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52、船上の対決
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「おい。オレを食うと腹をこわすぞ。
食べるなら、あっちのチビにしろ」
上半身は人食いザメ、下半身は人間の魔物達にグルリと囲まれたリオンが叫んでいる。
「やっぱりリオンは正真正銘のクズ野郎だわ」
と変な感心をしていると、魔物達がいっせいにとびかかってきた。
「はやく消えなさい」
逃げようとした時、床につまずいてドスンと尻モチをついてしまった私が、呪文を唱えても魔物達はピクリともしない。
やっぱりレオンがいないと私の魔法は底辺なのだ。
モタモタしている間に魔物の数は激増し、船内は魔物で覆いつくされてしまう。
宰相や国の幹部は離れた陸の上で待機しているが、どうやら私達の異変には気がついていないようだ。
「その方がいいわ。
たとえ軍隊でもこの魔物には歯がたたないもの。
犠牲者は最小限にとどめないとね」
魔法で取り出した剣を振り回しながら、2度目の終わりを覚悟した。
「エリザ。さっきの言葉は本心じゃない。
やはりオレはオマエを愛している。
シュメール国なんて全部くれてやるから、オレの命だけは助けてくれ。頼む」
リオンはギザギザの歯を光らせた魔物に頭からのみこまれようとしていたが、エリザの一言で魔物達の動きが一斉に止まる。
「やめなさい。この男の最後は自分の手でくだすから」
エリザはリオンの上にツナのついた大きなアミをバサリと放ち、魚を引き上げるようにツナをグイグイと引き上げてゆく。
「結局エリザはオレを愛しているんだ」
リオンは網の中で高らかな笑い声をたてていたが、すぐにそれは罵声にかわる。
「エリザあー。やめろ! やめるんだ!
目が回るだろ!」
「フ、フフフ」
エリザは冷酷な微笑みを浮かべて、しばらくアミをグルグルと空中で回していたが、最後にポーンとそれを海に放り投げた。
「ぎゃああああああああーーー」
悲鳴をあげながらリオンは、白く渦をまく海へあっという間に沈んでゆく。
「これで終わりね。
私は少し疲れたから、ポポはソッチにまかせるわ」
エリザの言葉が終わるやいなや、眼光を鋭く光らせた魔獣達が私に飛びかかってきた。
「あーあ、最後にもう1度、レオンに会いたかったなー」
目を閉じて、覚悟を決めた時だった。
「オレ達はこれからも一緒に生きるんだ!」
背後からレオンの力強い声がとんでくる。
「ポポ。遅れてすまない」
「レオン、どーして、どーしてここにいるの」
「マカが閉じ込められていた部屋の扉を、水魔法でぶっとばしてくれたんだ」
「部屋の場所をつきとめたのはオイラじゃなくてロンだけどな」
「ワタクシは頭脳派ざんすからね」
「ありがとう。本当にありがとう。
いつでもどんな時でも私を守ってくれて。
2度目があるのも、きっとマカとロンのおかげなのよね」
フワフワと宙に飛んでいるチビ達を両手で抱きしめながら、ポロポロと涙をこぼした。
「ウザい親友ごっこはやめなさいよ。
それよりわかっているの?
自然の摂理にそむいて生きているポポは、大罪を犯しているってことを。
こんな女、やっぱり私が処分しなくちゃいけないわ」
リオンのように?
悪いけど、私はもう負ける気がしない。
だって、私の隣にはレオンがいてくれるから。
「レオン、愛しているわ」
「ポポ、オレもだ」
「ありがとう」
私はギュッとレオンの大きな手を握ると、「ここから消えなさい」とエリザに強く命令する。
とたんにエリザと魔物達の姿がプツンとかき消えたのだ。
「ポポ、よくやったな」
「レオンが隣にいてくれたからよ」
さっきまでの騒動が嘘だったように静寂を取り戻した船上で、私達はどちらからともなく抱きあい、熱いキスを何度もかわした。
食べるなら、あっちのチビにしろ」
上半身は人食いザメ、下半身は人間の魔物達にグルリと囲まれたリオンが叫んでいる。
「やっぱりリオンは正真正銘のクズ野郎だわ」
と変な感心をしていると、魔物達がいっせいにとびかかってきた。
「はやく消えなさい」
逃げようとした時、床につまずいてドスンと尻モチをついてしまった私が、呪文を唱えても魔物達はピクリともしない。
やっぱりレオンがいないと私の魔法は底辺なのだ。
モタモタしている間に魔物の数は激増し、船内は魔物で覆いつくされてしまう。
宰相や国の幹部は離れた陸の上で待機しているが、どうやら私達の異変には気がついていないようだ。
「その方がいいわ。
たとえ軍隊でもこの魔物には歯がたたないもの。
犠牲者は最小限にとどめないとね」
魔法で取り出した剣を振り回しながら、2度目の終わりを覚悟した。
「エリザ。さっきの言葉は本心じゃない。
やはりオレはオマエを愛している。
シュメール国なんて全部くれてやるから、オレの命だけは助けてくれ。頼む」
リオンはギザギザの歯を光らせた魔物に頭からのみこまれようとしていたが、エリザの一言で魔物達の動きが一斉に止まる。
「やめなさい。この男の最後は自分の手でくだすから」
エリザはリオンの上にツナのついた大きなアミをバサリと放ち、魚を引き上げるようにツナをグイグイと引き上げてゆく。
「結局エリザはオレを愛しているんだ」
リオンは網の中で高らかな笑い声をたてていたが、すぐにそれは罵声にかわる。
「エリザあー。やめろ! やめるんだ!
目が回るだろ!」
「フ、フフフ」
エリザは冷酷な微笑みを浮かべて、しばらくアミをグルグルと空中で回していたが、最後にポーンとそれを海に放り投げた。
「ぎゃああああああああーーー」
悲鳴をあげながらリオンは、白く渦をまく海へあっという間に沈んでゆく。
「これで終わりね。
私は少し疲れたから、ポポはソッチにまかせるわ」
エリザの言葉が終わるやいなや、眼光を鋭く光らせた魔獣達が私に飛びかかってきた。
「あーあ、最後にもう1度、レオンに会いたかったなー」
目を閉じて、覚悟を決めた時だった。
「オレ達はこれからも一緒に生きるんだ!」
背後からレオンの力強い声がとんでくる。
「ポポ。遅れてすまない」
「レオン、どーして、どーしてここにいるの」
「マカが閉じ込められていた部屋の扉を、水魔法でぶっとばしてくれたんだ」
「部屋の場所をつきとめたのはオイラじゃなくてロンだけどな」
「ワタクシは頭脳派ざんすからね」
「ありがとう。本当にありがとう。
いつでもどんな時でも私を守ってくれて。
2度目があるのも、きっとマカとロンのおかげなのよね」
フワフワと宙に飛んでいるチビ達を両手で抱きしめながら、ポロポロと涙をこぼした。
「ウザい親友ごっこはやめなさいよ。
それよりわかっているの?
自然の摂理にそむいて生きているポポは、大罪を犯しているってことを。
こんな女、やっぱり私が処分しなくちゃいけないわ」
リオンのように?
悪いけど、私はもう負ける気がしない。
だって、私の隣にはレオンがいてくれるから。
「レオン、愛しているわ」
「ポポ、オレもだ」
「ありがとう」
私はギュッとレオンの大きな手を握ると、「ここから消えなさい」とエリザに強く命令する。
とたんにエリザと魔物達の姿がプツンとかき消えたのだ。
「ポポ、よくやったな」
「レオンが隣にいてくれたからよ」
さっきまでの騒動が嘘だったように静寂を取り戻した船上で、私達はどちらからともなく抱きあい、熱いキスを何度もかわした。
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