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23、お覚悟を リオン視点
しおりを挟む王家にとって双子の弟など、争いの種でしかないのなのだろう。
オレは生まれてすぐに、王宮専属の魔道士パメラに預けられた。
パメラに姿かえの魔法をかけられて育ったオレは、リオン王の護衛騎士として働いている。
なのに年に何回は公務にかりだされた。
ワガママをいって動かないリオン王の代わりとしてだ。
「双子の弟がいてくれたおかげで、オレは楽ができるというものだ。
めんどくさい仕事は全部、オマエに任せられるからな。
ギャハハハハ。
オレはなんてラッキーなんだ」
その度に元の姿にもどされたオレを見て、リオンは見下したように笑った。
それは決して気持ちのいいものじゃない。
それでも、オレはオレの宿命をうけいれようと必死に努力した。
なのに兄がオレの命を、密かに狙っていたとは。
真実を知ったオレは、2度と王宮なんかに戻りたくなかった。
かといって、他に頼るところもない。
しかたなく、ポポの家に世話になっている。
ポポは市場で小さな菓子屋を営んでいて、その暮らしは王宮の煌びやかさとはほど遠い。
なのにオレはここで癒やされつつある。
その理由の1つは幼い(本人は自分たちは精霊で年齢は1000歳をこえる、と言い張っているが)マカとロンの存在だろう。
「オイラ、今夜もレオンと一緒に寝たい。
レオンから色々な話を聞きたいんだ!」
青い半パンツをはいたマカは、オレの顔をみるたび指をくわえておねだりしてくる。
「ワタクシもよ。
ベッドでレオンのたくさんの戦いの話を聞くのは、どんな物語を読むより楽しいざますから」
ざますって、オマエはどこのオバサマだ。ってつっこみをいれたくなる言い方はロン。
2人とも毎日、こんな風にオレにまとわりついてきた。
子供は大嫌いだ。ったはずなのに2人にはなぜか優しい気持ちになってしまうんだな。
「そうか。
オレみたいな口下手な話を面白がるのは、マカとロンぐらいだぞ。
変わった趣味だな。
しかたない。今日もオレのベッドにこい」
とその日も快く首を縦にふったのだ。
そして、翌日。
「もう、マカとロンったら。
またレオンの部屋で寝てたのね。
このところ毎日のようにレオンにひっつきまわっているけど、ワガママ言ってレオンを困らせたらダメだからね」
マカとロンを両腕にかかえて朝食にやってきたオレを見たポポは、突然プッと吹き出したのだ。
「おかしいんじゃなくて、両腕に子供をかかえたレオンが、すっごく可愛い!」
そしてこんな言い訳を口にすると、みるみる頬を真っ赤にそめてゆく。
「な、なんだと。
王宮で1番強い騎士のオレがすっごく可愛いだと」
ポポのあまりに想定外の言葉にあきれかえった。
その瞬間きっと理性も手放してしまったに違いない。
決して本心を見せようとしない貴婦人達とまるで違うポポが可愛すぎて、発狂しそうになってしまったからだ。
今まで感じた事のない感情が、一気に胸にあふれてくる。
「そうだ。たしか、キッチンの小麦粉がたいぶ少なくなっていたようだ。
忘れないうちに物置から運んでこよう」
オレは心の動揺をさとられないように、あわててポポに背を向けた。
「なら、レオン。
2袋持ってきて欲しいの。
明日、孤児院に持っていくにこにこ焼きをやくつもりだから」
背中からポポの声がする。
「了解!」
ポポに背を向けたままで片手をあげた。
心の中で、「うおおお。ポポは天使の生まれかわりに違いないぞ」ともだえながら。
気取った貴族の女達に比べて、ポポは大食いだし、すぐに泣いたり怒ったりする。
おまけに1度目の人生ではね、とわけのわからない話はするし。
(ひょっとして頭が少し足りないのだろうか)
でも、弱い者には誰よりも優しい。
「まさかオレはポポが好きなのか!」
物置で小麦粉を肩にかついだ瞬間、大切な事に気がつき驚きの声をあげたのだ。
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