36 / 401
第1章 英雄と竜帝
第36話 勇者、勝利する。 ~そして、伝説へ~
しおりを挟む
「……ん?ここは?」
ロアは見覚えのある場所で目覚めた。前にも同じようなことがあった気がする。
「気が付いたか?気分はどうじゃ?」
自分が寝ているベッドの側に一人の少女がいた。あれ?誰だったっけ?
「なんじゃ、まだ気分が悪いのか?」
まだ、頭がボーッとしていた。自分が何をしていたのか、思い出せない。
「これ!聴いておるのか!返事をせい!」
声を出そうにも、思うように言葉が出てこない。「ん?ああ?」
「まさか、記憶喪失にでもなったのか?」
言うなり突然、彼女は自らの額をロアの額にぶつけてきた。ほとんど頭突きに近い状態だった。
「むー?……なんじゃ、異常はないではないか!」
額をしばらく付けた後、離れてから異常はないことを悟ったようだ。似たようなことを前にもされたような……、
「思い出した!!ヴァルは!ヴァルはどうしたんだ!」
「何を言っておる。あやつはそなたが倒したであろうが。」
倒した?倒したのだろうか?まだ頭の中が混乱している。
「えーい!しっかりせい!このたわけがっ!!」
突如視界からサヨの姿が消える。頬が痛い。殴られたようだ。
「わーっ!思い出した、思い出した!」
向き直り、必死に無事をアピールする。しかし、サヨはすでに二発目の体勢に入っていた。
バチーン!!
為す術もなく、二撃目も食らった。
「だめだ。もう、これは死んだ。」
「もう、知らぬ!」
機嫌を損ねてしまったようだ。
「……ところで、あの二人はどこへ行ったんだ?」
「あの二人ならば、先代勇者を弔いに行ったぞ。」
先代勇者カレルのことだろう。ロアはあの後、簡易的に埋葬し、弔いはした。しかし、当時は名前すら知らない状態だったので、墓碑銘はなにもなかった。弔いにと言ったが、誰にも場所を教えていないはず。
「そなたが丸二日、寝込んでおる間に記憶を探って、 教えてやったのじゃ。場所の特定には苦労したぞ。」
合点がいった。サヨが記憶を探れるということを忘れていた。
「その後はクルセイダーズの本部まで戻ると言っておった。報告なり何なり、後処理があると言っておった。そなたには目が覚めたらよろしくとな。」
いろいろ話したいこともあったが、二人は忙しいのだろう。また会いたければ、本部に乗り込んでやればいい。
「それより、そなたはこれからどうするつもりなのじゃ?行く当てはあるのか?」
ない。何もなかった。もとより、行く当てのない旅だったのだ。目的地どころか、目的もない。
「では目的を与えてやろう。」
与える?与えるような目的が何かあるのだろうか?
「あのならず者、はぐれ竜、レギンを討伐するのじゃ。」
「へ?」
ロアは目が点になった。なんだか超難度クエストを与えられた気がする。
「そうだ!思い出した。あったんだよ!目的が!じゃ!早速行ってくる。」
ベッドから急に立ち上がり、部屋を後にしようとする。
「待てい。その目的とは〈逃げる〉ということではなかろうな?」
ロアは聞き終わる前に急いで飛び出した。何としてでも逃げなければ。
「嘘偽りがなければ、その頭の中を見せてみよ!」
しかし、まわりこまれた!突如、目の前にサヨがあらわれた!
「おや?どうなされました?」
しかし、かこまれた!部屋の出口にはクエレ・ブレがあらわれた!もはや〈にげる〉の選択肢はなくなっていた。
「私が悪うございました。」
できうる限りのきれいな土下座をした。
「左様か。引き受ける気になったか?すまんのう。」
サヨは満面の笑みを浮かべていた。こんな顔は初めて見た気がする。逆に怖い。
「悪いが、さっそく目的を変更させてもらうぞ。」
変更?一体何を変更するというのだろうか?
「妾の護衛をせよ!あの憎い性悪竜を成敗しにいくぞ!」
「サヨ様、いってらっしゃいませ。」
クエレは出口から離れ、二人に道を譲った。
「ちょ、クエレさん、サヨを行かせてもいいのか?」
「構わんぞ。クエレとは既に相談済みじゃ。復興や里の移転は任せた。妾は成敗に専念できるということじゃ。」
「えーっ!族長が職務放棄かよ!」
「罪人の処罰も職務のうちじゃ!ほれ、行くぞ!」
ロアはずるずると引きずられていく。無理矢理連行されているようだった。
「いやだー!行きたくない!」
「観念せい!そなたも勇者の職務を全うせい!」
《……これで勝ったと思わぬことだ……。》
突然、ロアの頭の中に語り掛ける者がいた。
(……??気のせいか?)
気のせいだろうか?とにかく今はそう思うことにした。
二人の旅路は始まった。これからも幾重もの困難が待ち受けていることだろう。そして、二人の旅はいずれ伝説となるだろう。
ロアは見覚えのある場所で目覚めた。前にも同じようなことがあった気がする。
「気が付いたか?気分はどうじゃ?」
自分が寝ているベッドの側に一人の少女がいた。あれ?誰だったっけ?
「なんじゃ、まだ気分が悪いのか?」
まだ、頭がボーッとしていた。自分が何をしていたのか、思い出せない。
「これ!聴いておるのか!返事をせい!」
声を出そうにも、思うように言葉が出てこない。「ん?ああ?」
「まさか、記憶喪失にでもなったのか?」
言うなり突然、彼女は自らの額をロアの額にぶつけてきた。ほとんど頭突きに近い状態だった。
「むー?……なんじゃ、異常はないではないか!」
額をしばらく付けた後、離れてから異常はないことを悟ったようだ。似たようなことを前にもされたような……、
「思い出した!!ヴァルは!ヴァルはどうしたんだ!」
「何を言っておる。あやつはそなたが倒したであろうが。」
倒した?倒したのだろうか?まだ頭の中が混乱している。
「えーい!しっかりせい!このたわけがっ!!」
突如視界からサヨの姿が消える。頬が痛い。殴られたようだ。
「わーっ!思い出した、思い出した!」
向き直り、必死に無事をアピールする。しかし、サヨはすでに二発目の体勢に入っていた。
バチーン!!
為す術もなく、二撃目も食らった。
「だめだ。もう、これは死んだ。」
「もう、知らぬ!」
機嫌を損ねてしまったようだ。
「……ところで、あの二人はどこへ行ったんだ?」
「あの二人ならば、先代勇者を弔いに行ったぞ。」
先代勇者カレルのことだろう。ロアはあの後、簡易的に埋葬し、弔いはした。しかし、当時は名前すら知らない状態だったので、墓碑銘はなにもなかった。弔いにと言ったが、誰にも場所を教えていないはず。
「そなたが丸二日、寝込んでおる間に記憶を探って、 教えてやったのじゃ。場所の特定には苦労したぞ。」
合点がいった。サヨが記憶を探れるということを忘れていた。
「その後はクルセイダーズの本部まで戻ると言っておった。報告なり何なり、後処理があると言っておった。そなたには目が覚めたらよろしくとな。」
いろいろ話したいこともあったが、二人は忙しいのだろう。また会いたければ、本部に乗り込んでやればいい。
「それより、そなたはこれからどうするつもりなのじゃ?行く当てはあるのか?」
ない。何もなかった。もとより、行く当てのない旅だったのだ。目的地どころか、目的もない。
「では目的を与えてやろう。」
与える?与えるような目的が何かあるのだろうか?
「あのならず者、はぐれ竜、レギンを討伐するのじゃ。」
「へ?」
ロアは目が点になった。なんだか超難度クエストを与えられた気がする。
「そうだ!思い出した。あったんだよ!目的が!じゃ!早速行ってくる。」
ベッドから急に立ち上がり、部屋を後にしようとする。
「待てい。その目的とは〈逃げる〉ということではなかろうな?」
ロアは聞き終わる前に急いで飛び出した。何としてでも逃げなければ。
「嘘偽りがなければ、その頭の中を見せてみよ!」
しかし、まわりこまれた!突如、目の前にサヨがあらわれた!
「おや?どうなされました?」
しかし、かこまれた!部屋の出口にはクエレ・ブレがあらわれた!もはや〈にげる〉の選択肢はなくなっていた。
「私が悪うございました。」
できうる限りのきれいな土下座をした。
「左様か。引き受ける気になったか?すまんのう。」
サヨは満面の笑みを浮かべていた。こんな顔は初めて見た気がする。逆に怖い。
「悪いが、さっそく目的を変更させてもらうぞ。」
変更?一体何を変更するというのだろうか?
「妾の護衛をせよ!あの憎い性悪竜を成敗しにいくぞ!」
「サヨ様、いってらっしゃいませ。」
クエレは出口から離れ、二人に道を譲った。
「ちょ、クエレさん、サヨを行かせてもいいのか?」
「構わんぞ。クエレとは既に相談済みじゃ。復興や里の移転は任せた。妾は成敗に専念できるということじゃ。」
「えーっ!族長が職務放棄かよ!」
「罪人の処罰も職務のうちじゃ!ほれ、行くぞ!」
ロアはずるずると引きずられていく。無理矢理連行されているようだった。
「いやだー!行きたくない!」
「観念せい!そなたも勇者の職務を全うせい!」
《……これで勝ったと思わぬことだ……。》
突然、ロアの頭の中に語り掛ける者がいた。
(……??気のせいか?)
気のせいだろうか?とにかく今はそう思うことにした。
二人の旅路は始まった。これからも幾重もの困難が待ち受けていることだろう。そして、二人の旅はいずれ伝説となるだろう。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

望んでいないのに転生してしまいました。
ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。
折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。
・・と、思っていたんだけど。
そう上手くはいかないもんだね。

巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる