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57、ただいまチチ、カカ
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「ポポ。
信じられないことざんすが、この2人はあそこの丸太から出てきたようよ」
「本当だわ。
丸太に彫られていたリオンとエリザの姿がなくなっているもの」
ロンにうながされて視線を移した瞬間、背中にゾクリと冷たい感覚が走る。
「宰相から『夜中にあの丸太から泣き声がする、と侍女達が気持ち悪がってます。それで庭園の隅に捨て置きました』と報告を受けていたが、ここの事だったのか」
レオンは目を丸くした。
「アイツら、オイラ達に復讐するつもりなんだな。
やられる前にこの拳で倒してやるぞ」
「ここは私にまかせて」
ポワポワと前に進もうとするマカを手で制すると、地面にペタンとしゃがむエリザに微笑んだ。
「エリザ。久しぶりね」
「エリザって。私のこと? あなたは一体誰なの?」
きょとんとした顔を私に向けるエリザからは、1ミリの敵意も感じられない。
「あなたはスイウン国の王女エリザで、私はシュメール国の聖女ポポよ」
そう言って、エリザの細い肩にポンと手をおくと、
「さっきまで王女になった最悪の夢をみてたのよ。
まさか、あれって正夢だったの?」
エリザは両手で顔をおおって、シクシク泣きじゃくった。
「安心しろ。オマエが王女のわけないだろう。
ポポ様にちょっとからかわれただけだ」
エリザを優しい眼差しで見守るリオンからは、以前のような毒気は消えている。
「なら、男。
もしオマエがこの国の王だったとしたらどうする?」
今度はレオンがリオンに鋭い視線をむけた。
「このオレが王だなんて、冗談がきついな。
仮にそうとしても願い下げだ。
オレもな。
さっきまで夢の中で王として生きてて、悲惨な目にあったとこなんだ」
リオンは木々の間から見える空を見上げ、清々しく笑う。
「2人は本当に記憶を失っているのか」
心底驚いているようなレオンの手をギュツと握って、私はコクンとうなずいた。
「エリザの事を心配したスイウン国の王様が、魔法で2人を甦らしたそうよ。
たった今、空から手元にストンと石が落ちてきたでしょ。それにそう書かれていたの」
「その石は魔法郵便だったのか。
さすがの王様も、記憶は戻せなかったんだな」
「それは違うと思う。
王様はわざと戻さなかったんじゃないかな。
だって2人は今の方が、前よりずーと幸せそうだもん」
「これから2人をどーするかが問題だな。
悪評高いリオンが生きていると知ったら、国民や官僚が黙っていないだろうし」
「オイラもこの2人はこのままの方が幸せだと思うぞ」
「私だってよ。
だからね。
チチとカカの所に連れて行くの。
実はね。
『この年で恥ずかしいから黙っているずら』って口留めされてたんだけど、もうすぐ2人に赤ちゃんが生まれるの。
そうなると、色々と忙しくなるでしょ。
ちょうど仕事を手伝ってくれる人を探していたから」
「それはグットタイミングざます」
「でしょ。じゃあさっそく出発よ」
人差し指をふって魔法で馬車をだす。
「あなた達の名前はリオンとエリザというの。
でね。
2人をまっている人がペペス村にいるから、会いにいきましょう」
早口でつげると、さっそく皆で馬車にのりこんだ。
「ポポ様。
色々とありがとうございます」
目にウルウルと涙をうかべて何度もお礼の言葉をのべるエリザに、これからは一杯幸せになって欲しいと心底願う。
1度めに毒殺された事は、キレイサッパリ忘れたわ。
「この恩は一生わすれない。感謝する」
さすが元王様。
微妙に上から目線のいい方ね。
けど、それも今は愛嬌よ。
これまでずいぶんと嫌味を言われたけど、それは過去の事。
リオンにも温かい暮らしが待ってますように。
魔法の馬車は超超超特急。
数秒でチチとカカの家の前に到着した。
「ただいま! チチ、カカ」
勢いよく玄関の扉を開けると、チチとカカの姿がすぐに現れた。
「ポポ。ポポ。よく帰ってきてくれたズラな」
「カカ。でかい腹で走るのはナシだべ。
たまげた。レオン王様までいるずらか」
懐かし過ぎる声は、私の涙腺をアッという間に崩壊させた。
信じられないことざんすが、この2人はあそこの丸太から出てきたようよ」
「本当だわ。
丸太に彫られていたリオンとエリザの姿がなくなっているもの」
ロンにうながされて視線を移した瞬間、背中にゾクリと冷たい感覚が走る。
「宰相から『夜中にあの丸太から泣き声がする、と侍女達が気持ち悪がってます。それで庭園の隅に捨て置きました』と報告を受けていたが、ここの事だったのか」
レオンは目を丸くした。
「アイツら、オイラ達に復讐するつもりなんだな。
やられる前にこの拳で倒してやるぞ」
「ここは私にまかせて」
ポワポワと前に進もうとするマカを手で制すると、地面にペタンとしゃがむエリザに微笑んだ。
「エリザ。久しぶりね」
「エリザって。私のこと? あなたは一体誰なの?」
きょとんとした顔を私に向けるエリザからは、1ミリの敵意も感じられない。
「あなたはスイウン国の王女エリザで、私はシュメール国の聖女ポポよ」
そう言って、エリザの細い肩にポンと手をおくと、
「さっきまで王女になった最悪の夢をみてたのよ。
まさか、あれって正夢だったの?」
エリザは両手で顔をおおって、シクシク泣きじゃくった。
「安心しろ。オマエが王女のわけないだろう。
ポポ様にちょっとからかわれただけだ」
エリザを優しい眼差しで見守るリオンからは、以前のような毒気は消えている。
「なら、男。
もしオマエがこの国の王だったとしたらどうする?」
今度はレオンがリオンに鋭い視線をむけた。
「このオレが王だなんて、冗談がきついな。
仮にそうとしても願い下げだ。
オレもな。
さっきまで夢の中で王として生きてて、悲惨な目にあったとこなんだ」
リオンは木々の間から見える空を見上げ、清々しく笑う。
「2人は本当に記憶を失っているのか」
心底驚いているようなレオンの手をギュツと握って、私はコクンとうなずいた。
「エリザの事を心配したスイウン国の王様が、魔法で2人を甦らしたそうよ。
たった今、空から手元にストンと石が落ちてきたでしょ。それにそう書かれていたの」
「その石は魔法郵便だったのか。
さすがの王様も、記憶は戻せなかったんだな」
「それは違うと思う。
王様はわざと戻さなかったんじゃないかな。
だって2人は今の方が、前よりずーと幸せそうだもん」
「これから2人をどーするかが問題だな。
悪評高いリオンが生きていると知ったら、国民や官僚が黙っていないだろうし」
「オイラもこの2人はこのままの方が幸せだと思うぞ」
「私だってよ。
だからね。
チチとカカの所に連れて行くの。
実はね。
『この年で恥ずかしいから黙っているずら』って口留めされてたんだけど、もうすぐ2人に赤ちゃんが生まれるの。
そうなると、色々と忙しくなるでしょ。
ちょうど仕事を手伝ってくれる人を探していたから」
「それはグットタイミングざます」
「でしょ。じゃあさっそく出発よ」
人差し指をふって魔法で馬車をだす。
「あなた達の名前はリオンとエリザというの。
でね。
2人をまっている人がペペス村にいるから、会いにいきましょう」
早口でつげると、さっそく皆で馬車にのりこんだ。
「ポポ様。
色々とありがとうございます」
目にウルウルと涙をうかべて何度もお礼の言葉をのべるエリザに、これからは一杯幸せになって欲しいと心底願う。
1度めに毒殺された事は、キレイサッパリ忘れたわ。
「この恩は一生わすれない。感謝する」
さすが元王様。
微妙に上から目線のいい方ね。
けど、それも今は愛嬌よ。
これまでずいぶんと嫌味を言われたけど、それは過去の事。
リオンにも温かい暮らしが待ってますように。
魔法の馬車は超超超特急。
数秒でチチとカカの家の前に到着した。
「ただいま! チチ、カカ」
勢いよく玄関の扉を開けると、チチとカカの姿がすぐに現れた。
「ポポ。ポポ。よく帰ってきてくれたズラな」
「カカ。でかい腹で走るのはナシだべ。
たまげた。レオン王様までいるずらか」
懐かし過ぎる声は、私の涙腺をアッという間に崩壊させた。
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