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47、希望の2人
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それから数日がたった時だった。
「おい。ポポ。
今からドブネズミ達の村へ行くんだろ。
なら、この私も同行するぞ。
ありがたく思え」
と、馬車に乗り込もうとしている私の背後から、リオン王の声がしたのは。
とたん手首にムズムズした痒みがおこる。
「やっぱりジンマシンができてる。
これって1度目より、リオンの不気味さがパワーアップしてるからよね」
赤くはれた手首に視線を移して、盛大に顔をしかめた。
「なにをブツブツ一人で言ってる。
オレと一緒に出かけるのが、喜しくてしかたないって顔だな」
リオンはそう言うと、満足そうに口角を上げた。
やっぱりダメだ。この人。
自分中心にしか、物事が見えてない。
「王様。
村人の事をドブネズミ呼ばわりするのは、やめた方がいいんじゃない」
「安心しろ。アイツらの前では言わない」
王は先に座っていた私の隣に腰をおろすと、私の肩に手を回す。
もうー。毎日のように「あっち行って」オーラを発動しているのに、どーしてわからないのかな。
「なぜ急についてくる事にしたんですか?
いつも、『結界が破壊しかけている村なんか、恐ろしくて行けるか』って言ってるのに」
こんなヤツに礼儀をとるのがバカらしくなって、タメ口になる。
「それは人気取りのためだ」
「人気取り?
役者でもないのに」
「ああそうだ。
宰相によれば、オレの評判は地の底に落ちているらしいな。
だから、これからは頻繁に村へ出向き、聖女に結界補修の命令をだすんだ。
そうすれば、ヤツラにもわかるだろう。
国で1番偉いのはオレだってことが」
「はあー、バカらしい」
長いため息をついていると、突然頬に柔らかい物がふれた。
「もーう、勝手にキスなんかしないでよ!」
「本当は喜しいって、顔にかいているぞ。
実はな。
最近、オマエの事を占い師に相談した」
「で、その占い師はなんて答えたの?」
「オマエはオレの気をひくために、護衛騎士の事を好きなフリをしている、と断言した」
「その占い師は偽物ね」
「ポポ、もう芝居はよすんだ」
「芝居じゃないって」
「幸いここには、オレとオマエしかいない。
村へつくまで、十分可愛がってやるぞ」
リオンは強引に私の身体をひきよせて、唇にキスをしようとした。
「あとでレオンが知ったら、どんな顔をするか楽しみだな」
とリオンが私の顎を持ち上げた時だ。
「う、うわ! 腹が痛い」
リオンが、両手でお腹をおさえてうずくまったのは。
「どうしたの!」
額に脂汗をにじますリオンにオロオロしていると、目の前にマカとロンが姿を現した。
「心配すんなよ。ポポ。
アイツの腹はすぐになおる。
オイラ達が王の食べ物に、ちょっと悪戯をしただけだから」
「そうざんす。
王宮の厨房にいる精霊と仲良くなって、協力してもらったの。
皆、ワガママばっかり言う王様が大嫌いだから、喜んでやってくれたざんすよ」
フワフワと宙を泳ぎながら、ドヤ顔をするマカとロン。
「最近、姿が見えないと思ってたらそんな事を企んでいたのね。
2人ともグッショブ」
私は2人にニッコリする。
けど、そこからがまた大変だったの。
集められた村人の前で、私がやらかしたから。
「私はこの国の王である。
今日は村を救う為に、部下である聖女を連れてきた。
さあ、聖女。
この結界を甦らせるんだ」
豪華な衣装を着たリオン王が盛大に声をはりあげると、私はいつものように消えかけの結界に大きく指を振った。
けど、不思議。
結界には何の変化も起こらなかったのだ。
「聖女様。どうしたずらか」
と、村人達は首を傾げた。
「すいません。
私はやはり、レオン護衛騎士がいないと魔力が発揮できないみたいです。
すぐに彼とうかがいますから、今日は許してください」
私は村人にペコリと頭を下げた。(リオンはこっそり馬車に帰っていたわ)
それから、次の日。
レオンと村を訪れ、無地結界を再生させた。
「ありがたや。ありがたや。
お2人はこの国の希望ずら!」
村人が叫んだ言葉を、イワンやイワンの仲間が国中に拡散させたから、私達はいつしか「希望の2人」と
呼ばれるようになったの。
「おい。ポポ。
今からドブネズミ達の村へ行くんだろ。
なら、この私も同行するぞ。
ありがたく思え」
と、馬車に乗り込もうとしている私の背後から、リオン王の声がしたのは。
とたん手首にムズムズした痒みがおこる。
「やっぱりジンマシンができてる。
これって1度目より、リオンの不気味さがパワーアップしてるからよね」
赤くはれた手首に視線を移して、盛大に顔をしかめた。
「なにをブツブツ一人で言ってる。
オレと一緒に出かけるのが、喜しくてしかたないって顔だな」
リオンはそう言うと、満足そうに口角を上げた。
やっぱりダメだ。この人。
自分中心にしか、物事が見えてない。
「王様。
村人の事をドブネズミ呼ばわりするのは、やめた方がいいんじゃない」
「安心しろ。アイツらの前では言わない」
王は先に座っていた私の隣に腰をおろすと、私の肩に手を回す。
もうー。毎日のように「あっち行って」オーラを発動しているのに、どーしてわからないのかな。
「なぜ急についてくる事にしたんですか?
いつも、『結界が破壊しかけている村なんか、恐ろしくて行けるか』って言ってるのに」
こんなヤツに礼儀をとるのがバカらしくなって、タメ口になる。
「それは人気取りのためだ」
「人気取り?
役者でもないのに」
「ああそうだ。
宰相によれば、オレの評判は地の底に落ちているらしいな。
だから、これからは頻繁に村へ出向き、聖女に結界補修の命令をだすんだ。
そうすれば、ヤツラにもわかるだろう。
国で1番偉いのはオレだってことが」
「はあー、バカらしい」
長いため息をついていると、突然頬に柔らかい物がふれた。
「もーう、勝手にキスなんかしないでよ!」
「本当は喜しいって、顔にかいているぞ。
実はな。
最近、オマエの事を占い師に相談した」
「で、その占い師はなんて答えたの?」
「オマエはオレの気をひくために、護衛騎士の事を好きなフリをしている、と断言した」
「その占い師は偽物ね」
「ポポ、もう芝居はよすんだ」
「芝居じゃないって」
「幸いここには、オレとオマエしかいない。
村へつくまで、十分可愛がってやるぞ」
リオンは強引に私の身体をひきよせて、唇にキスをしようとした。
「あとでレオンが知ったら、どんな顔をするか楽しみだな」
とリオンが私の顎を持ち上げた時だ。
「う、うわ! 腹が痛い」
リオンが、両手でお腹をおさえてうずくまったのは。
「どうしたの!」
額に脂汗をにじますリオンにオロオロしていると、目の前にマカとロンが姿を現した。
「心配すんなよ。ポポ。
アイツの腹はすぐになおる。
オイラ達が王の食べ物に、ちょっと悪戯をしただけだから」
「そうざんす。
王宮の厨房にいる精霊と仲良くなって、協力してもらったの。
皆、ワガママばっかり言う王様が大嫌いだから、喜んでやってくれたざんすよ」
フワフワと宙を泳ぎながら、ドヤ顔をするマカとロン。
「最近、姿が見えないと思ってたらそんな事を企んでいたのね。
2人ともグッショブ」
私は2人にニッコリする。
けど、そこからがまた大変だったの。
集められた村人の前で、私がやらかしたから。
「私はこの国の王である。
今日は村を救う為に、部下である聖女を連れてきた。
さあ、聖女。
この結界を甦らせるんだ」
豪華な衣装を着たリオン王が盛大に声をはりあげると、私はいつものように消えかけの結界に大きく指を振った。
けど、不思議。
結界には何の変化も起こらなかったのだ。
「聖女様。どうしたずらか」
と、村人達は首を傾げた。
「すいません。
私はやはり、レオン護衛騎士がいないと魔力が発揮できないみたいです。
すぐに彼とうかがいますから、今日は許してください」
私は村人にペコリと頭を下げた。(リオンはこっそり馬車に帰っていたわ)
それから、次の日。
レオンと村を訪れ、無地結界を再生させた。
「ありがたや。ありがたや。
お2人はこの国の希望ずら!」
村人が叫んだ言葉を、イワンやイワンの仲間が国中に拡散させたから、私達はいつしか「希望の2人」と
呼ばれるようになったの。
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