43 / 61
43、嫌味なリオン リオン視点
しおりを挟む
「聞くところによると、その女は火災にやられた市場を魔法でアッという間に元どおりにしたらしいな。
その強い魔力をオレの為に利用しない手はない。
まずは消えかけている結界の再生をさす。
それから、…」
豪華な自室でポポという町女の到着を待っていたオレは、ここまで言うとげんなりして、グラスを握る手に力をこめた。
「王様どうされました」
テーブルに向かい合って座っていたマッチン宰相が、ピカピカに頭を光らせながらオレの顔をのぞきこむ。
「なーに。
王は聖女と結婚する、という掟を思い出してゲンナリしただけだ。
ポポは市場で働いていたという。
どうせデリカシーのない、デブ女だろう」
オレはイライラして、テーブルの上に置かれた酒瓶を口元へよせると一気に飲みほす。
「ひえー。口のみとははしたない。
周囲に私しかいないとは言え、もうすこし王様らしくふるまったらいかがですかね」
「だまれ。マッチン。
オレだって、たまには王という仮面をはぎたくなるんだ」
「御意。私の前ではお好きなだけ本性をおだしください。
ですが、聖女さまとの結婚は義務ですぞ。
まぬがれることはできません。
聖女が持っている魔力を、王族に残すためですからな。
たとえ、相手がデブだろうが性悪だろうが肌がブツブツだろうがです!」
宰相はそう言うと、ガハハハッと大きな腹をゆさぶりながら笑った。
「勝手にほざいてろ」
と拳でテーブルを叩いたと同時に扉がノックされる。
「ほー。
どうやら国の道具が到着したようだな」
「入室を許可する」と威厳にみちた声をあげ立ち上がると、目の前にまだ少女のような女が現れたのだ。
「は、初めまして。ポポと申します。
こ、このたびはお招きにあずかり、た、た、大変光栄です!」
ポポはどたどしい挨拶を述べると、ペコンと大きく頭を下げた。
見たところ、ものすごく緊張しているようだ。
しかたないな。市場の中には、オレのような洗練された美しい男はいないだろうから、とポポに視線を移した時だった。
キュンと心臓がうずき、思わず胸を手でおさえる。
こんな事は初めてだ。
ひょっとしたら、ポポがもってきた菌に感染して、悪い病にかかったのかもしれない。
この女、ぶっ殺してやる。とポポを睨みつけた時だった。
バチンと視線がぶつかり、その瞬間電流が身体中をかけめぐる。
ーななな、なんて可愛いんだー
脳内ではカランカランと鐘の音が高らかになり響いた。
キョトンとしてこちらを見つめるポポの清純な魅力に、オレは萌えていたのだ。
「王は聖女と結婚する」という掟も考えてみれば悪くはないな、そう考え直した時だった。
「なぜだ!
なぜ、こんなところにレオンがいるんだ」
ポポとしっかりと手を繋ぎ、ポポの隣に立っている男に声をあらげた。
レオンはオレの影のくせに、常にオレよりも上をいく邪魔くさい男だ。
貴族学校の成績もそうだったし。
オレの身代わりでいった公務も、オレよりも上手くこなすし。
今度はポポにとりいり、一体何をたくらんでいるのか。
「なーるほどな、これが噂のポポか。
オマエが入ってくるなり異臭がしたのは、死にぞこないの隣の男のせいだろう。
しかし、市場の娘風情が聖女とは驚いたぞ」
胸の奥からわきあがった黒い感情に支配されたオレは、2人に格の違いを見せつけるように真っ白な王のマントをひるがえしたのだ。
その強い魔力をオレの為に利用しない手はない。
まずは消えかけている結界の再生をさす。
それから、…」
豪華な自室でポポという町女の到着を待っていたオレは、ここまで言うとげんなりして、グラスを握る手に力をこめた。
「王様どうされました」
テーブルに向かい合って座っていたマッチン宰相が、ピカピカに頭を光らせながらオレの顔をのぞきこむ。
「なーに。
王は聖女と結婚する、という掟を思い出してゲンナリしただけだ。
ポポは市場で働いていたという。
どうせデリカシーのない、デブ女だろう」
オレはイライラして、テーブルの上に置かれた酒瓶を口元へよせると一気に飲みほす。
「ひえー。口のみとははしたない。
周囲に私しかいないとは言え、もうすこし王様らしくふるまったらいかがですかね」
「だまれ。マッチン。
オレだって、たまには王という仮面をはぎたくなるんだ」
「御意。私の前ではお好きなだけ本性をおだしください。
ですが、聖女さまとの結婚は義務ですぞ。
まぬがれることはできません。
聖女が持っている魔力を、王族に残すためですからな。
たとえ、相手がデブだろうが性悪だろうが肌がブツブツだろうがです!」
宰相はそう言うと、ガハハハッと大きな腹をゆさぶりながら笑った。
「勝手にほざいてろ」
と拳でテーブルを叩いたと同時に扉がノックされる。
「ほー。
どうやら国の道具が到着したようだな」
「入室を許可する」と威厳にみちた声をあげ立ち上がると、目の前にまだ少女のような女が現れたのだ。
「は、初めまして。ポポと申します。
こ、このたびはお招きにあずかり、た、た、大変光栄です!」
ポポはどたどしい挨拶を述べると、ペコンと大きく頭を下げた。
見たところ、ものすごく緊張しているようだ。
しかたないな。市場の中には、オレのような洗練された美しい男はいないだろうから、とポポに視線を移した時だった。
キュンと心臓がうずき、思わず胸を手でおさえる。
こんな事は初めてだ。
ひょっとしたら、ポポがもってきた菌に感染して、悪い病にかかったのかもしれない。
この女、ぶっ殺してやる。とポポを睨みつけた時だった。
バチンと視線がぶつかり、その瞬間電流が身体中をかけめぐる。
ーななな、なんて可愛いんだー
脳内ではカランカランと鐘の音が高らかになり響いた。
キョトンとしてこちらを見つめるポポの清純な魅力に、オレは萌えていたのだ。
「王は聖女と結婚する」という掟も考えてみれば悪くはないな、そう考え直した時だった。
「なぜだ!
なぜ、こんなところにレオンがいるんだ」
ポポとしっかりと手を繋ぎ、ポポの隣に立っている男に声をあらげた。
レオンはオレの影のくせに、常にオレよりも上をいく邪魔くさい男だ。
貴族学校の成績もそうだったし。
オレの身代わりでいった公務も、オレよりも上手くこなすし。
今度はポポにとりいり、一体何をたくらんでいるのか。
「なーるほどな、これが噂のポポか。
オマエが入ってくるなり異臭がしたのは、死にぞこないの隣の男のせいだろう。
しかし、市場の娘風情が聖女とは驚いたぞ」
胸の奥からわきあがった黒い感情に支配されたオレは、2人に格の違いを見せつけるように真っ白な王のマントをひるがえしたのだ。
0
お気に入りに追加
174
あなたにおすすめの小説
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
【コミカライズ決定】婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です
灰銀猫
恋愛
両親と妹にはいない者として扱われながらも、王子の婚約者の肩書のお陰で何とか暮らしていたアレクシア。
顔だけの婚約者を実妹に奪われ、顔も性格も醜いと噂の辺境伯との結婚を命じられる。
辺境に追いやられ、婚約者からは白い結婚を打診されるも、婚約も結婚もこりごりと思っていたアレクシアには好都合で、しかも婚約者の義父は初恋の相手だった。
王都にいた時よりも好待遇で意外にも快適な日々を送る事に…でも、厄介事は向こうからやってきて…
婚約破棄物を書いてみたくなったので、書いてみました。
ありがちな内容ですが、よろしくお願いします。
設定は緩いしご都合主義です。難しく考えずにお読みいただけると嬉しいです。
他サイトでも掲載しています。
コミカライズ決定しました。申し訳ございませんが配信開始後は削除いたします。
転生聖女のなりそこないは、全てを諦めのんびり生きていくことにした。
迎木尚
恋愛
「聖女にはどうせなれないんだし、私はのんびり暮らすわね〜」そう言う私に妹も従者も王子も、残念そうな顔をしている。でも私は前の人生で、自分は聖女になれないってことを知ってしまった。
どんなに努力しても最後には父親に殺されてしまう。だから私は無駄な努力をやめて、好きな人たちとただ平和にのんびり暮らすことを目標に生きることにしたのだ。
女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」
行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。
相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。
でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!
それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。
え、「何もしなくていい」?!
じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!
こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?
どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。
二人が歩み寄る日は、来るのか。
得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?
意外とお似合いなのかもしれません。笑
【完結】経費削減でリストラされた社畜聖女は、隣国でスローライフを送る〜隣国で祈ったら国王に溺愛され幸せを掴んだ上に国自体が明るくなりました〜
よどら文鳥
恋愛
「聖女イデアよ、もう祈らなくとも良くなった」
ブラークメリル王国の新米国王ロブリーは、節約と経費削減に力を入れる国王である。
どこの国でも、聖女が作る結界の加護によって危険なモンスターから国を守ってきた。
国として大事な機能も経費削減のために不要だと決断したのである。
そのとばっちりを受けたのが聖女イデア。
国のために、毎日限界まで聖なる力を放出してきた。
本来は何人もの聖女がひとつの国の結界を作るのに、たった一人で国全体を守っていたほどだ。
しかも、食事だけで生きていくのが精一杯なくらい少ない給料で。
だがその生活もロブリーの政策のためにリストラされ、社畜生活は解放される。
と、思っていたら、今度はイデア自身が他国から高値で取引されていたことを知り、渋々その国へ御者アメリと共に移動する。
目的のホワイトラブリー王国へ到着し、クラフト国王に聖女だと話すが、意図が通じず戸惑いを隠せないイデアとアメリ。
しかし、実はそもそもの取引が……。
幸いにも、ホワイトラブリー王国での生活が認められ、イデアはこの国で聖なる力を発揮していく。
今までの過労が嘘だったかのように、楽しく無理なく力を発揮できていて仕事に誇りを持ち始めるイデア。
しかも、周りにも聖なる力の影響は凄まじかったようで、ホワイトラブリー王国は激的な変化が起こる。
一方、聖女のいなくなったブラークメリル王国では、結界もなくなった上、無茶苦茶な経費削減政策が次々と起こって……?
※政策などに関してはご都合主義な部分があります。
石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど
ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。
でも私は石の聖女。
石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。
幼馴染の従者も一緒だし。
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる