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45、真夜中のデート リオン視点

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「え?
 今日中に5つの村の結界を張りなおすのですか!」

 ポポが丸い目をより丸くして、飛び上がりそうな勢いで叫んだ。

「そうだ」

 宝石が散りばめられた玉座にすわり、オレはまっすぐにポポを見据すえる。

「おそれながら、王様。
 1から結界をつくるよりはマシだとはいえ、結界を張り直すのにも相当な魔力を消耗します。
 ベテランの聖女でも、せいぜい1日に3つが限界でしょう。
 昨日ポポ聖女は100匹の魔獣退治をしたばかりです。
 今日は少し休ませた方がよろしいのではないでしょうか」

「黙れ。サー教皇。
 教皇がそうやって甘やかすから、『護衛騎士はレオンじゃないと魔力が発揮できない』などとワガママを
言うのだぞ!」

「はあ。
 真に申し訳ございません」

 フフフ。オレがちょっと厳しい視線を向けただけで、サー教皇は首をうなだれて、クソ生意気な言葉をひっこめた。

 それでいい。

 何しろ、オレ様はこの国の偉大な王なのだから。

「おい。ポポ。
 仕事を減らしてほしいなら、その男をそばに置くのをやめろ」

「それはできません。
 私、レオンがいてくれるから、頑張れるんです」

「どうして、そんなにその男に執着するんだ!」

「どうしてって」
とポポはポカンと口をあけて、首を傾ける。

 その顔は「そんな事もわからないの? この鈍感男」っと言っているようで、無性にイライラした。

 そんなもん。

 オレだってわかっとるわい。

「それは私はレオンが大好きだからです」
とポポは頬を真っ赤にそめる。

 オレの前で他の男への愛を語るとは、いー根性だな。

 怒涛のようにわきおこる怒りを必死でこらえていたが、どーしても全身がワナワナと震えてしまう。

「なーるほどな。
 よりによって、私の影に惚れるとは悪趣味な女だ。
 だが、忘れるなよ。
 この国には『聖女と王は結婚する』という掟があることをな。
 まったく、オレにとっても迷惑な話だ。
 よりにもよって、こんな出来損ない聖女を妻にめとらされるとはな」

 オレの鋭い指摘がきいたのだろう。

 しばらくポポはうつむいて、身体をかたまらせていた。

 そーだ。よく考えろ。しょせんレオンはオレの影。どんなに惚れようが、オマエはオレの物になるしかないのだ。

   屈服するなら、早い方が利口だぞ。

 まあ、反省するなら可愛がってやってもいいか。と唇の端をゆるめた時だった。

「なら、そんな掟ナシにしましょーよ。
 そうすれば、王様と私。
どっちも最愛の人と一緒になれるもの。
 ね。いい考えでしょ」
とポポが胸の前でパチンと両手を叩き、顔を輝かせたのは。

「聖女はバカなのか!
  アホなのか!
  マヌケなのか!
 国の掟はそう簡単に変えれないのだ」

 オレは荒々しく立ち上がると、マントをひるがえして部屋を立ち去った。

 認めたくはないが。

  オレはレオンがいないと魔力使えないとほざく、出来損ない聖女が好きなのだろう。

 けど、アイツは隙あればレオンとイチャイチャしようとしている。

 今だってそうだ。

  2人で真夜中の庭園で何をしていることやら。

 あー、想像すると発狂しそうだった。

 気を静めようと、部屋の窓から空を見上げた時だった。

 シューと光の線を描いて、視線の先を流れ星が走ってゆく。

「あんなバカ女の事なんか忘れさせろ」
 と、オレは星に命令したのだ。
 

 


 
 

 



 



 
 

 
 
 
 




 





 
 
 
 

 
 

 
 

 
 
 



 

 

 
 
 
 
 

 
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