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第1章 英雄と竜帝
第3話 勇者、参上?……英雄、登場。
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「勇者様!よくぞ参られました!」
はじめて訪れた村で彼の来訪は熱烈に歓迎されていた。正確には今身に付けている頭冠のもとの持ち主なのだが。それに彼自身から勇者と名乗ったわけではない。あの勇者と名乗る人物と会ってから何かがおかしかった。
「さあ、早くこちらへ!他の方々もいらっしゃってますよ。」
村の人々に案内されるがままになり、大きめの建物へと誘導された。
(他の方々?)
自分以外に他に誰がいると言うのか?ますますわからないことが増えるばかりだった。ロアの頭の中での考えの整理がつかないままであった。
「ようやく真打ちが登場なすったか。」
建物に入るや否や、真打ち等と呼ばれてしまった。見渡す限り武装している人間が多いようだ。なかには神官や魔術師らしき者もいる。そして、奥の方にはひときわ目の引く男がいた。他の者と比べ、纏っている気配が明らかに違っていた。なんと言うか常人離れしている、そんな印象を受けた。その人物の眼光は鋭く、ロアのほうを睨んでいるかのように見える。
「遅かったじゃないか。どこで油を売っていたんだ?」
奥の方の人物に気をとられていると、横から急に話しかけられた。先程の一言はこの人物、白いローブをまとった魔術師が言ったようだった。その男は見るからに他の人間とは外見が違っていた。尖った長い耳、長身痩躯、そして褐色の肌、これが噂に聞く、エルフ族と言うやつなのだろうか。
「あんたにしては珍しいわね?何かあった?」
その一言にロアはどきりとした。本当に何かあったからだ。その質問をしてきたのは同じ白いローブを来た神官らしき女性だった。長い金髪を頭の後ろで束ねている。かなりの美人だった。二人のローブを見ると同じ紋章、赤い剣が三本重なったような刺繍が入っていた。何かの組織に所属しているのだろうか?
「え?いや、まあちょっとね。」
ごまかし笑いをしながら、なんとかごまかすしかなかった。彼らの思っている人物とロアは全くの別人なのだから。
「てめえが遅れたお陰で、予定が狂っちまったんだぞ。今日の出立のはずが、もう日暮れだ。」
魔術師は少し苛立った口調で入り口のほうを指差した。辺りが暗くなり始めている。
「何か埋め合わせをしてもらわないとね♪」
いたずらっぽく神官の少女は言いながら、ロアの肩をポンと叩いた。
「おやおや、これはこれは勇者どの。ご一緒できて光栄ですな。」
奥の方にいた、あの男が彼らの会話に割って入ってきた。
「クルセイダーズに勇者どの、そしてこの私を加えた討伐隊とあれば、かの竜帝も一溜まりもありますまい。」
その男は白いローブの二人をクルセイダーズと呼んだ。ロアの考えた通り何らかの組織のようだ。そして竜帝、討伐隊等と言う物騒な単語が出てきた。ロアはなんだかとんでもないことに巻き込まれている気がしてきた。
「何を言うか!元々はあんただけで竜帝を討伐するつもりだったんだろう?竜食いの英雄どの?」
魔術師からのその言葉を受け、竜食いの英雄は高らかに笑った。
「さすがにこんな辺境にまでクルセイダーズが出向いて来るとは思ってはいなかったよ。力を貸してくれるのは心強いことだ。そして勇者どの。今回もよろしく頼みますぞ。」
そう言い、彼は手を差し出してきた。握手のつもりか?思わず反射的にロアはそれに応じた。
握手のその瞬間ロアは得体の知れない気配を感じた。この男とは関わってはいけない、ロアの勘はそう告げていた。
「では明日の出立を楽しみにしている。また会おう!」
そう言い優雅に竜食いの英雄は去っていった。
「何なんだ、あいつは。」
ロアは圧倒されていた。クルセイダーズの二人だけでなく、この男もまた勇者とは面識があるようだった。
「竜食いの英雄、ヴァル・ムング。一癖も二癖もありそうだぜ。」
魔術師はばつが悪そうにそう言った。
「ヴァル・ムング……。」
はじめて訪れた村で彼の来訪は熱烈に歓迎されていた。正確には今身に付けている頭冠のもとの持ち主なのだが。それに彼自身から勇者と名乗ったわけではない。あの勇者と名乗る人物と会ってから何かがおかしかった。
「さあ、早くこちらへ!他の方々もいらっしゃってますよ。」
村の人々に案内されるがままになり、大きめの建物へと誘導された。
(他の方々?)
自分以外に他に誰がいると言うのか?ますますわからないことが増えるばかりだった。ロアの頭の中での考えの整理がつかないままであった。
「ようやく真打ちが登場なすったか。」
建物に入るや否や、真打ち等と呼ばれてしまった。見渡す限り武装している人間が多いようだ。なかには神官や魔術師らしき者もいる。そして、奥の方にはひときわ目の引く男がいた。他の者と比べ、纏っている気配が明らかに違っていた。なんと言うか常人離れしている、そんな印象を受けた。その人物の眼光は鋭く、ロアのほうを睨んでいるかのように見える。
「遅かったじゃないか。どこで油を売っていたんだ?」
奥の方の人物に気をとられていると、横から急に話しかけられた。先程の一言はこの人物、白いローブをまとった魔術師が言ったようだった。その男は見るからに他の人間とは外見が違っていた。尖った長い耳、長身痩躯、そして褐色の肌、これが噂に聞く、エルフ族と言うやつなのだろうか。
「あんたにしては珍しいわね?何かあった?」
その一言にロアはどきりとした。本当に何かあったからだ。その質問をしてきたのは同じ白いローブを来た神官らしき女性だった。長い金髪を頭の後ろで束ねている。かなりの美人だった。二人のローブを見ると同じ紋章、赤い剣が三本重なったような刺繍が入っていた。何かの組織に所属しているのだろうか?
「え?いや、まあちょっとね。」
ごまかし笑いをしながら、なんとかごまかすしかなかった。彼らの思っている人物とロアは全くの別人なのだから。
「てめえが遅れたお陰で、予定が狂っちまったんだぞ。今日の出立のはずが、もう日暮れだ。」
魔術師は少し苛立った口調で入り口のほうを指差した。辺りが暗くなり始めている。
「何か埋め合わせをしてもらわないとね♪」
いたずらっぽく神官の少女は言いながら、ロアの肩をポンと叩いた。
「おやおや、これはこれは勇者どの。ご一緒できて光栄ですな。」
奥の方にいた、あの男が彼らの会話に割って入ってきた。
「クルセイダーズに勇者どの、そしてこの私を加えた討伐隊とあれば、かの竜帝も一溜まりもありますまい。」
その男は白いローブの二人をクルセイダーズと呼んだ。ロアの考えた通り何らかの組織のようだ。そして竜帝、討伐隊等と言う物騒な単語が出てきた。ロアはなんだかとんでもないことに巻き込まれている気がしてきた。
「何を言うか!元々はあんただけで竜帝を討伐するつもりだったんだろう?竜食いの英雄どの?」
魔術師からのその言葉を受け、竜食いの英雄は高らかに笑った。
「さすがにこんな辺境にまでクルセイダーズが出向いて来るとは思ってはいなかったよ。力を貸してくれるのは心強いことだ。そして勇者どの。今回もよろしく頼みますぞ。」
そう言い、彼は手を差し出してきた。握手のつもりか?思わず反射的にロアはそれに応じた。
握手のその瞬間ロアは得体の知れない気配を感じた。この男とは関わってはいけない、ロアの勘はそう告げていた。
「では明日の出立を楽しみにしている。また会おう!」
そう言い優雅に竜食いの英雄は去っていった。
「何なんだ、あいつは。」
ロアは圧倒されていた。クルセイダーズの二人だけでなく、この男もまた勇者とは面識があるようだった。
「竜食いの英雄、ヴァル・ムング。一癖も二癖もありそうだぜ。」
魔術師はばつが悪そうにそう言った。
「ヴァル・ムング……。」
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