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第1章 英雄と竜帝
第26話 英雄、捜索する。
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「やはり、勇者はまだ生きていると考えた方がよさそうだな。」
ヴァル・ムングは執拗に勇者の額冠の捜索を続けていた。落下したと思われる地点を中心に捜索しても一向に見つかる気配がなかった。落ちた形跡すら見つからない。痕跡が全くないのである。逆にこれは不自然ではあった。
「竜の隠れ里、確かレギンのやつはそう言っていたな。」
レギン――、竜族のはぐれ者からヴァルは竜帝に関する様々な情報を得ていた。竜帝をはじめとする古代竜族はこの付近の山に隠れすんでいるのだという。正確な場所がわからないのはレギン自身がはぐれ者ゆえ、他の竜族から隠れ里の所在を知らされていなかったのである。
だが、レギンは隠れ里のおおよその位置を何年もかけて絞り込んでいったのである。位置がほぼつかめた頃に、ヴァル・ムングの存在を知ったのである。ヴァルに取り入り、魔剣グラムと血の呪法を授けたのである。竜帝達への復讐をヴァルへと託すことを選んだのである。
「そもそも、竜帝を狩るため、先に隠れ里を探さねばならなかったのだがな。」
順序が逆になってしまったのである。竜帝の方からヴァルの前に現れたのである。竜帝はヴァルを討伐するため、隠れ里を守るために自ら現れたのだった。しかし、皮肉にもヴァルのほうからすれば、その方が好都合だった。
「全く、勇者のやつめ。私の計画を悉く邪魔してくれる。」
彼に実害はほとんど及んでいないものの、邪魔をされるのは非常に癪に障った。今まで自分の思い通りにことは運んできたが、勇者はいつも彼の前に立ちはだかった。それが先代勇者カレルである。
その度に撃退はしているものの、倒しきれないでいた。そして、遂に致命傷を与えることができた。あのときでさえ、止めを刺せなかった。止めの瞬間、転移の魔術を使ったのである。勇者はある程度の魔術は使えるのは彼も知っていた。
しかし、転移の魔術は高度な魔術であるため、ファルのような高位の魔術師でなければ難しい。にもかかわらず使用できたのは、勇者の額冠が関係している可能性が高いと彼は結論付けた。
「先代のカレルはともかく、なりたての未熟者にまで逃げられてしまうとはな。」
ロアは明らかに、先代カレルと比べると実力は劣っていた。ヴァルはある程度自分の驚異になりうる者のオーラを感じとることができるのだが、ロアは感知できなかった。できないということは、驚異になり得ない程度の強さであるともいえるのだが、偽の竜帝やヴァル自身ともある程度、戦ってみせたのである。偽の竜帝に至っては止めを刺してさえいる。その点が彼にとっては非常に不可解であった。
「いずれにせよ、額冠を入手できれば、わかることになるだろう。」
ヴァル・ムングは執拗に勇者の額冠の捜索を続けていた。落下したと思われる地点を中心に捜索しても一向に見つかる気配がなかった。落ちた形跡すら見つからない。痕跡が全くないのである。逆にこれは不自然ではあった。
「竜の隠れ里、確かレギンのやつはそう言っていたな。」
レギン――、竜族のはぐれ者からヴァルは竜帝に関する様々な情報を得ていた。竜帝をはじめとする古代竜族はこの付近の山に隠れすんでいるのだという。正確な場所がわからないのはレギン自身がはぐれ者ゆえ、他の竜族から隠れ里の所在を知らされていなかったのである。
だが、レギンは隠れ里のおおよその位置を何年もかけて絞り込んでいったのである。位置がほぼつかめた頃に、ヴァル・ムングの存在を知ったのである。ヴァルに取り入り、魔剣グラムと血の呪法を授けたのである。竜帝達への復讐をヴァルへと託すことを選んだのである。
「そもそも、竜帝を狩るため、先に隠れ里を探さねばならなかったのだがな。」
順序が逆になってしまったのである。竜帝の方からヴァルの前に現れたのである。竜帝はヴァルを討伐するため、隠れ里を守るために自ら現れたのだった。しかし、皮肉にもヴァルのほうからすれば、その方が好都合だった。
「全く、勇者のやつめ。私の計画を悉く邪魔してくれる。」
彼に実害はほとんど及んでいないものの、邪魔をされるのは非常に癪に障った。今まで自分の思い通りにことは運んできたが、勇者はいつも彼の前に立ちはだかった。それが先代勇者カレルである。
その度に撃退はしているものの、倒しきれないでいた。そして、遂に致命傷を与えることができた。あのときでさえ、止めを刺せなかった。止めの瞬間、転移の魔術を使ったのである。勇者はある程度の魔術は使えるのは彼も知っていた。
しかし、転移の魔術は高度な魔術であるため、ファルのような高位の魔術師でなければ難しい。にもかかわらず使用できたのは、勇者の額冠が関係している可能性が高いと彼は結論付けた。
「先代のカレルはともかく、なりたての未熟者にまで逃げられてしまうとはな。」
ロアは明らかに、先代カレルと比べると実力は劣っていた。ヴァルはある程度自分の驚異になりうる者のオーラを感じとることができるのだが、ロアは感知できなかった。できないということは、驚異になり得ない程度の強さであるともいえるのだが、偽の竜帝やヴァル自身ともある程度、戦ってみせたのである。偽の竜帝に至っては止めを刺してさえいる。その点が彼にとっては非常に不可解であった。
「いずれにせよ、額冠を入手できれば、わかることになるだろう。」
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