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60 祝福の嵐

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「ちょ、ちょと待ってくれだべ。
 じゃなくて、待って下さい。
 いきなりそんな事を言われても、オラ信じられないずら」

 あまりに想定外の出来事に、素で驚いてしまった。

「こういう純朴な所が可愛くてしかたない」

 レオンはいつくしむような眼差しを私にむける。

「ポポは本当にレオン様に愛されているのね。
 とても素敵なことだわ。
 さっきは驚かせてごめんなさい。
 これから、私にゆっくり説明させて下さい」

 王妃の言葉にレオンと私はコクリと首をたてにふった。

「ご存知のようにショコランはお菓子づくりの盛んな国です。
 それには理由があって、我々王族は生まれた時からお菓子の精霊が視えるのです。
 だから、どんなお菓子をつくったらいいかを精霊達に相談できるのです」

「えー! 私の他にも精霊が視える人がいたとは驚きだわ」

「精霊が視える事、ターコイズスマイルペンダントを持っている事。
 この二つがショコラン王族の証になるのですよ」

「ターコイズスマイルペンダントというのが、これなんですね」

 私は自分が身に着けているにこにこペンダントを指さしする。

「その通りよ。
 アナタは生まれてすぐにターコイズスマイルペンダントを与えられた。
 あとアナタは他の王族と違い、強い魔力を天から授けられていたの。
 アナタが生まれてからすぐの事だったわ。
 アナタの周囲に、今まで見たこともないような数の精霊達が集まって祝福をくれたの。
 そんな事は初めてだったから、教皇様に鑑定してもらってわかったのよ。
 アナタに最強の魔力が宿っていることが」

 そこまで言うと王妃様は言葉をきって、フウーと深いため息をついた。

「大丈夫ですか? 少し休んだらどうだね」

「大丈夫だわ。ありがとうございます」

 心配するシュベルク王に頭を下げた王妃様は、すぐに視線を私に移して話を続ける。

「他の王族は精霊は視えるけれど魔法は使えなかった。
 なのにアナタは強い魔力を持っているという。
 ワタクシはそれが心配でしかたなかったの。
 将来、誰かがアナタを利用して魔力を悪用するのではと。
 だからね。信頼できる魔導士にアナタの魔力を封印してもらったの」

「魔力を封印した?
 なのに私は魔法が使える。
どうしてなの?」

 コクリと首を傾けると、シュベルク王が悪戯っぽく微笑んだ。

「さあー。どうしてだろうね」

「王様は意地悪ね。
 それはね。アナタがすでに真実の愛の相手と出会ったからよ。
 封印がとけるのは、アナタが真実の愛に出会った時だから」
と王妃様は目を細めた。

「ええええええ! 
 だからレオンがいないと、十分な魔法が発揮できなかったんだわ」

 そう口にしただけで、みるみる頬が染まってゆくのがわかる。

「私は本当にショコラン国の王女なの!
 やっぱり信じられないわ。
 これはきっと夢よね。夢」

 同じ言葉を繰り返してオロオロしていると、横からレオンのたくましい腕がスーと伸びてきた。

「夢なんかじゃないぞ。
 現実にポポは王女で、オレはポポの真実の愛の相手なんだ」

「私、ずーと親に捨てられたと思ってたけど、そうじゃなかったのね。
 それだけでも喜しい」

「よかったな」

レオンは自分の広い胸の中に私の顔をおしあてて、何度もヨシヨシと頭をなでてくれる。

「まだ我々の話を疑っているような人も大勢いるようだ。
 だから、ここではっきりと証明しよう。
 もし、ポポの持っているペンダントが本物なら、私のペンダントとあわせた時に虹が現れるはずだ」
とシュベルク王が声をはる。

「わかりました」

 私は立ち上がると、王様のペンダントヘッドに自分のペンダントヘッドをカチンと音をたててあわせた。

 たちまち、2つのペンダントの間から7色の光の柱が立ち上がり、虹へと姿をかえてゆく。

「キラキラと眩い、なんて綺麗な虹なの!」

「素晴らしい!今まで見た中で最高に美しい虹だ!」

 天井にかかる虹を見上げた皆から、歓声と拍手がわきおこった。

 けれど、その歓声はすぐに私達への祝いの言葉へ変わってゆく。

「王様、聖女様。ご婚約おめでとうございます」
と。



 

 

 

 

 
 
 

 
 


 
 

 
 
 


 
 

 




 


 




 
 







 


 

 

 
 


 
 
 



 




 
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