上 下
7 / 8

7話 : 友達

しおりを挟む
私は自分の能力が水だとはっきり分かった。
水……か。
確かに水は小さい頃から大好きだった。
落ち着くというか…
能力を知って実感した。自分がどんどん人間でなくなることに。
私は、これからどうすればいいんだろう。


次の日、学校へ行くといつもより人の視線を感じた。もう昨日のことがバレたのか…
すると、誰かに肩を叩かれた。
驚いて振り向くと、真由美が手を振った。
「どうしたの?顔色悪いよ?」
「え?そう?」
「うん。……もしかして、周りの目が気になるの?」
真由美の言葉にギクッとした。
真由美はため息をついた。
「私はヒドラ族あんまり好きじゃないけどね、麻衣は別だよ?」
「え…」
「だって友達だしね。」
そう言って真由美は笑顔で私を見た。
そっか…
ヒドラ族って理由だけで離れていく友達じゃないもんね。
少し勇気が出た。

夜。
私は鈴乃に電話で自分がヒドラ族だということを打ち明けた。
「ヒドラ族!?麻衣が!?」
「…軽蔑した?」
「そんな訳ないじゃん。麻衣大好きだしね」
「……ありがとう…」
「…みんな知ってるの?」
「…うん。誰にも言ってないのにバレちゃって…」
「怪しいね。そういえば真由美は?なんて言ってた?」
「友達だよって言ってくれたよ。」
「………そう」
「真由美はヒドラ族のこと恨んでるって本当なの?」
「え…なんで?」
「だって、全然そんな風に見えなかったよ?相変わらず優しいし」
「麻衣は人のこと信じすぎなんだよ」
「鈴乃が信じてないだけでしょ?真由美は友達なのに…なんでそんなこと言うの…」
「麻衣、ちゃんと周りをよく見てよ。」
「見てるよ、……私ね、ヒドラ族ってバレてからからかわれるんだよ?周りの目が冷たくて…いつかもっとひどくなりそうで…怖い」
「麻衣…」
「でも、真由美達はそれでも優しいんだよ。私は真由美達なら信じられる」
「………」
「唯一信じられないとしたら、そんなこと言う鈴乃の方かな」
そう言って電話を切った。
ただの八つ当たりだ…
でも、鈴乃があんなこと言うなんて…

次の日、私の周りの動きが変わった。
すぐ物を隠されるし、暴言、暴力も増えた。
私が力を使うのを待っているのだろうか…
私はこれからどうなるんだろう…
私は真由美に相談した。真由美は、
「不安になるの、わかるよ。私はヒドラ族じゃないから偉そうなこと言えないけど…」
真由美は少し間をおいてからつぶやくように言った。
「麻衣は、1人じゃないからね。私や鈴乃、香織、他にもいるんだし」
真由美は照れ隠しなのか、急にカバンをゴソゴソいじった。
「ありがとう…」
そう言うと、真由美は満面の笑みで言った。
「どういたしまして」



その頃鈴乃は、麻衣との電話のことを考えていた。
「麻衣…。」
そのうち取り返しのつかないことが起こるような気がする。
麻衣がヒドラ族だと噂を広めた奴がいる。
麻衣は友達を信じすぎている。
私には理解出来ない。
小さい頃、大好きだった親友に裏切られたことがある。信じていた人だから…とてつもない喪失感が私を襲った。
それ以来、人を信じることをやめた……はずだったのに。
麻衣だけは違った。正直で、真っ直ぐな子。正義感が強くて本当に優しかった。
あの笑顔が偽りではないと心から思えるようになるまでそう時間はかからなかった。

だからこそ…麻衣を助けてあげたい。私と同じ道を歩かせたくない。何より…あの笑顔を曇らせるようなことはしない。
麻衣が大好きだから。
私は大急ぎで家を出て、麻衣の大学に向かった。
麻衣の大学についた時にはもう8時だった。
さすがにもう帰っちゃったか…
諦めて帰ろうかと思った時、人影が見えた。
「?」
音を立てないようにそーっと近づいた。
2人いる…?
そのうちの1人を見た鈴乃は鋭い目つきで睨みつけた。
予感が…当たった。
その人は気づかずに誰かと話していた。 
相手は男だった。
「じゃ、約束通りにしてね」
「…………お前…」
「何?」
「ずっと思ってたけど、お前のやりたかったことってこんなことなのか?」
「何よ今更。もちろんそうよ。私はヒドラ族を許さない。」
「……報酬は?」
「後日ね。約束を果たしてくれてから。」
「分かった。………後悔はしないよな?」
「もちろん。」
「………」
男は何も言わずに立ち去った。
私は、その場に立ったままのあいつに声をかけた。


「真由美」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

(完結)私は家政婦だったのですか?(全5話)

青空一夏
恋愛
夫の母親を5年介護していた私に子供はいない。お義母様が亡くなってすぐに夫に告げられた言葉は「わたしには6歳になる子供がいるんだよ。だから離婚してくれ」だった。 ありがちなテーマをさくっと書きたくて、短いお話しにしてみました。 さくっと因果応報物語です。ショートショートの全5話。1話ごとの字数には偏りがあります。3話目が多分1番長いかも。 青空異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。現代的表現や現代的感覚、現代的機器など出てくる場合あります。貴族がいるヨーロッパ風の社会ですが、作者独自の世界です。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

処理中です...