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61、転生した聖女は幸せです
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私達の結婚式は王都で1番歴史のある教会で、とりおこなわれた。
「1度目はここで聖女認定され、こ
こで毒殺されたの。
不思議ね。
今はそれさえ懐かしく感じられるわ」
当日、神父様の前にレオンと向かいあって立った私はつぶやく。
「それはポポが現在、最高に幸せだからよ。次はワタクシがここでイワンと式を挙げるざんす」
「それは永遠にムリっぽいぞ」
天井に見事な天使画が描かれた荘厳な雰囲気の教会の中で、マカとロンはいつものケンカをくりひろげる。
「そう思ってるのは、きっとオイラだけじゃないぞ。
なー」
とマカは他の精霊達に声をかけた。
あの日、王宮に現れた虹は数々の精霊に姿を変えて私の周りにいる。
「では、王様。聖女様。
これから結婚の儀をとり行います」
「悪いが神父。
その前に1つだけポポに確認しておきたいことがある」
「わかりました。では少し待つことに致しましょう」
「たった今、養父パメラの調査でわかった事なんだがな。
ポポの誘拐を指示したのは、私の父サルラだったんだ。
それでもオレと結婚してくれるか?」
レオンが真剣な眼で私を見据えた。
「なんですって!
サルラ王が。一体どうしてそんな事を」
「父はショコラ国を訪れた時、カトレーネ王妃に一目惚れをして関係をせまったらしい。
だが、冷たく王妃にあしらわれた」
「それでお母様に嫌がらせをしようとしたのね」
「ああ、そうだ。
ショコラ国側も父の仕業だと勘ぐっていたが、かくたる証拠がなくどうしようもなかった。
それでシュメール国との国交をとりやめたらしい」
「その証拠が見つかったのね」
「ああ。
父にポポの誘拐を指示された兵士が、父の声を記録した石を持っていたんだ」
「まあ」
「その兵士はポポを殺すことも命じられていたが、さすがにそれはできずペペス村に捨てたという。
その兵士は他国に逃げて、平民として暮らしていた」
「まああ」
と驚きの声を上げたまま、しばらくかたまってしまう。
「レオン。
その兵士は今どうしてるの?」
「もちろん牢屋にいる。安心しろ。
重い刑をかけてやるから」
「それはイヤ。その兵士のおかげで私はチチとカカやレオンに出会えたんだから。
お願いだから、許してあげて。
そして、これからは2人で前だけを向いていきましょう」
「ありがとう、感謝する」
レオンの男らしい声はかすかに震えていた。
「感謝だなんてオーバね」
「あああ。ポポが可愛くて可愛くて我慢できない」
レオンは素早く私のベールをあげると、何度も唇にキスをおとす。
「おめでとう」
「おめでとうございます」
いつのまにか2人だけの世界にひたっていたが、あちこちから上がる声に私達はハッとする。
それから、神父様に正式に愛を誓った私は、列席者の優しい視線に涙がとまらなかった。
「ほんにめでたいズラ」
チチ、カカもニカッといい笑顔だ。
2人の赤ちゃんは男の子で、ポポンと名付けられた。
ポポンの子守り役のエリザと、意外に畑仕事が得意なリオンは、今ではチチとカカと家族同然だという。
「ワタクシ、何度もシュメールに足を運びますから、仲良くして下さいませよ」
「どんな小さな事でも、困ったことがあれば相談して欲しい」
お母様のカトレーネ王妃とお父様のシュベル王はいつも私に温かな言葉をくれる。
「ポポ、おめでとさん。
実は私もジョーと結婚したばっかなんだ。
また、一緒に新妻トークしようよ。
なんて言ったら、もうダメかな」
これはリリーよ。
私の大好きな友達。
リリーはジョーとお菓子屋さんを始めたらしいけど、私、決めているの。
リリーのお店で孤児や貧しい人達に配る「にこにこ焼き」をつくってもらう事を。
(月に1度は変装して、私もお店を手伝うの。お菓子に魔法で愛をいっぱい詰めるわよ)
リリー達のお店は王室御用達店になるのよね。
「私、とっても幸せだわ」
そう言いながら、喜し涙を指でぬぐった時、
「ゴーンゴーン」と重厚な鐘の音が都に鳴り響く。
「どうしてかな。
これから私にはいい事しか起きないような気がするの」
「そりゃそうだ。
悪い事はオレが全部ひきうけてやるからな」
「やっぱりレオンは私の頼れる護衛騎士ね」
「そしてある時は王で、ある時は推しにもなる。
ポポを全力で守るためにな」
レオンはそう言うと、ソッと私の肩を抱きよせて頬にチュとキスをする。
転生した聖女は2度目は推しに溺愛されて幸せです!
-完-
「1度目はここで聖女認定され、こ
こで毒殺されたの。
不思議ね。
今はそれさえ懐かしく感じられるわ」
当日、神父様の前にレオンと向かいあって立った私はつぶやく。
「それはポポが現在、最高に幸せだからよ。次はワタクシがここでイワンと式を挙げるざんす」
「それは永遠にムリっぽいぞ」
天井に見事な天使画が描かれた荘厳な雰囲気の教会の中で、マカとロンはいつものケンカをくりひろげる。
「そう思ってるのは、きっとオイラだけじゃないぞ。
なー」
とマカは他の精霊達に声をかけた。
あの日、王宮に現れた虹は数々の精霊に姿を変えて私の周りにいる。
「では、王様。聖女様。
これから結婚の儀をとり行います」
「悪いが神父。
その前に1つだけポポに確認しておきたいことがある」
「わかりました。では少し待つことに致しましょう」
「たった今、養父パメラの調査でわかった事なんだがな。
ポポの誘拐を指示したのは、私の父サルラだったんだ。
それでもオレと結婚してくれるか?」
レオンが真剣な眼で私を見据えた。
「なんですって!
サルラ王が。一体どうしてそんな事を」
「父はショコラ国を訪れた時、カトレーネ王妃に一目惚れをして関係をせまったらしい。
だが、冷たく王妃にあしらわれた」
「それでお母様に嫌がらせをしようとしたのね」
「ああ、そうだ。
ショコラ国側も父の仕業だと勘ぐっていたが、かくたる証拠がなくどうしようもなかった。
それでシュメール国との国交をとりやめたらしい」
「その証拠が見つかったのね」
「ああ。
父にポポの誘拐を指示された兵士が、父の声を記録した石を持っていたんだ」
「まあ」
「その兵士はポポを殺すことも命じられていたが、さすがにそれはできずペペス村に捨てたという。
その兵士は他国に逃げて、平民として暮らしていた」
「まああ」
と驚きの声を上げたまま、しばらくかたまってしまう。
「レオン。
その兵士は今どうしてるの?」
「もちろん牢屋にいる。安心しろ。
重い刑をかけてやるから」
「それはイヤ。その兵士のおかげで私はチチとカカやレオンに出会えたんだから。
お願いだから、許してあげて。
そして、これからは2人で前だけを向いていきましょう」
「ありがとう、感謝する」
レオンの男らしい声はかすかに震えていた。
「感謝だなんてオーバね」
「あああ。ポポが可愛くて可愛くて我慢できない」
レオンは素早く私のベールをあげると、何度も唇にキスをおとす。
「おめでとう」
「おめでとうございます」
いつのまにか2人だけの世界にひたっていたが、あちこちから上がる声に私達はハッとする。
それから、神父様に正式に愛を誓った私は、列席者の優しい視線に涙がとまらなかった。
「ほんにめでたいズラ」
チチ、カカもニカッといい笑顔だ。
2人の赤ちゃんは男の子で、ポポンと名付けられた。
ポポンの子守り役のエリザと、意外に畑仕事が得意なリオンは、今ではチチとカカと家族同然だという。
「ワタクシ、何度もシュメールに足を運びますから、仲良くして下さいませよ」
「どんな小さな事でも、困ったことがあれば相談して欲しい」
お母様のカトレーネ王妃とお父様のシュベル王はいつも私に温かな言葉をくれる。
「ポポ、おめでとさん。
実は私もジョーと結婚したばっかなんだ。
また、一緒に新妻トークしようよ。
なんて言ったら、もうダメかな」
これはリリーよ。
私の大好きな友達。
リリーはジョーとお菓子屋さんを始めたらしいけど、私、決めているの。
リリーのお店で孤児や貧しい人達に配る「にこにこ焼き」をつくってもらう事を。
(月に1度は変装して、私もお店を手伝うの。お菓子に魔法で愛をいっぱい詰めるわよ)
リリー達のお店は王室御用達店になるのよね。
「私、とっても幸せだわ」
そう言いながら、喜し涙を指でぬぐった時、
「ゴーンゴーン」と重厚な鐘の音が都に鳴り響く。
「どうしてかな。
これから私にはいい事しか起きないような気がするの」
「そりゃそうだ。
悪い事はオレが全部ひきうけてやるからな」
「やっぱりレオンは私の頼れる護衛騎士ね」
「そしてある時は王で、ある時は推しにもなる。
ポポを全力で守るためにな」
レオンはそう言うと、ソッと私の肩を抱きよせて頬にチュとキスをする。
転生した聖女は2度目は推しに溺愛されて幸せです!
-完-
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