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第1章 英雄と竜帝
第31話 勇者、修練する。
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《うむ!徐々に出来てきているのではないか?その調子じゃ。》
あれから、どれくらい時間が経ったのだろうか?時間の感覚が麻痺するぐらいに、ロアは技の修練を続けていた。サヨによると、この仮想空間では外部よりも時間の経過が早いのだと言う。魔力を費やせば費やすほど、時間の流れが早くなるのだと言う。時間がないとはいえ、彼女の魔力が尽きないか心配になってしまう。
「あのさあ、頭の中に話しかけるのやめてくんないかな?キンキンするんだけど?」
《仕方なかろう。この姿では喋れんのじゃ。そもそも、古来からコミュニケーションとはこの様な形式が一般的だったのじゃ。口で喋るのはそれができん、そなたらが始めたことじゃ。妾たちはそなたらに合わせてやっているじゃ。辛抱せい。》
彼女が古来というからには、ロアには想像がつかないくらい遠い昔からのことなのだろう。そんなことに反論していても勝ち目がなさそうなので、ロアは考えるのをやめた。
「それより、大丈夫なのか?こんなことしてたらあんたも大変だろ?魔力は持つのか?」
《そなたの精神力が先に尽きるか、妾の魔力が先に尽きるか、どっこいどっこいといったところじゃ。》
でも、それでは、魔力が尽きなかったとしても、消耗した状態でヴァルに対峙することになるのではないだろうか?
《どのみち、妾の力はあやつには通用せぬ。手が出せんのじゃ。》
「なんで?そんな図体してたら、俺より強いだろ?」
《そなたは竜殺の魔剣の恐ろしさをわかっておらぬ。まあ無理もないか。そなたら人にとっては切れ味の良い剣でしかないからの。》
それ以外の何物なのだろう、ロアにはそういう風にしか思えなかった。竜の鱗さえ切り裂ける剣だけではないというのか。
《あれは、バーニング・コートのような魔法障壁を無効化する力があるのじゃ。もちろんそれだけではないぞ。妾たち上位の竜族が持つドラゴン・スケイルさえも物ともせんのじゃからな。》
サヨの解説によれば、ドラゴン・スケイルは上位の竜族が備える強固な防御障壁である。物理的な衝撃だけでなく、如何なる魔術さえもはね除けるのだと言う。ロアたちが偽の竜帝に対抗できたのは、この障壁がなかったためだと言う。見た目だけ竜帝に見せかけた中級種の竜は持ち合わせていないのだと言う。逆にヴァルが竜帝を討伐したのは魔剣の力があったからこそである。
「じゃあ、あいつに勝つには、あいつ自身の魔剣がないとダメなのか?」
それは勝ち目がないと言っているも同然ではないのか。ロアは正直、そういう感想を抱いた。
《なくとも勝てる!そのために今こうして修練をしているのじゃろう?》
「八刃か。使えれば勝てるのか。」
《勝てる!あの技はドラゴン・スケイルをも貫く。妾の解析では間違いなく出来ると踏んでおる。》
素直に彼女の考えに従うことにした。技の強さに賭けるようと思った。どのみち、それしか手がないのである。今はがむしゃらに技の修練に励むしかないのである。
《さあ、小休止はこれぐらいにして、修練を続けるのじゃ。時間はあまりないんじゃからの。》
そこで彼女は竜の姿から人間の姿に戻った。
「おいおい、なんのつもりだ?」
「名案を思い付いてのう。まあ、見ておれ。」
そう言いつつ、また何かへと姿を変えていく。その姿は……。
「ヴァル・ムング!」
目の前に現れたのはヴァルだった。これには驚く他なかった。
「どうだ?貴様もこれならば、捗らざるも得まい?」
なんと口調や声まで本物と同じだった。サヨが化けているとは到底思えなかった。
「ま、仮想空間じゃからの。これぐらい造作もない。現実ではこんな芸当はさすがに妾でも無理じゃ。」
声と口調がサヨに戻った。姿はそのままなので、ちぐはぐな感じが物凄い。というか、むしろ気持ち悪い。
「ありがとよ!このほうが本当に捗りそうだぜ。」
ロアはいっそう気合いが入った。宿敵との予行演習が実現したのである。目標が目の前にいるのである。全力を尽くさざるを得ない。
あれから、どれくらい時間が経ったのだろうか?時間の感覚が麻痺するぐらいに、ロアは技の修練を続けていた。サヨによると、この仮想空間では外部よりも時間の経過が早いのだと言う。魔力を費やせば費やすほど、時間の流れが早くなるのだと言う。時間がないとはいえ、彼女の魔力が尽きないか心配になってしまう。
「あのさあ、頭の中に話しかけるのやめてくんないかな?キンキンするんだけど?」
《仕方なかろう。この姿では喋れんのじゃ。そもそも、古来からコミュニケーションとはこの様な形式が一般的だったのじゃ。口で喋るのはそれができん、そなたらが始めたことじゃ。妾たちはそなたらに合わせてやっているじゃ。辛抱せい。》
彼女が古来というからには、ロアには想像がつかないくらい遠い昔からのことなのだろう。そんなことに反論していても勝ち目がなさそうなので、ロアは考えるのをやめた。
「それより、大丈夫なのか?こんなことしてたらあんたも大変だろ?魔力は持つのか?」
《そなたの精神力が先に尽きるか、妾の魔力が先に尽きるか、どっこいどっこいといったところじゃ。》
でも、それでは、魔力が尽きなかったとしても、消耗した状態でヴァルに対峙することになるのではないだろうか?
《どのみち、妾の力はあやつには通用せぬ。手が出せんのじゃ。》
「なんで?そんな図体してたら、俺より強いだろ?」
《そなたは竜殺の魔剣の恐ろしさをわかっておらぬ。まあ無理もないか。そなたら人にとっては切れ味の良い剣でしかないからの。》
それ以外の何物なのだろう、ロアにはそういう風にしか思えなかった。竜の鱗さえ切り裂ける剣だけではないというのか。
《あれは、バーニング・コートのような魔法障壁を無効化する力があるのじゃ。もちろんそれだけではないぞ。妾たち上位の竜族が持つドラゴン・スケイルさえも物ともせんのじゃからな。》
サヨの解説によれば、ドラゴン・スケイルは上位の竜族が備える強固な防御障壁である。物理的な衝撃だけでなく、如何なる魔術さえもはね除けるのだと言う。ロアたちが偽の竜帝に対抗できたのは、この障壁がなかったためだと言う。見た目だけ竜帝に見せかけた中級種の竜は持ち合わせていないのだと言う。逆にヴァルが竜帝を討伐したのは魔剣の力があったからこそである。
「じゃあ、あいつに勝つには、あいつ自身の魔剣がないとダメなのか?」
それは勝ち目がないと言っているも同然ではないのか。ロアは正直、そういう感想を抱いた。
《なくとも勝てる!そのために今こうして修練をしているのじゃろう?》
「八刃か。使えれば勝てるのか。」
《勝てる!あの技はドラゴン・スケイルをも貫く。妾の解析では間違いなく出来ると踏んでおる。》
素直に彼女の考えに従うことにした。技の強さに賭けるようと思った。どのみち、それしか手がないのである。今はがむしゃらに技の修練に励むしかないのである。
《さあ、小休止はこれぐらいにして、修練を続けるのじゃ。時間はあまりないんじゃからの。》
そこで彼女は竜の姿から人間の姿に戻った。
「おいおい、なんのつもりだ?」
「名案を思い付いてのう。まあ、見ておれ。」
そう言いつつ、また何かへと姿を変えていく。その姿は……。
「ヴァル・ムング!」
目の前に現れたのはヴァルだった。これには驚く他なかった。
「どうだ?貴様もこれならば、捗らざるも得まい?」
なんと口調や声まで本物と同じだった。サヨが化けているとは到底思えなかった。
「ま、仮想空間じゃからの。これぐらい造作もない。現実ではこんな芸当はさすがに妾でも無理じゃ。」
声と口調がサヨに戻った。姿はそのままなので、ちぐはぐな感じが物凄い。というか、むしろ気持ち悪い。
「ありがとよ!このほうが本当に捗りそうだぜ。」
ロアはいっそう気合いが入った。宿敵との予行演習が実現したのである。目標が目の前にいるのである。全力を尽くさざるを得ない。
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