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40、再び王宮へ

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「ポポ様はご在宅でしょうか?
  私は王の使者です。
 夜分に大変申し訳ありませんが、王命でお迎えに参りました」
 
 男の声とともに、玄関の扉がドンドンと大きな音をたてている。

「たいへん、レオン起きて!
 もう使者がきたわ」

 2階のレオンのベッドの中で寝ていた私は、パチリと目を開くと隣にいるレオンの肩をゆさぶった。

「夜中の訪問とはさすがに驚いたな。
 聖女のいないせいで、国のあちこちの結界がほころんでいると聞いてはいたが。
 リオンもかなり焦っているようだ」

 レオンはベッドから跳ね起き、寝巻きを脱いでサッサと身支度を始める。

「さすが騎士ね。
 さっきまで寝息をたてて眠っていたのに、仕事がはやいわ」

 ベッドに橫たわったまま、レオンの裸の背中に熱っぽい視線をおくった。

「あれはタヌキ寝入りなんだ。
 正直に言うと、一晩中オレはまともに眠れていない」

「えー、ダメじゃない。
 火事騒ぎで疲れているでしょ。ちゃんと休まないといけないわ」

「そう言われても、オレも一応男だから。
 好きな女が隣で寝ていたら、その色々と不都合があって…」

 最後の方はまるで聞き取れなかったけど、要するに私が邪魔をしたようね。

「ごめんなさい。
 今夜は手をつないで一緒に眠りたいなんて、ワガママを言ってしまって」

 眉根を下げて起き上がると、レオンの背中に両手を回してギュッとする。

 レオンの鍛えられて裸身から、温かな体温が感じられた。

「まさか言葉通り、本当に手をつないで寝るだけとは思わなかった。
 期待したオレがバカだったんだ」

 私に言ったというより、独り言のような言葉がかえってくる。

「え? それってどういう意味なの?」
と、とまどっていると今度ははっきりとした声が耳にとどく。

「なんでもない。さっきの言葉は気にしなくていい。
 ポポのそういう、ちょっとずれた所もたまらなく可愛いな」

「そんな可愛いだなんて」

 レオンの口からつむがれる「可愛い」は何度聞いてもなれなくて、頬を真っ赤に染めたしまう。

「本当の事を言ってるだけだ。
 オレはお世辞とか苦手だから」

「そうなのね。
 ありがとう」

 そう言ってうつむくと、ふりかえったレオンにチュッと唇に軽くキスをされる。

 その瞬間、チラリと割れた腹筋が視線にとびこんできて鼻血がでそうになったなんて、死んでも言えない。

「教えてくれ。
 ポポはどーしてそんなに可愛いんだ?」

「レオンこそ、どーしてそんなに素敵なの?」

 甘えた声をだして、唇をすぼめた時だった。

「もーう、またイチャイチャしちゃてさ!」

 背後からマカとロンの大声が耳をつんざく。

「あんた達、いつのまに2階に上がってきたのよ」

 あんなシーンを見られたのだ。

 さすがに恥ずかしくて、声をあらげる。

「今さっき。
 王の使者がうるさくて、眠れないんだもん。なー」

 マカとロンは同時に言うと顔を見合わせて。

「そうだったわ。
 わかった、すぐに使者に会いにゆく。
 レオンも一緒にきてくれるわね」

「もちろんそのつもりだ。
 身支度はすでに整っている。
 後はポポにまかせた」

 すでに騎士服に着替えたレオンが私に目で合図をおくってきた。

「了解よ」

 私は意を決したようにコクリとうなずくと、レオンを見上げて呪文をとなえる。

 とたんにレオンの金髪は黒髪へ。

 碧眼は鋭い琥珀色の瞳へと変わった。

「これはこれで素敵よ。レオン。
 では王宮まで同行願います。
 私の護衛騎士様」

 ちょっとおどけてカーテシーをとってみると、
「死ぬまで私にあなたをお守りさせてください」
て、レオンがひざまずいて頭をたれる。

「レオンもけっこうノリノリね」

「いや、これはマジだ」

 レオンは私の手をとり、甲にキスをおとす。

 こんなに力強い味方がいるんだもん。

 王宮暮らしもこわくないわ!

 

 

 
 
 
 
 





 

 




 
 



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