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22、お覚悟を

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「おはよう。ポポ」

 テーブルの上に朝食を並べていたら、頭からレオンの男らしい声がふってきた。

 現在、レオンはわが家の2階で寝泊まりしている。

「もう、マカとロンったら。
 またレオンの部屋で寝てたのね。
 このところ毎日のようにレオンにひっつきまわっているけど、ワガママ言ってレオンを困らせたらダメだからね」

 そう言って、レオンを見上げたとたんプッと吹き出してしまう。

「なんだ。一体オレのどこがおかしいんだ」

 レオンはムッとしたような声をだすと、眉間をよせた。

 女に(しかも自分よりかなりバカそうな)笑われて、プライドが傷ついたのかな。

 さっすが石頭の騎士様ね。 

「おかしいんじゃなくて。
 両腕に子供をかかえたレオンが……」

 そこまで言って口ごもっていると、いっそう険しい顔になったレオンがとがった声でせめてくる。

「両腕に子供をかかえたオレがなんなんだ」

「えーと。そのう。あのう」

「ぐずぐずせずに、はっきり言ってくれ」

「わかったわ。
 両腕に子供をかかえたレオンが、すっごく可愛い!」

 言葉にしたとたん、自分でも頬がみるみる赤く染まってゆくのがわかった。 

「な、なんだと。
 王宮で1番強い騎士のオレがすっごく可愛いだと」

 レオンは素っ頓狂な声をだすと、一瞬でかたまってしまう。

「わーい。わーい。
 2人とも顔が真っ赤っか。真っ赤っか」

 マカはレオンの腕からするりとぬけると、私達をはやしたてながら部屋をグルグルと楽しそうに走り回る。 

「もう。男の子ってやんちゃで困るわね。
 レオン。気にしないでちょうだい」

 恥ずかしくてうつむいた瞬間、今度はレオンの腕の中でロンがとんでない事を口にした。

「こういう場合、次はチューがくるざんす。
 ポポ。
 目を閉じて唇をすぼめるのよ」 

「こらあ、ロン。
 大人をからかうと朝ご飯はぬきだからね」

 これ以上この話にからんでいてもロクなことがなさそうだから、途中で止まっていた朝食の準備を始めた。

 レオンは、
「そうだ。
 たしか、キッチンの小麦粉がだいぶ少なくなっていたようだ。
 忘れないうちに物置から運んでこよう」
と言って、そそくさとこの場から離れようとしている。

「なら。レオン。
 2袋持ってきて欲しいの。
 明日、孤児院に持っていくにこにこ焼きを焼くつもりだから」

「了解!」

 レオンはこっちに大きな背中を向けたままで、片手を上げた。

「そうやってると、レオンとポポって新婚さんみたいざんす」

「わーい。
 ラブラブの新婚さんだーい。
 オイラもレオンならポポを譲ってもいいぞ!」

 ここは吹出すところなんだろうけど、恥ずかし過ぎてそれどころじゃない。

「こら。
 そんな事いうとレオンに失礼でしょ」

 コロコロと笑い声を上げる2人を軽く睨む。つもりだったけど、つい口元がゆるんでできなかったの。

 おバカな私は。

 レオンと新婚さんみたいって言われて、お酒を飲んだようなフワフワないい気持ちになっていたから。

 ねえ。レオン。私はね。

『それは本当はオレが……ペペス村へ行ったリオン王子だから』

 あの時の言葉の真相を、絶対つきとめるつもりよ。

 だから、覚悟してて待っていてちょうだい。
 

 



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