【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

文字の大きさ
上 下
5 / 401
第1章 英雄と竜帝

第5話 勇者、狙われる。

しおりを挟む
 討伐隊はひたすらに竜帝の住処へと歩みを進めた。だが、道なき道を進むのは困難を極めた。竜帝とその眷属が棲むこの地域一帯はほとんど人は立ち入らない。よっぽど腕のたつハンターもしくは冒険者でもなければ訪れるような所ではないだろう。ひたすら歩き、登り続けても、まだ竜帝の住処は見えてこなかった。最初の一日は本当にそれだけで終わってしまった。進行を中断し、討伐隊の面々は各自野営の準備を始めていた。

「あ~~もう!全然竜帝の巣なんか見えてこないじゃない!」

 ジュリアは目的地に中々たどり着けないことに苛立ちを見せていた。

「当然だろ。すぐに行けるような所だったら、あの村なんて存在してないだろ。」

 さすがにファルも疲れがあるようで、それを隠すかのように肩を竦めながら言った。だが本気で彼女を嗜めるような口調でもなかった。いつもの手慣れたやりとりといった感じだ。

「ところであんた?あんまり疲れてないように見えるけど、どういうわけ?」

 その様な二人のやりとりを平然とした様子で見ていた。

「…いや、まあ別に疲れてない訳じゃないんだぜ。あー疲れた。腹へったなあ。」

 あまり疲れていないのを誤魔化すかのように、ロアは大袈裟に疲れている振りをした。梁山泊での鍛錬で常人離れした体力が身についているため、山道は歩き慣れていたし、丸一日歩いた程度では疲れないのである。しかし、そんな素振りを見せていては正体がばれるかもしれない。

「まあ、何だ。とりあえず水でも探しに行ってくるかな♪」

 わざとらしい演技を誤魔化しながら二人のもとを離れた。

 水を探す……とは言ったものの、何の考えもなしに野営地を飛び出してきたロアは途方にくれていた。
「いっそこのまま、トンズラしちまおうかな。」

 誰も見ていない今ならばそれも可能かもしれない。それに山の中なら滑落等の事故で死亡なんていうのもあるかもしれない。 そういうことにしてしまえば、逃亡を疑われないかもしれない。

「第一、あの勇者様に頼まれたとはいえ、別に初めてあった人に命までかけて義理立てする必要もないだろうし…」

 特にクルセイダーズの二人を裏切ることになるのは、ちょっとだけ良心が痛むのはまちがいなかったが、背に腹は代えられない。

「……よし!このまま逃げるぞ!」

 最早、誰に対して宣言したのかわからないが、宣言してすぐさま山道を下り始めた。そのとき、ロアの右頬を何かが掠めていった。その感触に思わず彼は右頬に手をやった。痛みと共に液体が指に付着した。

「…え?ナニコレ?血が出てんじゃねえか!もしかして狙われてんのか?今の全部見られてた?」

 慌てて辺りを見渡すものの、木や岩ばかりで誰かがいたとしても容易には見つけられない。その間に、再び彼の側に何かが飛来した。それはロアの背後にあった木の幹に突き立った。矢が突き刺さっていたのだ。先程顔を掠めたのもおそらくはこれだろう。彼は確実に狙われていた。

「逃げようとしただけで、殺されるってどういうことですかあ!」

 ロアは喚きながらも、とりあえず身を隠せそうな遮蔽物を探した。このままでは本当に命を奪われてしまう。ちょうど十歩ほど先に身を隠せそうな大岩があった。彼は死に物狂いでそこまで駆け寄った。しかし……、岩の目前でまたしても飛来物が彼を襲った。それはまるで遮蔽物へ身を隠すことへの牽制のようであった。

「わーっ!いったいどうすりゃいいんだ!」

 てんやわんやになり、無我夢中でこの場から逃げ出そうと必死になった。だが肝心なときに木の根っこに足を引っかけ、転倒してしまった。しかも運の悪いことに躓いたその場で石に頭をぶつけてしまった。

「ぐわっ!……ぐああ……」

 情けない嗚咽を漏らしながら、ロアは頭を打ったショックで意識がだんだんと遠のいていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

処理中です...