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56、復活したリオンとエリザ
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「レオン王様、こんな所にいらっしゃいましたか。
お1人で出歩けるのは危険ですから、おやめ下さいといつも申しておりますのに」
庭園の茂みに備え付けられたベンチに2人で密着して座っていると、侍女長が血相をかえて走ってきた。
「ここは2人だけの秘密の場所だったのに、とうとうオルガに見つかってしまったわ」
ホーとため息をつく私にひっつめ髪のオルガが、キュッと眉をひそめる。
「すでに聖女様は王様の婚約者ではありません。
なので、そんな風にベタベタと、あっ、いえ。
もう少し距離をおいて、王様に接していただきたいのです」
「なら、ポポと婚約すれば文句はないのだろ。
では、ここでポポにプロポーズをするぞ」
レオンは悪戯っぽい色をうかべた瞳を私にむける。
「ポポ、ぜひオレの妻に……」
レオンが私の顎を手でもちあげて、甘い声でささやく。
と、同時にオルガがヒステリックに叫ぶ。
「なりません!王様。
『聖女は時の王と結婚すること』という掟が廃止されてから、レオン様には公爵家や他国の王族から縁談が殺到してるのですよ。
まずはほかの方々にもお会いしてから、その上で聖女様へのプロポーズをお考えくださいませ」
「その必要はない。
オレはポポ以外の女には興味がないから」
「相手に興味があるとかないとかの問題ではありません。
王様にとっての結婚は政治的意味が強い物なのですから」
「オレは政略結婚はしない。
たとえポポが捨て子だろうが、オレはポポを選ぶ。
家柄や血筋なんてどうでもいいんだ」
ここのところ毎日のように繰り返される話が、今日もまた始まった。
「こんなことなら、あの掟を廃止することなかったざんす」
「ロンはバカか。
そんなことを言ったら、頑張って廃止してくれたイワンに悪いだろう」
「はいはい。どうせワタクシはバカさんず」
「やっとわかったか」
プーと頬をふくらませるロンにマカは胸をそらしてドヤ顔をする。
けど、このまま黙って引き下がるようなロンじゃない。
「はい、2人ともそこまで」
大きなケンカになる前に両手をパチンとうって、厳しい声をだした。
「うん? なるほど。
ここでオルガと言い争っても時間のムダだ。
ポポ。行くぞ」
私の言った事を自分に言われたとレオンはカン違いしてしまったようで、素早く私の手をとると凄いスピードで走りだす。
「おーおーさまーあ!
お待ちくださいーませ」
「待ってくれと言われて、待つバカがいるか」
背中から聞こえてくるオルガの声にレオンは弾むように笑うと、私をひくてに力をこめて、一気に私を横抱きにした。
「思えば、リオンも相当窮屈な思いをしてたんだろうな。
王という立場は色々と大変だ。
せめて、結婚相手ぐらい好きにさせてくれ」
頭からレオンの呟きがふってきたと同時に、頬にチュッとキスをされる。
「ヒューヒュー」
とマカとロンにからかわれながら、私達はいつのまにかウッソウとした森のような所にたどりついた。
「おかしいわね。
庭園の中にこんな所があったかしら」
レオンに優しく地面におろされた私はウーンと首を傾ける。
「なんだか、ここ気持ち悪いざんす」
「オイラもだ」
「たしかに陰気ね。はやく戻りましょう」
とクルリとキビスをかえした時だった。
奥の方から「きゃあああ。きゃあああ」と女の悲鳴がしたのは。
「たいへんよ。今すぐ行くかなくっちゃ」
あわてて彼女の元へ駆けつけた私は、一瞬呼吸をするのも忘れるぐらい驚いた。
だって、目の前に亡くなったはずのリオンとエリザがいたから。
お1人で出歩けるのは危険ですから、おやめ下さいといつも申しておりますのに」
庭園の茂みに備え付けられたベンチに2人で密着して座っていると、侍女長が血相をかえて走ってきた。
「ここは2人だけの秘密の場所だったのに、とうとうオルガに見つかってしまったわ」
ホーとため息をつく私にひっつめ髪のオルガが、キュッと眉をひそめる。
「すでに聖女様は王様の婚約者ではありません。
なので、そんな風にベタベタと、あっ、いえ。
もう少し距離をおいて、王様に接していただきたいのです」
「なら、ポポと婚約すれば文句はないのだろ。
では、ここでポポにプロポーズをするぞ」
レオンは悪戯っぽい色をうかべた瞳を私にむける。
「ポポ、ぜひオレの妻に……」
レオンが私の顎を手でもちあげて、甘い声でささやく。
と、同時にオルガがヒステリックに叫ぶ。
「なりません!王様。
『聖女は時の王と結婚すること』という掟が廃止されてから、レオン様には公爵家や他国の王族から縁談が殺到してるのですよ。
まずはほかの方々にもお会いしてから、その上で聖女様へのプロポーズをお考えくださいませ」
「その必要はない。
オレはポポ以外の女には興味がないから」
「相手に興味があるとかないとかの問題ではありません。
王様にとっての結婚は政治的意味が強い物なのですから」
「オレは政略結婚はしない。
たとえポポが捨て子だろうが、オレはポポを選ぶ。
家柄や血筋なんてどうでもいいんだ」
ここのところ毎日のように繰り返される話が、今日もまた始まった。
「こんなことなら、あの掟を廃止することなかったざんす」
「ロンはバカか。
そんなことを言ったら、頑張って廃止してくれたイワンに悪いだろう」
「はいはい。どうせワタクシはバカさんず」
「やっとわかったか」
プーと頬をふくらませるロンにマカは胸をそらしてドヤ顔をする。
けど、このまま黙って引き下がるようなロンじゃない。
「はい、2人ともそこまで」
大きなケンカになる前に両手をパチンとうって、厳しい声をだした。
「うん? なるほど。
ここでオルガと言い争っても時間のムダだ。
ポポ。行くぞ」
私の言った事を自分に言われたとレオンはカン違いしてしまったようで、素早く私の手をとると凄いスピードで走りだす。
「おーおーさまーあ!
お待ちくださいーませ」
「待ってくれと言われて、待つバカがいるか」
背中から聞こえてくるオルガの声にレオンは弾むように笑うと、私をひくてに力をこめて、一気に私を横抱きにした。
「思えば、リオンも相当窮屈な思いをしてたんだろうな。
王という立場は色々と大変だ。
せめて、結婚相手ぐらい好きにさせてくれ」
頭からレオンの呟きがふってきたと同時に、頬にチュッとキスをされる。
「ヒューヒュー」
とマカとロンにからかわれながら、私達はいつのまにかウッソウとした森のような所にたどりついた。
「おかしいわね。
庭園の中にこんな所があったかしら」
レオンに優しく地面におろされた私はウーンと首を傾ける。
「なんだか、ここ気持ち悪いざんす」
「オイラもだ」
「たしかに陰気ね。はやく戻りましょう」
とクルリとキビスをかえした時だった。
奥の方から「きゃあああ。きゃあああ」と女の悲鳴がしたのは。
「たいへんよ。今すぐ行くかなくっちゃ」
あわてて彼女の元へ駆けつけた私は、一瞬呼吸をするのも忘れるぐらい驚いた。
だって、目の前に亡くなったはずのリオンとエリザがいたから。
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