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第十話 ステラ様は本がお好きなようで
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「ステラ様、またこんなに読めない本を散らかして……」
「よめるもん。読むもん」
私はまだまだ外出が許されない3歳児のステラよ(度々こっそり外出してはいるが)。最近は分厚い本を読むことにハマっているわ。重たい文学小説は私の心を動かしますし、重たい辞書は私の知識を増やしてくれますわ。
と言うのはもっぱらの建前である。数ヶ月前、自身の体がいかに筋肉のない体かを知らしめられたので、私はトレーニングをすることにした。しかし3歳児にトレーニンググッズを買うほどステラの親はとち狂っちゃいない。
そこで考え出したのが本を重りとしてのトレーニングだ。これだと本を読んでいるふりをしてトレーニングができるから、多少アルカに見られても問題ない。
「薄々感じてはいるんですけど、そのレベルの本、読めませんよね」
「よ、よんでます。ぶんがくタノシイ」
……多少アルカに見られても、多分問題ない。最近変な目で見られている気がするが、多分おそらくきっと、問題ないかもしれない。
幸いうちの書庫を漁るとこれでもかと言うほど難しい本がたくさんあったので、いつもそれをパチってきている。
「そういえば、先日買った本はどうされましたか」
「あれはおもしろくありませんでしたので的当ての的にしています」
「いつかバチが当たりますよ」
アルカはなんだかんだ私が本にハマったものだと思っている。でも、どう考えても子供があの鈍器レベルの本を読めるはずがないと考えているのである。ちなみにその通りです。
だからよく子供向けの本を買ってきてくれる。なのだがさすがにこれは面白くない。せめて小学生が読む程度の本ならまだ面白みの一つ二つはあるのだけども、3歳用の本はちょっと簡単すぎるし道徳的すぎる。
「アルカの買ってくる本、おさなすぎますわ」
「はあ。3歳児が何を言っているんですか。まあ、少しこちらで検討しておきます」
そういいつつ、アルカは的当ての的(となりし絵本たち)を回収して行った。むう、今日もこれから遊ぶ予定だったのに。
――――――――
「ステラ様、本日は図書館に行きませんか?」
その翌日、アルカから急なお誘いを受けた。
「せっかくですので、アルカ様のご興味のある本を選んでいただきたく存しまして」
「なるほど。みょうあん」
この家から図書館といったら中央町にある大図書だろう。あそこは本当にいい。基本的な魔法書から禁止魔法以外の魔術関連は一通り揃っている。それだけでなく、古武術や武器の整備に関するマニアックな本さえも揃っている。お金をケチって何度通ったことか。
しかし、中央街といったら色々懐かしいなあ。市場の飯がうまいから、ついつい帰り道食べてしまうんだよな。それだから結局お金がなくなってしまって図書館にさらに篭りっきりになるというスパイラルは死んでも忘れられないものだ。
「お母様からの許可、いただいたのですか?」
「それに関しては一応いただきました。図書館以外にどこにも行かない約束ですが」
「帰り、まちでご飯食べるのとか、なしですか?」
「何があってもそれだけはダメでしょうね」
しかし、流石にそんな思い出を再現させてくれるわけでもない。まあ仕方ない。もっと自由に動けるようになってからにしよう。
ふと考える。お嬢様が自由に動けるのって何歳からなんだろう。俺の知っているお嬢様は少なくとも小学校のころは自由行動が制限されていた気がする。
となれば中学生くらいからだろうか。私のお姉ちゃんは高等部と聞くから、その頃にはだいぶ自由に動けるのだろう。それまでの辛抱である。……いつかアルカの目を盗んで逃げてやろう。
「ひとまず、図書館に行くということは決定でよろしいですね。では、早速準備をしていきましょう」
逃走の計画については今後詳しく考えるとして、今日は図書館を楽しもう。
私は早々に身支度を済ませて、馬車に乗り中央街へ向かっていった。
――――
馬車の窓からはそこまで美しくない街が見える。俺が死んでからそこまで時間はたっていないので、そこまで大きな変化はない。強いていうなら電化製品を扱うお店が多少増えているくらいだろうか。
「車から身を乗り出さないでくださいね。いやほんとマジで」
「はーい」
馬車に乗るのは初めてではないが、お母様の前で馬車に乗るときにはちょこんと優雅に座るので街の様子がまるで見えない。だからついつい興奮して外に体を乗り出してしまうのであった。
「いい景色だ」
「はあ、あとでどうなっても知りませんからね」
私はついつい浮かれてしまっていた。
この行動が後の悲劇を生むとも知らずに……。
「よめるもん。読むもん」
私はまだまだ外出が許されない3歳児のステラよ(度々こっそり外出してはいるが)。最近は分厚い本を読むことにハマっているわ。重たい文学小説は私の心を動かしますし、重たい辞書は私の知識を増やしてくれますわ。
と言うのはもっぱらの建前である。数ヶ月前、自身の体がいかに筋肉のない体かを知らしめられたので、私はトレーニングをすることにした。しかし3歳児にトレーニンググッズを買うほどステラの親はとち狂っちゃいない。
そこで考え出したのが本を重りとしてのトレーニングだ。これだと本を読んでいるふりをしてトレーニングができるから、多少アルカに見られても問題ない。
「薄々感じてはいるんですけど、そのレベルの本、読めませんよね」
「よ、よんでます。ぶんがくタノシイ」
……多少アルカに見られても、多分問題ない。最近変な目で見られている気がするが、多分おそらくきっと、問題ないかもしれない。
幸いうちの書庫を漁るとこれでもかと言うほど難しい本がたくさんあったので、いつもそれをパチってきている。
「そういえば、先日買った本はどうされましたか」
「あれはおもしろくありませんでしたので的当ての的にしています」
「いつかバチが当たりますよ」
アルカはなんだかんだ私が本にハマったものだと思っている。でも、どう考えても子供があの鈍器レベルの本を読めるはずがないと考えているのである。ちなみにその通りです。
だからよく子供向けの本を買ってきてくれる。なのだがさすがにこれは面白くない。せめて小学生が読む程度の本ならまだ面白みの一つ二つはあるのだけども、3歳用の本はちょっと簡単すぎるし道徳的すぎる。
「アルカの買ってくる本、おさなすぎますわ」
「はあ。3歳児が何を言っているんですか。まあ、少しこちらで検討しておきます」
そういいつつ、アルカは的当ての的(となりし絵本たち)を回収して行った。むう、今日もこれから遊ぶ予定だったのに。
――――――――
「ステラ様、本日は図書館に行きませんか?」
その翌日、アルカから急なお誘いを受けた。
「せっかくですので、アルカ様のご興味のある本を選んでいただきたく存しまして」
「なるほど。みょうあん」
この家から図書館といったら中央町にある大図書だろう。あそこは本当にいい。基本的な魔法書から禁止魔法以外の魔術関連は一通り揃っている。それだけでなく、古武術や武器の整備に関するマニアックな本さえも揃っている。お金をケチって何度通ったことか。
しかし、中央街といったら色々懐かしいなあ。市場の飯がうまいから、ついつい帰り道食べてしまうんだよな。それだから結局お金がなくなってしまって図書館にさらに篭りっきりになるというスパイラルは死んでも忘れられないものだ。
「お母様からの許可、いただいたのですか?」
「それに関しては一応いただきました。図書館以外にどこにも行かない約束ですが」
「帰り、まちでご飯食べるのとか、なしですか?」
「何があってもそれだけはダメでしょうね」
しかし、流石にそんな思い出を再現させてくれるわけでもない。まあ仕方ない。もっと自由に動けるようになってからにしよう。
ふと考える。お嬢様が自由に動けるのって何歳からなんだろう。俺の知っているお嬢様は少なくとも小学校のころは自由行動が制限されていた気がする。
となれば中学生くらいからだろうか。私のお姉ちゃんは高等部と聞くから、その頃にはだいぶ自由に動けるのだろう。それまでの辛抱である。……いつかアルカの目を盗んで逃げてやろう。
「ひとまず、図書館に行くということは決定でよろしいですね。では、早速準備をしていきましょう」
逃走の計画については今後詳しく考えるとして、今日は図書館を楽しもう。
私は早々に身支度を済ませて、馬車に乗り中央街へ向かっていった。
――――
馬車の窓からはそこまで美しくない街が見える。俺が死んでからそこまで時間はたっていないので、そこまで大きな変化はない。強いていうなら電化製品を扱うお店が多少増えているくらいだろうか。
「車から身を乗り出さないでくださいね。いやほんとマジで」
「はーい」
馬車に乗るのは初めてではないが、お母様の前で馬車に乗るときにはちょこんと優雅に座るので街の様子がまるで見えない。だからついつい興奮して外に体を乗り出してしまうのであった。
「いい景色だ」
「はあ、あとでどうなっても知りませんからね」
私はついつい浮かれてしまっていた。
この行動が後の悲劇を生むとも知らずに……。
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