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第二章 狩る者と狩られる者の探り合い
【第五話 習性】5-1 もっと褒めて!
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「――いやぁ、全然見つからないねぇ」
あれから数日、私とキョウは毎日夜の東京の街を歩いていた。けれどキョウの担当範囲には吸血鬼は来ていないのか、新たな手がかりは全く無い。彼は昼間拠点で情報収集しているらしいけれど、従属種の情報があるのは少し離れた場所。つまりこのあたりではやはり何も起きていないのだ。
聞けばこれでも出現情報が多い方らしい。従属種なんて国内では年に数人見つかるかどうかなのだそう。
でもそれは今までの話だ。キョウ達はまだあまり理解しきれていないようだけど、吸血鬼側の意見としてはもっとわんさか従属種やそれを作った吸血鬼が現れてもおかしくないと思っている。
ということをキョウに言えば、彼は少し考えるような顔をした後こちらを向いた。
「アンタの存在で避けられてるってことはないのか?」
「やだ、私ってば有――」
「茶化すなよ」
「あ、はい」
なんだろな、この短期間でキョンは私の行動を先読みするようになってしまった。つまらないぞ。
「えー……じゃあ真面目に答えると、可能性としてはなくもないってくらいかなぁ。悪さしてる自覚のある吸血鬼は普通執行官を避けるからさ。私がそうだっていうのも隠してないし、知らなかったとしても向こうが私より先にこっちの存在に気付いてたら勘付かれることもあるし」
渋々真面目に答えれば、キョウが呆れたような顔をした。
「立場上避けられるなら隠せよ。面倒だろ」
「無理だから隠してないんだよー。私達は不老だよ? 執行官の在任期間は十年二十年じゃないの。しかも嫌われる職業だから一度でもバレたら口コミで広がっちゃうんだって。隠さないことを利用してる部分はあるけどさ、どう考えても隠すの難しそうじゃない?」
「顔を隠せばいいだろ」
「ところがどっこい、我々は鼻が利くのです。強い匂いで誤魔化してもいいけど、そうすると自分の鼻もやられるから本当それは緊急手段」
「……面倒だな」
それは私もそう思う。匂いだけでじゃなくて足音の特徴から個人を特定できる人だっているから、面識のある吸血鬼相手に正体を隠すって結構大変なのだ。
だから敢えて目立つ格好をしている人もいる。例えば壱政様の緑色に染められた髪もそうだ。壱政様イコール緑頭の東洋人というイメージを作っておくことで、いざという時に周りの目を欺けるらしい。ちなみに個人的には黒髪壱政様の方が好みだ。緑も似合っているけど私の初恋相手は長めの黒髪に着流しだったんだもん。あの色気は凄いぞ。
なんて過去のことを考えていてもしかたがない。今は目の前のイケメンに集中するために、私は話を戻すことにした。
「隠せないのは間違いないんだけど、私が避けられてるって可能性はそんなに高くないよ」
「理由は?」
「吸血鬼相手でも、大抵私の方が早く向こうの存在に気付けるからね」
「……アンタ、相当手練なのか?」
「それ格好良い! もっと褒めて!」
「褒めてない」
「自分で言うのもなんだけど、そこそこ戦える方だと思うよ。何せうちは武闘派だからね」
壱政様に吸血鬼にしてもらった私は、吸血鬼の考え方で言うと彼の子にあたる。壱政様の子は少ないけれど、全員もれなく武術を仕込まれているのだ。
本人のやる気や適正に関係なく、中途半端な実力では即ぶった斬られるからそこそこ強かろうという自負もある。と言っても壱政様に勝てたことはないんだけど、そもそも鍛錬している期間が何百年も違うんだからしょうがない。
「まァ、アンタのせいで見つけられないわけじゃないならいい。これ以上俺の立場を悪くされてたまるか」
「前から思ってたんだけど、キョンって嫌われ者なの?」
「……周りが馬鹿なだけだ」
それ嫌われ者の強がり常套句じゃない?
「でもキョンって他のハンターより実力はありそうだけどな。まだあの拠点には一回しか行ったことないけど、キョンキョンくらい強い人って数えるほどしかいなかったし」
私が言うと、キョウは少し驚いたように目を開いた。「そんなとこまで見てたのかよ……」と呟いた声はちょっと悔しげ。ほほう、思っていたより私が凄くて敗北感があったのだな。いいぞ、もっと私を讃え給え。
「ハンターの良し悪しは強さじゃない、どれだけ多くのモロイを狩るかで決まる。どんなに戦えたところでモロイを狩れないんじゃハンターとしては失格なんだよ」
「そりゃ探索能力壊滅的なら別だけどさ、キョンは感知できるから見逃すこと少ないでしょ。あれ隠してるっぽいけど、もっとおおっぴらにすればいいんじゃないの?」
ハンター達は目で獲物を探しているだけだ。理性を失いかけているモロイ相手なら外見で分かるだろうけれど、完全に順応して人間に紛れ込んでいる場合はそれだと見つけづらいだろう。
だけどキョウは違う。彼が感知しているのは相手の放つ雰囲気。視界に入っていた方が特定しやすいのはあるかもしれないけれど、最悪見えていなくたって近くにいれば感じ取れるはずだ。
だから彼の前では人間のふりなんて無意味。それはハンターにとってはかなり重要な能力だろうから、公表したら引く手数多になりそうなものなのにキョウは何故か隠している。
能ある鷹は爪を隠す、って感じではないんだよな。現に私に聞かれたキョウは表情を曇らせて、どこか不貞腐れるように視線を背けた。
「あんなの分かるだなんておかしいだろ」
「おかしくないよ。それにおかしかったとしても、そんなのいちいち気にしてうじうじするなんて、そっちの方がよっぽどおかしいと思うよ?」
「誰も彼もがアンタみたいに適当じゃないんだよ。人間の真似事するくせにそういうことも分からないのか?」
「……うるさ」
思いの外低い声が出てびっくりした。それはキョウも同じだったのか、彼もまた少し驚いたような表情をしている。
すぐに茶化そうとしたけれど、胸の中がムカムカして言葉が出てこなかった。だって、人間のことが分からないのは本当だから。
私は元人間だけど、私を育てたのは壱政様――人間のふりをした吸血鬼だ。壱政様以外にも周りはみんなそういう人達だったから、私は人間とまともに関わったことがほとんどないのだ。
子供の私は壱政様に育てられ、一人で生きていけるくらい大人になった時、彼は私を人間の世界に返してくれた。壱政様が用意してくれた身分を使って華族のお屋敷で働いて、そしてある時お金持ちの男性に見初めてもらった。恋愛とかは分からなかったけれど、時代的にそういうのはあまり問題にならない。
でも結婚することになって、これからもっともっと幸せになるぞと意気込んでいた時、ちょっとしたいざこざに巻き込まれて私は命を落としかけてしまったのだ。
『お前に人間は向いてなかったな』
瀕死の重症で意識が朦朧とする中で聞いた壱政様の声は、少しだけ申し訳無さそうで。初めて聞いたその声色に、私の方が苦しくなったのを覚えている。
私の人間としての生活はそこでおしまい。時間にするとたった四年だ。
そんな短い時間で人間のことなんて分かるはずがない。それは自覚していたけれど、キョウに言われて腹が立ったってことはあまり受け入れたくないことだったのかもしれない。
うーん、やだな。なんだか気持ちがじめじめしてきた。キョウにうじうじするなって言っておいて私がこんな気持ちになるってどうなの?
でもお陰でムカムカが落ち着いてきたものだから、今ならいけるぞと思って私は思い切り息を吸い込んだ。
「とにかく! 前も言ったけど、キョンみたいな能力がある人はたまにいるらしいよ? 鍛錬の有無関係なく生まれつきにさ。つまり体質みたいなものだよ、アスパラと一緒」
私が大声で言うと、それまで少し気まずそうな表情をしていたキョウが「はァ?」と顔を歪めた。うん、ちょっと剛速球すぎた自覚はある。しかしもう引き下がれない。
「なんなんだよ、急に」
「えー! キョンってば知らないの? アスパラを食べた後のおしっこって臭いんだよ。人間でそれを嗅ぎ分けられる能力があるのは二割くらいだったかな? そういうあれだよ。あ、疑ってる? ググれググれ!」
「……とりあえずアンタは言葉を選んだ方がいい」
なんだよ、おしっこが駄目だったの? お小水かゆばりならいいの?
「そんなこと気にするなんて、キョンキョンってば思春期?」
「ッ……クッソ腹立つなアンタ! さっきは悪いと思ったのに……!」
「悪い? 何に対して?」
「気の迷いだった。忘れろ」
そういうふうに言われると余計気になるのだけど、キョウは教えてくれる気がないらしい。「とりあえず――」と少し強めの語気で言うと、いつもの嫌そうな顔で睨んできた。
「アンタの言いたいことは分かった。だけど俺が見分けられるっていうのは周りに言う気はない。だから……」
「私にも言うなって? いいよ、キョンの嫌なことなら言わない」
ニッと笑って親指を立てるも、キョウは「……物凄く信用できねェ」と疲れたように呟いた。ちょっとそれ失礼だと思うんだけどな。まあ彼の怒りを煽りまくっている自覚はあるから仕方がない。
「ところでキョンキョンってアスパラはお好き?」
「さっきの話の後で答えると思うか?」
「思わないから聞いてるの!」
「……いい性格してるよ、本当」
「お褒めに預かり光栄です! ――お?」
褒めてないと言わんばかりのキョウの視線を流していると、ふと覚えのある匂いがした気がした。
キョウも私の様子で状況が分かったらしい。急に真面目な顔に切り替えて、「……臭うのか?」と低い声で聞いてきた。
「ほんのちょびっとだけどね。もっと近付かないとまだ分からない」
「それでもいい。案内しろ」
そう言って、キョウは私の見ていた方へと歩き出した。
あれから数日、私とキョウは毎日夜の東京の街を歩いていた。けれどキョウの担当範囲には吸血鬼は来ていないのか、新たな手がかりは全く無い。彼は昼間拠点で情報収集しているらしいけれど、従属種の情報があるのは少し離れた場所。つまりこのあたりではやはり何も起きていないのだ。
聞けばこれでも出現情報が多い方らしい。従属種なんて国内では年に数人見つかるかどうかなのだそう。
でもそれは今までの話だ。キョウ達はまだあまり理解しきれていないようだけど、吸血鬼側の意見としてはもっとわんさか従属種やそれを作った吸血鬼が現れてもおかしくないと思っている。
ということをキョウに言えば、彼は少し考えるような顔をした後こちらを向いた。
「アンタの存在で避けられてるってことはないのか?」
「やだ、私ってば有――」
「茶化すなよ」
「あ、はい」
なんだろな、この短期間でキョンは私の行動を先読みするようになってしまった。つまらないぞ。
「えー……じゃあ真面目に答えると、可能性としてはなくもないってくらいかなぁ。悪さしてる自覚のある吸血鬼は普通執行官を避けるからさ。私がそうだっていうのも隠してないし、知らなかったとしても向こうが私より先にこっちの存在に気付いてたら勘付かれることもあるし」
渋々真面目に答えれば、キョウが呆れたような顔をした。
「立場上避けられるなら隠せよ。面倒だろ」
「無理だから隠してないんだよー。私達は不老だよ? 執行官の在任期間は十年二十年じゃないの。しかも嫌われる職業だから一度でもバレたら口コミで広がっちゃうんだって。隠さないことを利用してる部分はあるけどさ、どう考えても隠すの難しそうじゃない?」
「顔を隠せばいいだろ」
「ところがどっこい、我々は鼻が利くのです。強い匂いで誤魔化してもいいけど、そうすると自分の鼻もやられるから本当それは緊急手段」
「……面倒だな」
それは私もそう思う。匂いだけでじゃなくて足音の特徴から個人を特定できる人だっているから、面識のある吸血鬼相手に正体を隠すって結構大変なのだ。
だから敢えて目立つ格好をしている人もいる。例えば壱政様の緑色に染められた髪もそうだ。壱政様イコール緑頭の東洋人というイメージを作っておくことで、いざという時に周りの目を欺けるらしい。ちなみに個人的には黒髪壱政様の方が好みだ。緑も似合っているけど私の初恋相手は長めの黒髪に着流しだったんだもん。あの色気は凄いぞ。
なんて過去のことを考えていてもしかたがない。今は目の前のイケメンに集中するために、私は話を戻すことにした。
「隠せないのは間違いないんだけど、私が避けられてるって可能性はそんなに高くないよ」
「理由は?」
「吸血鬼相手でも、大抵私の方が早く向こうの存在に気付けるからね」
「……アンタ、相当手練なのか?」
「それ格好良い! もっと褒めて!」
「褒めてない」
「自分で言うのもなんだけど、そこそこ戦える方だと思うよ。何せうちは武闘派だからね」
壱政様に吸血鬼にしてもらった私は、吸血鬼の考え方で言うと彼の子にあたる。壱政様の子は少ないけれど、全員もれなく武術を仕込まれているのだ。
本人のやる気や適正に関係なく、中途半端な実力では即ぶった斬られるからそこそこ強かろうという自負もある。と言っても壱政様に勝てたことはないんだけど、そもそも鍛錬している期間が何百年も違うんだからしょうがない。
「まァ、アンタのせいで見つけられないわけじゃないならいい。これ以上俺の立場を悪くされてたまるか」
「前から思ってたんだけど、キョンって嫌われ者なの?」
「……周りが馬鹿なだけだ」
それ嫌われ者の強がり常套句じゃない?
「でもキョンって他のハンターより実力はありそうだけどな。まだあの拠点には一回しか行ったことないけど、キョンキョンくらい強い人って数えるほどしかいなかったし」
私が言うと、キョウは少し驚いたように目を開いた。「そんなとこまで見てたのかよ……」と呟いた声はちょっと悔しげ。ほほう、思っていたより私が凄くて敗北感があったのだな。いいぞ、もっと私を讃え給え。
「ハンターの良し悪しは強さじゃない、どれだけ多くのモロイを狩るかで決まる。どんなに戦えたところでモロイを狩れないんじゃハンターとしては失格なんだよ」
「そりゃ探索能力壊滅的なら別だけどさ、キョンは感知できるから見逃すこと少ないでしょ。あれ隠してるっぽいけど、もっとおおっぴらにすればいいんじゃないの?」
ハンター達は目で獲物を探しているだけだ。理性を失いかけているモロイ相手なら外見で分かるだろうけれど、完全に順応して人間に紛れ込んでいる場合はそれだと見つけづらいだろう。
だけどキョウは違う。彼が感知しているのは相手の放つ雰囲気。視界に入っていた方が特定しやすいのはあるかもしれないけれど、最悪見えていなくたって近くにいれば感じ取れるはずだ。
だから彼の前では人間のふりなんて無意味。それはハンターにとってはかなり重要な能力だろうから、公表したら引く手数多になりそうなものなのにキョウは何故か隠している。
能ある鷹は爪を隠す、って感じではないんだよな。現に私に聞かれたキョウは表情を曇らせて、どこか不貞腐れるように視線を背けた。
「あんなの分かるだなんておかしいだろ」
「おかしくないよ。それにおかしかったとしても、そんなのいちいち気にしてうじうじするなんて、そっちの方がよっぽどおかしいと思うよ?」
「誰も彼もがアンタみたいに適当じゃないんだよ。人間の真似事するくせにそういうことも分からないのか?」
「……うるさ」
思いの外低い声が出てびっくりした。それはキョウも同じだったのか、彼もまた少し驚いたような表情をしている。
すぐに茶化そうとしたけれど、胸の中がムカムカして言葉が出てこなかった。だって、人間のことが分からないのは本当だから。
私は元人間だけど、私を育てたのは壱政様――人間のふりをした吸血鬼だ。壱政様以外にも周りはみんなそういう人達だったから、私は人間とまともに関わったことがほとんどないのだ。
子供の私は壱政様に育てられ、一人で生きていけるくらい大人になった時、彼は私を人間の世界に返してくれた。壱政様が用意してくれた身分を使って華族のお屋敷で働いて、そしてある時お金持ちの男性に見初めてもらった。恋愛とかは分からなかったけれど、時代的にそういうのはあまり問題にならない。
でも結婚することになって、これからもっともっと幸せになるぞと意気込んでいた時、ちょっとしたいざこざに巻き込まれて私は命を落としかけてしまったのだ。
『お前に人間は向いてなかったな』
瀕死の重症で意識が朦朧とする中で聞いた壱政様の声は、少しだけ申し訳無さそうで。初めて聞いたその声色に、私の方が苦しくなったのを覚えている。
私の人間としての生活はそこでおしまい。時間にするとたった四年だ。
そんな短い時間で人間のことなんて分かるはずがない。それは自覚していたけれど、キョウに言われて腹が立ったってことはあまり受け入れたくないことだったのかもしれない。
うーん、やだな。なんだか気持ちがじめじめしてきた。キョウにうじうじするなって言っておいて私がこんな気持ちになるってどうなの?
でもお陰でムカムカが落ち着いてきたものだから、今ならいけるぞと思って私は思い切り息を吸い込んだ。
「とにかく! 前も言ったけど、キョンみたいな能力がある人はたまにいるらしいよ? 鍛錬の有無関係なく生まれつきにさ。つまり体質みたいなものだよ、アスパラと一緒」
私が大声で言うと、それまで少し気まずそうな表情をしていたキョウが「はァ?」と顔を歪めた。うん、ちょっと剛速球すぎた自覚はある。しかしもう引き下がれない。
「なんなんだよ、急に」
「えー! キョンってば知らないの? アスパラを食べた後のおしっこって臭いんだよ。人間でそれを嗅ぎ分けられる能力があるのは二割くらいだったかな? そういうあれだよ。あ、疑ってる? ググれググれ!」
「……とりあえずアンタは言葉を選んだ方がいい」
なんだよ、おしっこが駄目だったの? お小水かゆばりならいいの?
「そんなこと気にするなんて、キョンキョンってば思春期?」
「ッ……クッソ腹立つなアンタ! さっきは悪いと思ったのに……!」
「悪い? 何に対して?」
「気の迷いだった。忘れろ」
そういうふうに言われると余計気になるのだけど、キョウは教えてくれる気がないらしい。「とりあえず――」と少し強めの語気で言うと、いつもの嫌そうな顔で睨んできた。
「アンタの言いたいことは分かった。だけど俺が見分けられるっていうのは周りに言う気はない。だから……」
「私にも言うなって? いいよ、キョンの嫌なことなら言わない」
ニッと笑って親指を立てるも、キョウは「……物凄く信用できねェ」と疲れたように呟いた。ちょっとそれ失礼だと思うんだけどな。まあ彼の怒りを煽りまくっている自覚はあるから仕方がない。
「ところでキョンキョンってアスパラはお好き?」
「さっきの話の後で答えると思うか?」
「思わないから聞いてるの!」
「……いい性格してるよ、本当」
「お褒めに預かり光栄です! ――お?」
褒めてないと言わんばかりのキョウの視線を流していると、ふと覚えのある匂いがした気がした。
キョウも私の様子で状況が分かったらしい。急に真面目な顔に切り替えて、「……臭うのか?」と低い声で聞いてきた。
「ほんのちょびっとだけどね。もっと近付かないとまだ分からない」
「それでもいい。案内しろ」
そう言って、キョウは私の見ていた方へと歩き出した。
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