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59、ショコラン国王夫妻

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「いやあ。久しぶりに訪れましたが、 以前とは比べられないほどシュメール国には活気があふれておりますな。
 レオン様の政治手腕は真に素晴らしい!」

 レオンの前に列をなした来賓は、皆同じような言葉でレオンをたたえる。

「とんでもございません。
 これは私を支えてくれている、周りの者達のおかげです」

 玉座でゆったりと微笑むレオンは、天井からつるされた大きなシャンデリアの光を浴びて、まるで宝石のように輝いている。

「これはまたご謙遜を」

とある外国の王様が大きなお腹をさすって「ウハウハ」と笑った時、マカとロンがベーと舌をだす。

「レオンは謙遜なんかしてないぞ。
 国の安定は、ポポが一生懸命魔獣を退治したおかげだからな」

「そうーざます。
 あとワタクシのイワン様の働きも大きいわ」

「シー、2人とも静かになさい」

 私は口に人差し指をたてる。

 精霊の声が他の人には聞こえない事にホッとしながら。

 そりゃあ、ま、マカとロンがイライラするのもわからなくはない。

 だって、来る人来る人王様の隣にいる私には、申し訳程度の声しかかけないから。

 ー貧しい女が聖女になったのをいい事に、うまく王様をひっかけたー

 誰もがそう思っているのだろう。

 気にしない、気にしない。

 それより、気になってしかたないのはショコラン国王夫妻だ。

「早くお会いしたい」

 ポツリと呟いて胸に手をあてて、これまでにショコラン国について王立図書館で調べた事を脳内でおさらいする。

 ショコラン国はシュメール国よりはるか南に位置する大国だ。

 国でとれるカカオやナッツを使ったお菓子が名産で、別名お菓子の国とも言われている。

 そんなショコラン国とわが国は長らく友好関係を保っていたが、サルラ王になってから突然国交が閉ざされたのだ。

 理由はわからない。

 けど、そんな国の王妃様がなぜ私と同じペンダントを身に着けているのかしら。

「勇気をだして王妃様に直接お聞きするわ」

 ギュっと唇をかんだと同時に、「初めまして。ショコラン国からやって参りました」と渋い声が耳をかすめた。

「あ!」

 短く叫んで、レオンの方へ視線を移すと、穏やかで気品のある紳士がレオンと握手を交わしている。

「あの方がシュベルク王ね。肖像画よりずーと素敵な方だわ」

 琥珀色の瞳と同じ色の髪色の王様に見とれていると、いきなり誰かに両肩をさすられた。

「ワタクシ、イワン外交官からアナタの肖像画を見せられてから、ずーとアナタの事ばかり考えていました。
 さっそく、質問させて下さいませ。
 アナタはどうして我が国の秘宝を身に着けているのですか?」

「我が国の秘宝? にこにこペンダントが?」

 取り乱した王妃に周囲がざわめく。

「ぬけめのない女ね。きっと魔法で盗んだのよ」なんて心ない言葉がアチコチから聞こえてきた。

「そうですよ。
 これは我が国でしか採れない宝石でつくった物で、他国に出回るような品ではないのです」

 キッと眉をつりあげて私を見据えるカトレーヌ王妃様。

 私と同じ色の瞳には、険しさとなぜか期待の色が交錯しているように見える。

「あーのう。
 実は私は捨て子で。
 拾ってくれたチチとカカが言うには、私はこのペンダントをつけて草むらでギャーギャー泣いていたそうです。
 あと、ペンダントの裏に『ポポ』と刻まれていたから、私をポポという名前にしたって言ってました」

 ただならぬ王妃様の気迫におされて、モジモジと身体をねじりながら答えた。

「なんですって。それは本当の事なのね」

「はい」

 コクリと首を縦にふったと同時だ。

「やっと見つけましたわ。
 長らく行方不明になっていた私の娘、ポポを」

泣きじゃくる王妃様に身体が壊れるかと思うほどの強さで、抱きしめられたのは。

 

 


 
 
 

 

 


 


 

 

 

 

 

 


 
 










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