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第2章 黒騎士と魔王
第40話 到着、交易都市
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「さすが交易都市!たまんねーな!」
その日、太陽が傾きかけた頃に俺たちは交易都市に到着した。俺にとってはこの国に着いてから初めて訪れる都市である。ワクワクが止まらない。
「あまり時間のたたぬうちに日が暮れる故、宿を探すのを優先した方が良いじゃろうな。……って、こら!何をしておるんじゃ!」
「おっさん!これ二本ちょうだい!」
サヨちゃんの声に耳を貸さずに早速、屋台の方に行き、肉の串焼きを購入する。
「まったく!しょうのないやつじゃ!」
サヨの機嫌を損ねてしまったようだ。
この状況を読めなかった訳ではない。これを打開するには……、
「ほい、これ!」
これ見よがしに先ほどの串焼きの片方を差し出す。
「これ、じゃないが!そなたはどういうつもりじゃ!」
「まー、まー。そう言わずにお一つどうぞ!」
「な、何をする!むぐ!!」
半ば強引に彼女の口に串焼きを突っ込んだ。
「……もぐ、もぐ。うん、うまいなこれは……って違うわ!このたわけが!」
とは言いつつ、彼女はちゃっかり串を奪い取り残りを食べ始めた。
やはり、食欲には勝てなかったか。
「あのさあ、冒険者ギルドだけど、今から行くってのは駄目なのか?情報聞くだけなら手早く済ませれるじゃねーの?」
「そなたは何も知らんのじゃな。ギルドを利用するには冒険者ライセンスが必要なのじゃ。」
「ないせんす?何それ?」
毎度、毎度聞き慣れない単語が多すぎて、全然頭に入ってこない。地名とか魔法名とか。サヨちゃんはまだ気を遣ってちゃんと説明してくれるが、ファルちゃんなんかはホントに何言ってんのか、わかんないレベルだった。
「ライセンスとは冒険者の身分証明書みたいなものじゃ。昨日そなたが言っておった、調理人免許みたいな物じゃ。当然、そなたは持っておらんじゃろう?」
「うん。ない。でも作りゃあいいでしょ?」
「ただでもらえると思ったら大間違いじゃ。冒険者としての資格を見極めるための試験があるのじゃ。」
「何ィ?試験だとぉ!……なんか科挙みたいだな。」
「おお、確かにそなたの国にはそのような物があったな。それは官僚登用試験で、筆記試験だけじゃろうが、こちらは技能試験もあるぞ。」
試験と聞いてピンときた。なるほど。そうか、てことはつまり……、お勉強が必要なんですかね?
「あのさあ、勉強とかしてないけど大丈夫なんすかね?」
「……?ま、まあ大丈夫じゃろ。一般的な常識問題に答えるだけじゃ。」
なんだ?その間は?やっぱ、俺には無理なんでは?この地域の一般常識なんてほぼ、何も知らんぞ。
「妾がなんとかしよう。大丈夫じゃ。」
「なんとかってなんだよ?一夜漬けさせるんじゃないだろうな?」
「わすれたか?あの技を習得する際も使ったあの手段ならば問題ない。」
「ああ、あれね。……ちょっとまて!またあれをやんのか!」
いやなことを思い出した。奥義修得の時に仮想空間を作りだしその中で修練をした。仮想空間の中では時間の流れを外の世界よりも遅く出来るため、短い時間でも多くのことが出来るが、デメリットがある。
時間の流れを遅くした状態にすると、体への負担が大きいのだ。あの時もそうだった。ヴァルとの戦闘後、丸二日ほど意識がなかったのはその反動だった。
「勘弁してくれ!そんな疲れたら試験どころじゃなくなる!」
「問題ない!あの技に比べたら簡単じゃ。そなたなら出来る!」
嫌な予感しかない。本当に出来るんだろうか?足取りは重いがとにかく宿を早めに見つけることにした。
「ここが冒険者ギルドじゃ!」
翌朝、早速、冒険者ギルドへやってきた。想像していたものより、ずっと立派な建物だった。多くの人々が出入りしており、活気であふれているのが見て取れた。なお……、
「何をしておる!もっとシャキッとせい!情けないヤツじゃのう!」
「うるさいなあ。なんでそんな朝っぱらから元気なんだよ。気が滅入るわ。」
昨日の俺の嫌な予感は的中した。昨晩、仮想空間を利用して猛勉強したものの、かなり悪戦苦闘した。地名やら、モンスターの名前やら、職業の種類やら知らないことずくめだった。サヨちゃんも想定外だったらしく、最初は呆れ気味だった。それでもなんとか付き合ってくれたおかげで、なんとか一通り勉強は出来た。が、当然疲労が半端ない。
「ふわああ、眠い。眠りの試験ならあっさり合格できそうだぜ。」
「なにを情けないことを!大丈夫じゃ!出来る!」
眠い。ホントに眠い。こんな様子だから、「昨晩はお楽しみでしたね♪」とか宿屋の女将に言われてしまった。お楽しみじゃないわい。お苦しみだったんじゃい!
「では、健闘を期待する!」
「……ほーい。」
気が重いがやるしかない。俺は重い足取りでギルドの中へと入っていった。
その日、太陽が傾きかけた頃に俺たちは交易都市に到着した。俺にとってはこの国に着いてから初めて訪れる都市である。ワクワクが止まらない。
「あまり時間のたたぬうちに日が暮れる故、宿を探すのを優先した方が良いじゃろうな。……って、こら!何をしておるんじゃ!」
「おっさん!これ二本ちょうだい!」
サヨちゃんの声に耳を貸さずに早速、屋台の方に行き、肉の串焼きを購入する。
「まったく!しょうのないやつじゃ!」
サヨの機嫌を損ねてしまったようだ。
この状況を読めなかった訳ではない。これを打開するには……、
「ほい、これ!」
これ見よがしに先ほどの串焼きの片方を差し出す。
「これ、じゃないが!そなたはどういうつもりじゃ!」
「まー、まー。そう言わずにお一つどうぞ!」
「な、何をする!むぐ!!」
半ば強引に彼女の口に串焼きを突っ込んだ。
「……もぐ、もぐ。うん、うまいなこれは……って違うわ!このたわけが!」
とは言いつつ、彼女はちゃっかり串を奪い取り残りを食べ始めた。
やはり、食欲には勝てなかったか。
「あのさあ、冒険者ギルドだけど、今から行くってのは駄目なのか?情報聞くだけなら手早く済ませれるじゃねーの?」
「そなたは何も知らんのじゃな。ギルドを利用するには冒険者ライセンスが必要なのじゃ。」
「ないせんす?何それ?」
毎度、毎度聞き慣れない単語が多すぎて、全然頭に入ってこない。地名とか魔法名とか。サヨちゃんはまだ気を遣ってちゃんと説明してくれるが、ファルちゃんなんかはホントに何言ってんのか、わかんないレベルだった。
「ライセンスとは冒険者の身分証明書みたいなものじゃ。昨日そなたが言っておった、調理人免許みたいな物じゃ。当然、そなたは持っておらんじゃろう?」
「うん。ない。でも作りゃあいいでしょ?」
「ただでもらえると思ったら大間違いじゃ。冒険者としての資格を見極めるための試験があるのじゃ。」
「何ィ?試験だとぉ!……なんか科挙みたいだな。」
「おお、確かにそなたの国にはそのような物があったな。それは官僚登用試験で、筆記試験だけじゃろうが、こちらは技能試験もあるぞ。」
試験と聞いてピンときた。なるほど。そうか、てことはつまり……、お勉強が必要なんですかね?
「あのさあ、勉強とかしてないけど大丈夫なんすかね?」
「……?ま、まあ大丈夫じゃろ。一般的な常識問題に答えるだけじゃ。」
なんだ?その間は?やっぱ、俺には無理なんでは?この地域の一般常識なんてほぼ、何も知らんぞ。
「妾がなんとかしよう。大丈夫じゃ。」
「なんとかってなんだよ?一夜漬けさせるんじゃないだろうな?」
「わすれたか?あの技を習得する際も使ったあの手段ならば問題ない。」
「ああ、あれね。……ちょっとまて!またあれをやんのか!」
いやなことを思い出した。奥義修得の時に仮想空間を作りだしその中で修練をした。仮想空間の中では時間の流れを外の世界よりも遅く出来るため、短い時間でも多くのことが出来るが、デメリットがある。
時間の流れを遅くした状態にすると、体への負担が大きいのだ。あの時もそうだった。ヴァルとの戦闘後、丸二日ほど意識がなかったのはその反動だった。
「勘弁してくれ!そんな疲れたら試験どころじゃなくなる!」
「問題ない!あの技に比べたら簡単じゃ。そなたなら出来る!」
嫌な予感しかない。本当に出来るんだろうか?足取りは重いがとにかく宿を早めに見つけることにした。
「ここが冒険者ギルドじゃ!」
翌朝、早速、冒険者ギルドへやってきた。想像していたものより、ずっと立派な建物だった。多くの人々が出入りしており、活気であふれているのが見て取れた。なお……、
「何をしておる!もっとシャキッとせい!情けないヤツじゃのう!」
「うるさいなあ。なんでそんな朝っぱらから元気なんだよ。気が滅入るわ。」
昨日の俺の嫌な予感は的中した。昨晩、仮想空間を利用して猛勉強したものの、かなり悪戦苦闘した。地名やら、モンスターの名前やら、職業の種類やら知らないことずくめだった。サヨちゃんも想定外だったらしく、最初は呆れ気味だった。それでもなんとか付き合ってくれたおかげで、なんとか一通り勉強は出来た。が、当然疲労が半端ない。
「ふわああ、眠い。眠りの試験ならあっさり合格できそうだぜ。」
「なにを情けないことを!大丈夫じゃ!出来る!」
眠い。ホントに眠い。こんな様子だから、「昨晩はお楽しみでしたね♪」とか宿屋の女将に言われてしまった。お楽しみじゃないわい。お苦しみだったんじゃい!
「では、健闘を期待する!」
「……ほーい。」
気が重いがやるしかない。俺は重い足取りでギルドの中へと入っていった。
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