4 / 401
第1章 英雄と竜帝
第4話 勇者、巻き込まれる。
しおりを挟む
「やべえなほんとに大事に巻き込まれちまったよ。」
昨晩の間にロアはクルセイダーズの二人のやりとりを見つつ、適当に相槌を打ちながら、状況を推測した。竜帝を討伐する……というのは表向きな理由で、あくまであのヴァル・ムングの目的を阻止することが目的らしい。
その目的というのがロアとっては理解しがたい内容であった。二人に詳細を確認したかったが、あまり深く詮索すると、ロア自身が勇者でないことが露呈してしまうためそれは出来なかった。
他にもわからないことがある。何故、ロアが勇者として認識されているかということだ。あまり面識のない村人ならともかく、クルセイダーズの二人やヴァル・ムングにまで勇者として認識されている。ロアは思い返してみても勇者の顔には、正直似ているとは到底思えなかった。原因があるとすれば、勇者から受け取った頭冠である。あれを受け取ってから、一度しか見ていない勇者の技を使うことができたし、それにあの刺客はこれを奪おうとしていた。
やはり、何らかの秘密があるに違いない。そういう意味でも、無闇に頭冠をはずすことは出来ない。とにかく、この場をうまく切り抜けて立ち去りたいというのがロアの本音であった。
「……おい!大丈夫か?聞いているのか?」
思索に耽っていると、魔術師、ファルから声を掛けられていた。
「え?…、ああ、まあ大丈夫。」
先程の思考を読まれていたのではないかと、思わずドキリとしてしまう。もちろんそんなことはないはずなのだが、内容が内容だけに思わず、そう思ってしまう。
「あらら~♪、まさか勇者様ともあろうお方が怖じ気づいたんじゃないでしょうね?」
横から神官、ジュリアから茶々を入れられてしまう。昨日もそうだったがこの娘は一々他人にたいして意地悪な言動をしてくるので、もちろん彼女には一切悪気はないのだろうが、ロアからしたら苦手なタイプだった。女性慣れしていないこともあって尚更である。ファルの方も魔術師ということもあり、思慮深く、疑り深いようなので、ロアはことの真相がばれてはしないかと常にはらはらしていた。
「そりゃ、多少は怖いぜ。」
「なんか、あんたさあ、キャラ変わってない?なんか腰引けてるよ?」
痛いところを突いてきた。やはり元の勇者からすると立ち振舞いに違和感があるのだろうか?
「そ、そりゃあよ~、相手はなんたって、あの竜帝なんだぜ?怖いだろ?」
動揺を隠しきれず、思わず口調が上擦ってしまう。
「あんたわかってる?あくまであたしたちの目的はあいつの計画を阻止することにあるんだからね?竜帝と戦うのはやむを得ず戦うはめになったらってだけ。多分あたしらだけじゃ勝てっこないし、クルセイダーズの精鋭をかき集めたって勝てるかどうかよ?」
「……まあ、そうならないためにも竜帝の棲みかに辿り着く前にあいつを阻止しろってことだ。」
ファルはいかにも話を話を早く終わらせたげな様子であった。
「問題は他の討伐隊のやつらだな。どれだけヴァル・ムングの息のかかったやつがいるかわからん。場合によっては連中全てを相手にしないといけないかもな。」
蛇が出るか鬼が出るか、ロアにとっては全てが未知数なため、竜帝だろうが竜食いの英雄だろうが大差ないように思えた。
「じゃあ行くぞ!二人ともせいぜい気を張っていけよ!」
彼らは討伐隊の集合場所へと向かった。
昨晩の間にロアはクルセイダーズの二人のやりとりを見つつ、適当に相槌を打ちながら、状況を推測した。竜帝を討伐する……というのは表向きな理由で、あくまであのヴァル・ムングの目的を阻止することが目的らしい。
その目的というのがロアとっては理解しがたい内容であった。二人に詳細を確認したかったが、あまり深く詮索すると、ロア自身が勇者でないことが露呈してしまうためそれは出来なかった。
他にもわからないことがある。何故、ロアが勇者として認識されているかということだ。あまり面識のない村人ならともかく、クルセイダーズの二人やヴァル・ムングにまで勇者として認識されている。ロアは思い返してみても勇者の顔には、正直似ているとは到底思えなかった。原因があるとすれば、勇者から受け取った頭冠である。あれを受け取ってから、一度しか見ていない勇者の技を使うことができたし、それにあの刺客はこれを奪おうとしていた。
やはり、何らかの秘密があるに違いない。そういう意味でも、無闇に頭冠をはずすことは出来ない。とにかく、この場をうまく切り抜けて立ち去りたいというのがロアの本音であった。
「……おい!大丈夫か?聞いているのか?」
思索に耽っていると、魔術師、ファルから声を掛けられていた。
「え?…、ああ、まあ大丈夫。」
先程の思考を読まれていたのではないかと、思わずドキリとしてしまう。もちろんそんなことはないはずなのだが、内容が内容だけに思わず、そう思ってしまう。
「あらら~♪、まさか勇者様ともあろうお方が怖じ気づいたんじゃないでしょうね?」
横から神官、ジュリアから茶々を入れられてしまう。昨日もそうだったがこの娘は一々他人にたいして意地悪な言動をしてくるので、もちろん彼女には一切悪気はないのだろうが、ロアからしたら苦手なタイプだった。女性慣れしていないこともあって尚更である。ファルの方も魔術師ということもあり、思慮深く、疑り深いようなので、ロアはことの真相がばれてはしないかと常にはらはらしていた。
「そりゃ、多少は怖いぜ。」
「なんか、あんたさあ、キャラ変わってない?なんか腰引けてるよ?」
痛いところを突いてきた。やはり元の勇者からすると立ち振舞いに違和感があるのだろうか?
「そ、そりゃあよ~、相手はなんたって、あの竜帝なんだぜ?怖いだろ?」
動揺を隠しきれず、思わず口調が上擦ってしまう。
「あんたわかってる?あくまであたしたちの目的はあいつの計画を阻止することにあるんだからね?竜帝と戦うのはやむを得ず戦うはめになったらってだけ。多分あたしらだけじゃ勝てっこないし、クルセイダーズの精鋭をかき集めたって勝てるかどうかよ?」
「……まあ、そうならないためにも竜帝の棲みかに辿り着く前にあいつを阻止しろってことだ。」
ファルはいかにも話を話を早く終わらせたげな様子であった。
「問題は他の討伐隊のやつらだな。どれだけヴァル・ムングの息のかかったやつがいるかわからん。場合によっては連中全てを相手にしないといけないかもな。」
蛇が出るか鬼が出るか、ロアにとっては全てが未知数なため、竜帝だろうが竜食いの英雄だろうが大差ないように思えた。
「じゃあ行くぞ!二人ともせいぜい気を張っていけよ!」
彼らは討伐隊の集合場所へと向かった。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―
物部妖狐
ファンタジー
小さな村にある小さな丘の上に住む治癒術師
そんな彼が出会った一人の女性
日々を平穏に暮らしていたい彼の生活に起こる変化の物語。
小説家になろう様、カクヨム様、ノベルピア様へも投稿しています。
表紙画像はAIで作成した主人公です。
キャラクターイラストも、執筆用のイメージを作る為にAIで作成しています。
更新頻度:月、水、金更新予定、投稿までの間に『箱庭幻想譚』と『氷翼の天使』及び、【魔王様のやり直し】を読んで頂けると嬉しいです。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる