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5章 忘れられた国
42話 戦争ってこと?
しおりを挟む 結婚式は、以前家族で行ったリゾート地でやる事にした。何度も行ってるから勝手もわかってるし、景色も気候もホテルもいい。親父や兄貴に言ったら、あそこならいいだろうと言われた。実は兄貴も新婚旅行の候補に考えていた場所だからな。
最初は秋にしようかとも言っていたが、朱里がやっぱり花嫁はジューンブライドでしょ、と言うから六月にした。そうだな、日本じゃ梅雨だけど、海外に行けば問題ない。それに…秋まで待てないし。
肝心の美緒に聞いたら、いつでもいい、出来れば料金の安い閑散期で…なんて超現実的な答えが返ってきて、ああ、こいつらしいなと思った。お義母さんの費用もうちが出すと言っているから、それに遠慮しているんだ。そんな慎ましい金銭感覚も可愛い。もう、何でも買ってやりたくなる…まぁ、それすると怒るのは目に見えているからやらないけど…
「まぁ…美緒、綺麗だわ…」
「本当、よく似合ってるわ、可愛い!」
「…そ、そうかな…」
「ああ、綺麗だ、美緒…」
真っ白なウエディングドレスを纏った美緒は…とても綺麗だった。いやもう、綺麗なんて一言では言い表せない…天使?それとも妖精?ああ、それもなんか違う気がする…もうずっとこの姿でいて欲しい…マジで。
華奢で可愛い美緒には、やっぱりプリンセス風のドレスが最高に似合っていた。もうアラサーだから…なんて言っていたけど、レースやフリルをあしらい、長いトレーンのドレスに身を包む美緒は、俺にとっては唯一無二の永遠のお姫様だ。ああ、本当に可愛い…マジであのまま押し倒して貪…いや、何でもない。
あまり豪華だとドレスに着られている感じになるから…と無難でシンプルなデザインに向かう美緒だったが、知り合いのデザイナーのお陰でレースやフリルをしっかり使った可愛いデザインに仕上がった。うん、すげー綺麗だし可愛いし可憐だ。デザイナー神。仕事の関係もあって国内で形だけの披露宴はする予定だけど、その時のドレスも楽しみだ。
式は俺の両親と兄夫婦、朱里夫婦、美緒のお義母さんの少人数で、始終アットホームな感じだった。知らない人間に不安を感じる美緒には、この方法が一番だったと思う。お陰で式の間も表情をこわばらせる事はなく、はにかみながらも始終笑顔だった。ああ、後半は泣き笑いだったけどな。
最初はお化粧が剥げるから泣くわけない、なんて言っていた美緒だったが、ドレスに着替えてお義母さんが一言二言声をかけたら、それだけで目がうるうるになっていた。…うん、弱いんだよな、あいつ、こういうの…
式の最中も懸命にこらえていたけど、式が終わってみんなにお祝いの言葉をかけられたら、涙腺崩壊してそこからは暫く泣きっぱなしだった。事前に朱里がメイクさんに、泣いても大丈夫なメイクでとお願いしてくれたんだが、そうしておいてよかった。泣きながら笑う美緒は本当に可愛かったし、気楽な式にしてよかったと心から思った。
ただ…どうしても早川にやられた傷はまだ消えていなくて、そこだけは痛々しかった。傷が目立たないよう、デザイナーがグローブ付きのデザインにしてくれたからよかったけど、あれは俺にとっては一生の教訓だ。永遠の愛だけじゃなく、何があっても美緒を守り切ると俺は誓った。もう二度とあんな思いも怪我もさせたくない。
結婚したからと言ってハイエナが完全にいなくなるわけじゃないのは、兄貴たちを見ていても明らかだ。未だに兄貴に言い寄る女は絶えないし、春花さんへの風当たりも強い。入籍と式を済ませても、俺の戦いはまだまだ始まったばかりなのだ。
両親とお義母さん、兄貴夫婦はそれぞれ観光して帰っていった。母さんとお義母さんは知らない間に仲良くなってて、親父がしょんぼりしているのが笑えた。
朱里と大石さんは、せっかくだからとここで新婚旅行になった。あっちは色々観光して帰るらしい。
俺たちはそのままそこに留まって、二人きりのハネムーンを楽しんだ。今回は観光よりもゆっくり過ごす事を優先したけど…当然だろう?ハネムーンなんだから。観光なんていつでも出来るが、ハネムーンは今しかない。二人きりでのんびり過ごす、うん、最高だ。
ただ、海外イコール観光のイメージだった美緒は、どこにも行かないと聞いて意外そうな表情をしていた。観光したかったのか…とちょっと期待を外して悪かったと思ったが、それならまた今度連れてこよう。
でも今は…甘い二人きりの時間を楽しむものだろう?俺としてはやっと直に美緒を抱けるんだ。この日をどれほど待ち望んでいたか…
真面目な美緒は、この式が終わるまでは妊娠なんて絶対に嫌!出来婚なんてお母さんに縁切られちゃうと譲ってくれなかった。いや、もう籍は入っているし問題ないと思うんだが、会社では六月に結婚するって言っているんだからと言って譲らなかったんだ。終いには避妊しないならエッチ自体もそれまで禁止!なんて言うんだぞ?そんなの拷問じゃないか…
だから仕方がないが今日まで我慢した。結婚休暇は一週間しかないんだから、こんな貴重な時間に余計な事をしている余裕なんかない。
という訳で、ハネムーンは甘い時間をたっぷり堪能した。時々文句を言っていたが…何だかんだ言って絆されてくれるし、恥ずかしがりながらも甘えてくる姿は最高に可愛かった。
やっと甘えてくれるようになったのは大きな収穫だ。あいつは生真面目で恥ずかしがり屋で睦言に免疫がないだけで、実は寂しがりの甘えたがりなんだ。俺のマンションに戻ってからはより一層ぐずぐずに甘やかしてきたのと、ハネムーンはあいつ好みの女の子が憧れるホテルとサービスを選んだのが功を奏したみたいだ。
「…ねぇ…」
「ん?どうした?」
「その…式、の事なんだけど…」
「何だ?気に入らない事でもあったか?」
「そんなのない!その…そうじゃなくて…」
「…じゃ、どうした?」
何かを言いたいのはわかったが、いつもはズバッと言う美緒が珍しく言い淀んでいて、俺は何かあったのかと心配になった。美緒は言いたいことをはっきり言うタイプだけど、意外にも文句や苦情はあまり言わないんだ。本人に言わせると、相手だって色々考えているかもしれないから苦情を言うのは失礼だと思うから…らしい。ああ見えて人の事をよく考えているんだよな。そう言うところも可愛いんだけど、そんなに言い難い事があったのだろうか…不安が積もる。
「何でもいいから言ってくれ」
「…う、うん…その…」
「うん?」
「…ありがとう…」
「へ?」
「あの…あんな、素敵な結婚式、してくれて…」
「…」
「その…お姫様みたいなドレスも…凄く嬉しかった…あんなドレス、着れるなんて思ってなかったから…その…」
「…ああ、…気に入ってくれたなら、よかった」
おい、こいつは俺を殺す気か?顔を赤らめて、恥ずかしそうにお礼を言うなんて反則だろう?何だよ、その殺人的に可愛いリアクションは…!
こいつが意地っ張りで天邪鬼なのはよ~く分かっていた。それでも稀に素直なところを見せるんだけど、それの威力がどれくらい強力か、こいつは絶対に分かっていないだろう。
これはさすがの俺も予想外だった。まずい…俺、もしかしたら耳まで赤くなっているかもしれない…
気が強くてサバサバしてるように見えるけど、実際はそうじゃないし、サバサバしているように見えるのは、最初から人に期待しないからだ。そう、こいつは実はとても繊細で傷つきやすくて、甘え下手だ。だから傷つかないように予防線を張って自分を守っている。
「美緒が喜んでくれたならやった甲斐があるよ」
嬉しくて自然に笑みがこみ上げてくる。恥ずかしそうに顔を赤らめているのが可愛くて、思わず抱き寄せたら抵抗せずに身を任せた。ああ、柔らかいしいい匂いがする。
こいつは甘え出したらきっと子猫みたいにべったりなんだろうなぁ…と思うんだけど、まだ恥ずかしさが勝っているのか、遠慮するんだよな。まぁ、俺の昔やったバカな行いもあるだろうし、同じ年ってのもあるだろう。こいつはどっちかというと年上の方が安心するみたいだし。
お義母さんの話じゃ、こいつは昔は父親にべったりで、いわゆるファザコンだったらしい。一人っ子なのもあって、小さい頃から父親が凄く甘かったんだと言っていた。だから父親の裏切りはショックが大きくて、一層許せなかったんだろう、と。
俺がもっとしっかりしていたら、もしかしたら素直に甘えてくれたのかもしれない。有二郎といる時の方がリラックスして見えるのも、あいつの穏やかな雰囲気だけでなく、年よりも上にみられるところなんだろう。会社でも年配の人との方が力を抜いて話しているように見えるしな。
でもまぁ、俺にぷりぷり怒っている美緒も可愛いから、これでいいかな、と思う。こいつの柔らかくて傷つきやすいところは俺だけが知っていればいいし、それを守るのが俺の役目だ。
「美緒が喜ぶなら、何だってしてやるよ」
そう言ってぎゅっと抱きしめた。ああ、今言った事は嘘じゃない。本当に美緒が望む事ならなんだって叶えてやりたいんだ。
「…そんなに甘やかすのは…ダメ」
「…何で?」
「……だって…バカになっちゃうから…」
「バカになっても…ずっと好きだ」
「…っ」
耳元で囁いたら、固まってしまった。ああ、今の言い方も好きだよな、いつも心臓に悪いから止めろって怒ってるけど、それは照れ隠しで本心じゃないのはバレバレだ。ああ、もう、限界だ…もういいだろう?
「…な?ちょ…どこ触って…」
「ん~胸」
「バカっ!まだお昼…っ!」
「可愛い事言う美緒が悪い」
「はぁ?何バカ言ってんのよ!放せぇー!」
ああ、もう、そんなリアクションは逆効果なんだって。抵抗する美緒も可愛いんだから。俺は本能に逆らう事なく、美緒を美味しく頂くためにゆっくりと押し倒した。
* * * * *
ここまで読んでくださってありがとうございました。
これで完結です。
最初は秋にしようかとも言っていたが、朱里がやっぱり花嫁はジューンブライドでしょ、と言うから六月にした。そうだな、日本じゃ梅雨だけど、海外に行けば問題ない。それに…秋まで待てないし。
肝心の美緒に聞いたら、いつでもいい、出来れば料金の安い閑散期で…なんて超現実的な答えが返ってきて、ああ、こいつらしいなと思った。お義母さんの費用もうちが出すと言っているから、それに遠慮しているんだ。そんな慎ましい金銭感覚も可愛い。もう、何でも買ってやりたくなる…まぁ、それすると怒るのは目に見えているからやらないけど…
「まぁ…美緒、綺麗だわ…」
「本当、よく似合ってるわ、可愛い!」
「…そ、そうかな…」
「ああ、綺麗だ、美緒…」
真っ白なウエディングドレスを纏った美緒は…とても綺麗だった。いやもう、綺麗なんて一言では言い表せない…天使?それとも妖精?ああ、それもなんか違う気がする…もうずっとこの姿でいて欲しい…マジで。
華奢で可愛い美緒には、やっぱりプリンセス風のドレスが最高に似合っていた。もうアラサーだから…なんて言っていたけど、レースやフリルをあしらい、長いトレーンのドレスに身を包む美緒は、俺にとっては唯一無二の永遠のお姫様だ。ああ、本当に可愛い…マジであのまま押し倒して貪…いや、何でもない。
あまり豪華だとドレスに着られている感じになるから…と無難でシンプルなデザインに向かう美緒だったが、知り合いのデザイナーのお陰でレースやフリルをしっかり使った可愛いデザインに仕上がった。うん、すげー綺麗だし可愛いし可憐だ。デザイナー神。仕事の関係もあって国内で形だけの披露宴はする予定だけど、その時のドレスも楽しみだ。
式は俺の両親と兄夫婦、朱里夫婦、美緒のお義母さんの少人数で、始終アットホームな感じだった。知らない人間に不安を感じる美緒には、この方法が一番だったと思う。お陰で式の間も表情をこわばらせる事はなく、はにかみながらも始終笑顔だった。ああ、後半は泣き笑いだったけどな。
最初はお化粧が剥げるから泣くわけない、なんて言っていた美緒だったが、ドレスに着替えてお義母さんが一言二言声をかけたら、それだけで目がうるうるになっていた。…うん、弱いんだよな、あいつ、こういうの…
式の最中も懸命にこらえていたけど、式が終わってみんなにお祝いの言葉をかけられたら、涙腺崩壊してそこからは暫く泣きっぱなしだった。事前に朱里がメイクさんに、泣いても大丈夫なメイクでとお願いしてくれたんだが、そうしておいてよかった。泣きながら笑う美緒は本当に可愛かったし、気楽な式にしてよかったと心から思った。
ただ…どうしても早川にやられた傷はまだ消えていなくて、そこだけは痛々しかった。傷が目立たないよう、デザイナーがグローブ付きのデザインにしてくれたからよかったけど、あれは俺にとっては一生の教訓だ。永遠の愛だけじゃなく、何があっても美緒を守り切ると俺は誓った。もう二度とあんな思いも怪我もさせたくない。
結婚したからと言ってハイエナが完全にいなくなるわけじゃないのは、兄貴たちを見ていても明らかだ。未だに兄貴に言い寄る女は絶えないし、春花さんへの風当たりも強い。入籍と式を済ませても、俺の戦いはまだまだ始まったばかりなのだ。
両親とお義母さん、兄貴夫婦はそれぞれ観光して帰っていった。母さんとお義母さんは知らない間に仲良くなってて、親父がしょんぼりしているのが笑えた。
朱里と大石さんは、せっかくだからとここで新婚旅行になった。あっちは色々観光して帰るらしい。
俺たちはそのままそこに留まって、二人きりのハネムーンを楽しんだ。今回は観光よりもゆっくり過ごす事を優先したけど…当然だろう?ハネムーンなんだから。観光なんていつでも出来るが、ハネムーンは今しかない。二人きりでのんびり過ごす、うん、最高だ。
ただ、海外イコール観光のイメージだった美緒は、どこにも行かないと聞いて意外そうな表情をしていた。観光したかったのか…とちょっと期待を外して悪かったと思ったが、それならまた今度連れてこよう。
でも今は…甘い二人きりの時間を楽しむものだろう?俺としてはやっと直に美緒を抱けるんだ。この日をどれほど待ち望んでいたか…
真面目な美緒は、この式が終わるまでは妊娠なんて絶対に嫌!出来婚なんてお母さんに縁切られちゃうと譲ってくれなかった。いや、もう籍は入っているし問題ないと思うんだが、会社では六月に結婚するって言っているんだからと言って譲らなかったんだ。終いには避妊しないならエッチ自体もそれまで禁止!なんて言うんだぞ?そんなの拷問じゃないか…
だから仕方がないが今日まで我慢した。結婚休暇は一週間しかないんだから、こんな貴重な時間に余計な事をしている余裕なんかない。
という訳で、ハネムーンは甘い時間をたっぷり堪能した。時々文句を言っていたが…何だかんだ言って絆されてくれるし、恥ずかしがりながらも甘えてくる姿は最高に可愛かった。
やっと甘えてくれるようになったのは大きな収穫だ。あいつは生真面目で恥ずかしがり屋で睦言に免疫がないだけで、実は寂しがりの甘えたがりなんだ。俺のマンションに戻ってからはより一層ぐずぐずに甘やかしてきたのと、ハネムーンはあいつ好みの女の子が憧れるホテルとサービスを選んだのが功を奏したみたいだ。
「…ねぇ…」
「ん?どうした?」
「その…式、の事なんだけど…」
「何だ?気に入らない事でもあったか?」
「そんなのない!その…そうじゃなくて…」
「…じゃ、どうした?」
何かを言いたいのはわかったが、いつもはズバッと言う美緒が珍しく言い淀んでいて、俺は何かあったのかと心配になった。美緒は言いたいことをはっきり言うタイプだけど、意外にも文句や苦情はあまり言わないんだ。本人に言わせると、相手だって色々考えているかもしれないから苦情を言うのは失礼だと思うから…らしい。ああ見えて人の事をよく考えているんだよな。そう言うところも可愛いんだけど、そんなに言い難い事があったのだろうか…不安が積もる。
「何でもいいから言ってくれ」
「…う、うん…その…」
「うん?」
「…ありがとう…」
「へ?」
「あの…あんな、素敵な結婚式、してくれて…」
「…」
「その…お姫様みたいなドレスも…凄く嬉しかった…あんなドレス、着れるなんて思ってなかったから…その…」
「…ああ、…気に入ってくれたなら、よかった」
おい、こいつは俺を殺す気か?顔を赤らめて、恥ずかしそうにお礼を言うなんて反則だろう?何だよ、その殺人的に可愛いリアクションは…!
こいつが意地っ張りで天邪鬼なのはよ~く分かっていた。それでも稀に素直なところを見せるんだけど、それの威力がどれくらい強力か、こいつは絶対に分かっていないだろう。
これはさすがの俺も予想外だった。まずい…俺、もしかしたら耳まで赤くなっているかもしれない…
気が強くてサバサバしてるように見えるけど、実際はそうじゃないし、サバサバしているように見えるのは、最初から人に期待しないからだ。そう、こいつは実はとても繊細で傷つきやすくて、甘え下手だ。だから傷つかないように予防線を張って自分を守っている。
「美緒が喜んでくれたならやった甲斐があるよ」
嬉しくて自然に笑みがこみ上げてくる。恥ずかしそうに顔を赤らめているのが可愛くて、思わず抱き寄せたら抵抗せずに身を任せた。ああ、柔らかいしいい匂いがする。
こいつは甘え出したらきっと子猫みたいにべったりなんだろうなぁ…と思うんだけど、まだ恥ずかしさが勝っているのか、遠慮するんだよな。まぁ、俺の昔やったバカな行いもあるだろうし、同じ年ってのもあるだろう。こいつはどっちかというと年上の方が安心するみたいだし。
お義母さんの話じゃ、こいつは昔は父親にべったりで、いわゆるファザコンだったらしい。一人っ子なのもあって、小さい頃から父親が凄く甘かったんだと言っていた。だから父親の裏切りはショックが大きくて、一層許せなかったんだろう、と。
俺がもっとしっかりしていたら、もしかしたら素直に甘えてくれたのかもしれない。有二郎といる時の方がリラックスして見えるのも、あいつの穏やかな雰囲気だけでなく、年よりも上にみられるところなんだろう。会社でも年配の人との方が力を抜いて話しているように見えるしな。
でもまぁ、俺にぷりぷり怒っている美緒も可愛いから、これでいいかな、と思う。こいつの柔らかくて傷つきやすいところは俺だけが知っていればいいし、それを守るのが俺の役目だ。
「美緒が喜ぶなら、何だってしてやるよ」
そう言ってぎゅっと抱きしめた。ああ、今言った事は嘘じゃない。本当に美緒が望む事ならなんだって叶えてやりたいんだ。
「…そんなに甘やかすのは…ダメ」
「…何で?」
「……だって…バカになっちゃうから…」
「バカになっても…ずっと好きだ」
「…っ」
耳元で囁いたら、固まってしまった。ああ、今の言い方も好きだよな、いつも心臓に悪いから止めろって怒ってるけど、それは照れ隠しで本心じゃないのはバレバレだ。ああ、もう、限界だ…もういいだろう?
「…な?ちょ…どこ触って…」
「ん~胸」
「バカっ!まだお昼…っ!」
「可愛い事言う美緒が悪い」
「はぁ?何バカ言ってんのよ!放せぇー!」
ああ、もう、そんなリアクションは逆効果なんだって。抵抗する美緒も可愛いんだから。俺は本能に逆らう事なく、美緒を美味しく頂くためにゆっくりと押し倒した。
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ここまで読んでくださってありがとうございました。
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