アルケミスト?……なんだっけ?錬金術師っていうんだっけ?いわゆる俺の母国でいうところの練丹術師みたいなもんだったかな。
「ぼくは魔獣使いを目指してます。よろしく!」
魔獣使いという少年から握手を求められ、反射的にそれに対応する。他の連中もわらわらと俺の目の前に群がってきた。なんかいきなり有名人になった気分だ。ん?魔獣使い?てことは魔獣、妖獣の類いを操れるんだっけ。……じゃあ、サヨちゃんに手を付けられなくなったら彼に助けを求めるようにしよう。
「俺は魔術師です!」
「あたしは戦士!」
「某は僧侶です。以後、お見知りおきを。」
「わいは商人やで!」
「私はファーマーを目指してます。」
「オイドンは力士ですタイ!」
「じゃあ、ウチは遊び人で。」
なんだ、なんだ?青少年の主張大会かな。いろんなやつがいるな。昨日暗記した職業は一通りいる感じか。
……ん?でも、最後らへんでなんか変なのがいたような気がするが、気のせいだろう。むしろ、俺もそんな変な職業になって、邪竜狩りみたいなのから、さっさとずらかりたい。
散々、もみくちゃにされたあと、各種実技試験の順番を待つことになった。なお、筆記試験の結果は試験の課程が全て終了してから告知されるらしい。結果が気になるところだが仕方ない。
「次の方、どうぞ!」
その声に対応して、さっきの魔術師君の出番が回ってきた。そう、今は魔法技能の実技試験を受けているところだ。基本、魔法系の試験は魔法を使う職業の人だけに限られるそうだが、俺まで参加させられている。
歴代勇者は魔法も使いこなしていたそうなので、その対象となってしまっているのだ。厳密には勇者は職業ではなく、称号であるため、今回の試験は総合職として受ける必要があるのだそうだ。勇者という肩書きがあるせいで試験の難易度が俺一人だけ上がってしまっているのだ。
「あの、勇者様ってどんな魔法を使えるんですか?」
錬金術師ちゃんがヒソヒソ声で話しかけてくる。
「え?……ん、あ、その、えーと……、」
言葉に詰まっていると、魔術師君の実演が始まった。なにやら、難しい単語をうんたらかんたら呟いている。サヨちゃんによれば魔術を行使するには、毎度決まり文句みたいなのを言わないといけないらしい。普通はそうしないと魔力が収束できないらしい。むしろ、そうしなければ成功しないらしい。普通は。
「炎の精霊よ!我に従え!ファイア・ボルト!」
その言葉と共に、彼の持つ魔法の杖の先端から、こぶし大の火の玉が放たれ的の魔方陣に飛んで行き、小さな爆発を起こす。ファルちゃんやサヨちゃんの魔術に比べると随分とかわいい威力だが、だいたいこれぐらいが一般的な威力だそうだ。
つまり、要するにあいつらがおかしいのである。詠唱なし、杖なしで連発出来るあいつらが超人過ぎるのだ。まあ、サヨちゃんに関しては人ですらないが。あれぐらいのレベルの奴は滅多にいないらしい。さすがにクルセイダーズのエリート中のエリートだから為せる技だったのだ。
「……ま、まあ、ああいう火炎魔法なら使えるよ。」
「すごいですね!わたし、攻撃魔法はつかえないんですよ。難しくって。」
そうそう、難しいよな。普通はそうだよな。この娘もここにいるということは、攻撃魔法が使えなくても、きっと何らかの魔法が使えるのだろう。俺に関しては、サヨちゃんからある程度手解きをしてもらっている。
ここに来るまでの途中で練習したのだ。俺自身は全くと言っても良いほど、魔法の知識も技術も何もない。しかし歴代の勇者が使えたということで、額冠の力を使えば使用可能だと言う名目で練習させられた。杖?杖に関しては額冠がその役割を果たしてくれるらしい。何かよくわからんが、そういうことらしい。
「次の方、どうぞ!」
とうとう自分の番が回ってきた。こうなれば、なんとかやりきるしかない。
「では、得意な魔法を行使してください。」
落ち着け。落ち着いてしっかりやり方を思い出すのだ。基本に則ればだいたい大丈夫だ!
「我は放つ!……光、光の……、」
周囲に静寂が流れる。自分の心臓の鼓動音が聞こえそうなくらいに。今、俺の心臓はバックバクである。
「光の木人!」
ん!?間違えたかな?周囲がざわめき始める。確かに間違えたような気がする。え、えーと、白人だっけ?白菜だっけ?何か違う気がする。なんか、ド忘れした。
「……あのー?勇者殿?真面目にやっていただけますか?後行程に響きますので、ご冗談はご遠慮いただけますか?」
「さ、さーせん!ちょっと場を和ませようと思って。」
ほらみろ!怒られたじゃないか!もういいから別のにしよう。気を取り直して今一度!
「太陽よりも激しく燃えるもの、偉大なる炎の魔神よ、我に力を与え給え、」
詠唱を始めた途端、さっきとは違うどよめきが生まれた。
「まさか!」
「嘘でしょ!?」
「アレを使えるの?」
まあ、そりゃそうなるわな。
「焦熱の大炎を以て全てを焼き尽くせ!」
手前に突き出した手の平から炎が生じ始める。そして、それは……すぐに消えた。その瞬間、周囲が一斉に静まりかえる。
「……あ、あの、勇者殿?それはセッティング・ファイアの魔術ですよね?」
「これはセッティング・ファイアではない!」
一瞬で場の空気が張り詰めた。試験会場の人間が一斉に集まってくるのが気配でわかる。
「……プロミネンス・バーストだ!」
あ、あれ?何だろう?目から何か液体が……。涙か。泣いてるんだ俺は。
「プロミネンス・バーストって火炎系最上位の魔術だよね?」
「……と見せかけての、セッティング・ファイアじゃないの?」
「ま、まさか、勇者様なりのジョークなんじゃ?」
「勇者様ったら、お茶目ねえ。」
「でも、泣いてるよ?なんでだろ?」
「おそらく炎の煙が目に染みたんでゴワスな!」
みんな、ゴメンね。気使わせちゃってゴメンね。でも、これが今の俺の全力なのさ。……っていうかしれっと力士が混じってるのは何だ?おまえ脳筋だろ。お呼びじゃないんだよ!
「勇者殿?……魔法の実技は以上でよろしいですかな?」
試験官から確認が来た。なんか顔が引きつってるのが良くわかった。サーセン、ほんとにサーセン!
「はい。よろしいです。」
うう。悲しいけど、コレ、現実なのよね。そのまま俺は肩を落としながらその場から離れた。こうなることはあらかじめわかっていたとはいえ、つらい。
ちなみに火炎以外の魔法も使えるが、どれもこれも、お察しくださいなレベルである。回復魔法なんて、ササクレを治す程度の効果しかない。最上位の魔法が使えるくせに効果が軒並み低いのは、俺の魔法力が圧倒的に低いかららしい。サヨちゃん曰く、魔法の素質が全くないらしい。もれなく多方面に不器用な俺って一体……。
終わったと言っても、筆記試験が終わっただけである。体感としては正直、微妙といったところか。問題は幸いにも、四択が大半を占めていたため、うろ覚えでもたいていはなんとかなった。
「あの、もしかして勇者様ですよね?」
突如、誰かから話しかけられた。相手はなんと、かわいい女の子である。こんなことは初めてである。これも勇者の力故か。
「うん、まあ、そうだけど?」
「勇者様がライセンス試験を受験されるなんて、思ってもいませんでした!」
まあ、そりゃそうか。勇者ともなれば、一流の冒険者の象徴ともいえる存在だろうから、常識的に考えると、こんな所にいるのはある意味ヘンだろう。
「まあ、ぶっちゃけ、勇者っていってもまだ、なりたてなもんだから。勇者とはいえ特別というわけじゃないんだヨ。」
俺も当初は勇者様特権で冒険者ライセンス顔パスぐらいには思ってましたよ。しかし、そうは問屋は卸さない、もとい、ギルドは通さないのであった。まあ、勇者様なら試験なんて余裕でしょうなんてギルドのオッサンはフォローしてくれたけどな。
「へー、そうなんですか?……なんだか親近感が湧きます!」
めっちゃ良い娘じゃないか。今日はそれだけで頑張れそうな気がするわ。と、こんかやりとりをしているとなんだか他の受験生もわらわらと集まってきた。やっぱ勇者パワー半端ないわ。
「わたし、アルケミストを目指しているんです!一緒に頑張りましょう!」
アルケミスト?……なんだっけ?錬金術師っていうんだっけ?いわゆる俺の母国でいうところの練丹術師みたいなもんだったかな。
「ぼくは魔獣使いを目指してます。よろしく!」
魔獣使いという少年から握手を求められ、反射的にそれに対応する。他の連中もわらわらと俺の目の前に群がってきた。なんかいきなり有名人になった気分だ。ん?魔獣使い?てことは魔獣、妖獣の類いを操れるんだっけ。……じゃあ、サヨちゃんに手を付けられなくなったら彼に助けを求めるようにしよう。
「俺は魔術師です!」
「あたしは戦士!」
「某は僧侶です。以後、お見知りおきを。」
「わいは商人やで!」
「私はファーマーを目指してます。」
「オイドンは力士ですタイ!」
「じゃあ、ウチは遊び人で。」
なんだ、なんだ?青少年の主張大会かな。いろんなやつがいるな。昨日暗記した職業は一通りいる感じか。
……ん?でも、最後らへんでなんか変なのがいたような気がするが、気のせいだろう。むしろ、俺もそんな変な職業になって、邪竜狩りみたいなのから、さっさとずらかりたい。
散々、もみくちゃにされたあと、各種実技試験の順番を待つことになった。なお、筆記試験の結果は試験の課程が全て終了してから告知されるらしい。結果が気になるところだが仕方ない。
「次の方、どうぞ!」
その声に対応して、さっきの魔術師君の出番が回ってきた。そう、今は魔法技能の実技試験を受けているところだ。基本、魔法系の試験は魔法を使う職業の人だけに限られるそうだが、俺まで参加させられている。
歴代勇者は魔法も使いこなしていたそうなので、その対象となってしまっているのだ。厳密には勇者は職業ではなく、称号であるため、今回の試験は総合職として受ける必要があるのだそうだ。勇者という肩書きがあるせいで試験の難易度が俺一人だけ上がってしまっているのだ。
「あの、勇者様ってどんな魔法を使えるんですか?」
錬金術師ちゃんがヒソヒソ声で話しかけてくる。
「え?……ん、あ、その、えーと……、」
言葉に詰まっていると、魔術師君の実演が始まった。なにやら、難しい単語をうんたらかんたら呟いている。サヨちゃんによれば魔術を行使するには、毎度決まり文句みたいなのを言わないといけないらしい。普通はそうしないと魔力が収束できないらしい。むしろ、そうしなければ成功しないらしい。普通は。
「炎の精霊よ!我に従え!ファイア・ボルト!」
その言葉と共に、彼の持つ魔法の杖の先端から、こぶし大の火の玉が放たれ的の魔方陣に飛んで行き、小さな爆発を起こす。ファルちゃんやサヨちゃんの魔術に比べると随分とかわいい威力だが、だいたいこれぐらいが一般的な威力だそうだ。
つまり、要するにあいつらがおかしいのである。詠唱なし、杖なしで連発出来るあいつらが超人過ぎるのだ。まあ、サヨちゃんに関しては人ですらないが。あれぐらいのレベルの奴は滅多にいないらしい。さすがにクルセイダーズのエリート中のエリートだから為せる技だったのだ。
「……ま、まあ、ああいう火炎魔法なら使えるよ。」
「すごいですね!わたし、攻撃魔法はつかえないんですよ。難しくって。」
そうそう、難しいよな。普通はそうだよな。この娘もここにいるということは、攻撃魔法が使えなくても、きっと何らかの魔法が使えるのだろう。俺に関しては、サヨちゃんからある程度手解きをしてもらっている。
ここに来るまでの途中で練習したのだ。俺自身は全くと言っても良いほど、魔法の知識も技術も何もない。しかし歴代の勇者が使えたということで、額冠の力を使えば使用可能だと言う名目で練習させられた。杖?杖に関しては額冠がその役割を果たしてくれるらしい。何かよくわからんが、そういうことらしい。
「次の方、どうぞ!」
とうとう自分の番が回ってきた。こうなれば、なんとかやりきるしかない。
「では、得意な魔法を行使してください。」
落ち着け。落ち着いてしっかりやり方を思い出すのだ。基本に則ればだいたい大丈夫だ!
「我は放つ!……光、光の……、」
周囲に静寂が流れる。自分の心臓の鼓動音が聞こえそうなくらいに。今、俺の心臓はバックバクである。
「光の木人!」
ん!?間違えたかな?周囲がざわめき始める。確かに間違えたような気がする。え、えーと、白人だっけ?白菜だっけ?何か違う気がする。なんか、ド忘れした。
「……あのー?勇者殿?真面目にやっていただけますか?後行程に響きますので、ご冗談はご遠慮いただけますか?」
「さ、さーせん!ちょっと場を和ませようと思って。」
ほらみろ!怒られたじゃないか!もういいから別のにしよう。気を取り直して今一度!
「太陽よりも激しく燃えるもの、偉大なる炎の魔神よ、我に力を与え給え、」
詠唱を始めた途端、さっきとは違うどよめきが生まれた。
「まさか!」
「嘘でしょ!?」
「アレを使えるの?」
まあ、そりゃそうなるわな。
「焦熱の大炎を以て全てを焼き尽くせ!」
手前に突き出した手の平から炎が生じ始める。そして、それは……すぐに消えた。その瞬間、周囲が一斉に静まりかえる。
「……あ、あの、勇者殿?それはセッティング・ファイアの魔術ですよね?」
「これはセッティング・ファイアではない!」
一瞬で場の空気が張り詰めた。試験会場の人間が一斉に集まってくるのが気配でわかる。
「……プロミネンス・バーストだ!」
あ、あれ?何だろう?目から何か液体が……。涙か。泣いてるんだ俺は。
「プロミネンス・バーストって火炎系最上位の魔術だよね?」
「……と見せかけての、セッティング・ファイアじゃないの?」
「ま、まさか、勇者様なりのジョークなんじゃ?」
「勇者様ったら、お茶目ねえ。」
「でも、泣いてるよ?なんでだろ?」
「おそらく炎の煙が目に染みたんでゴワスな!」
みんな、ゴメンね。気使わせちゃってゴメンね。でも、これが今の俺の全力なのさ。……っていうかしれっと力士が混じってるのは何だ?おまえ脳筋だろ。お呼びじゃないんだよ!
「勇者殿?……魔法の実技は以上でよろしいですかな?」
試験官から確認が来た。なんか顔が引きつってるのが良くわかった。サーセン、ほんとにサーセン!
「はい。よろしいです。」
うう。悲しいけど、コレ、現実なのよね。そのまま俺は肩を落としながらその場から離れた。こうなることはあらかじめわかっていたとはいえ、つらい。
ちなみに火炎以外の魔法も使えるが、どれもこれも、お察しくださいなレベルである。回復魔法なんて、ササクレを治す程度の効果しかない。最上位の魔法が使えるくせに効果が軒並み低いのは、俺の魔法力が圧倒的に低いかららしい。サヨちゃん曰く、魔法の素質が全くないらしい。もれなく多方面に不器用な俺って一体……。
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※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。
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