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18、推しを見つけました
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翌日。
大通りにアイツを乗せた豪華な馬車がやってきた。
1度目の人生で私をドブネズミよばわりしたアイツの顔は、あいかわらず品性のかけらもない。
けど、王様の本性を知らない娘達は大騒ぎをしている。
「きゃあああ。
かっこいいー」
きっと本人が1番そう思っているはずよ。
「素敵だわ。
まるでエルフだわ」
だとしたら腹黒なエルフがいたもんだわ。ふん。
馬車から手をふるリオン王様に飛ぶ黄色い歓声に、いちいちつっこみをいれているとリリーの声が耳をかすめた。
「ど、どうしよう。ポポ。
リオン王様が私にウインクをしたのよ。
あー、なんて尊いお姿なんでしょう」
声の方に視線を移すと、リリーが両手で胸をおさえてハアハアと呼吸を荒くしている。
どうやら萌え死に寸前のようだ。
「リリー目をさましてよ。
アイツは女の子の歓声をあびて調子にのってるだけなんだから。
マカとロンはリオン王様みたいな大人になるんじゃないわよ」
吐き捨てるように言うと、右手はマカと左手はロンと手をつないでいた私は、リオン王に冷たい視線をむけた。
「わあ。最悪」
その瞬間アイツと目と目があってしまったのだ。
しかも、その時。
アイツはまるで不快な物でも見たように、ギュッと眉をよせたのよ。
「2度目の人生でもやっぱり私達の相性は悪そうね。
そうだ、思いだしわ。
王様が町を視察する時には、護衛騎士の何人かは平民を装って町にまぎれこんでいたことを。
どうやらレオンは今日はそっち担当のようね。
町をぶらついて探してみましょう」
私はマカとロンの手をひいて、人影がまばらになった方へ歩きはじめる。
「うん。わかった。
はやくポポがレオンに会えますよーに」
マカとロンが同時に可愛い声をだす。
「2人ともありがとう」
ニコッとして、大通りから少し離れた裏通りにさしかかった時だった。
「たいへんだ。たいへんだぞ。
さっき男が刺さされた!」
青い顔をした男が反対方向から、猛スピードで駆けてきたのは。
「やば。
オイラ、なんだか胸がザワザワするぞ」
「ワタクシも同じざます」
精霊達の勘は人間の何百倍も鋭い。
悪い予感に、すでにマカとロンは涙目になっているじゃない。
「刺された男ってレオンなのよね。
たぶん……」
そんなのヤだ。
まだ何も始まってもいないのに、もう終わりだなんて。
これじゃ、転生した意味がない。
心がポッキリと折れそうだったけど、まだ確定じゃないのよ、と自分を励まして気持ちを強くもつ。
「行くわよ! マカ、ロン」
猛ダッシュで現場へ向かうと、恋しい推しが血まみれになって道に倒れていたのだ。
とりあえず、推しを見つけました。
大通りにアイツを乗せた豪華な馬車がやってきた。
1度目の人生で私をドブネズミよばわりしたアイツの顔は、あいかわらず品性のかけらもない。
けど、王様の本性を知らない娘達は大騒ぎをしている。
「きゃあああ。
かっこいいー」
きっと本人が1番そう思っているはずよ。
「素敵だわ。
まるでエルフだわ」
だとしたら腹黒なエルフがいたもんだわ。ふん。
馬車から手をふるリオン王様に飛ぶ黄色い歓声に、いちいちつっこみをいれているとリリーの声が耳をかすめた。
「ど、どうしよう。ポポ。
リオン王様が私にウインクをしたのよ。
あー、なんて尊いお姿なんでしょう」
声の方に視線を移すと、リリーが両手で胸をおさえてハアハアと呼吸を荒くしている。
どうやら萌え死に寸前のようだ。
「リリー目をさましてよ。
アイツは女の子の歓声をあびて調子にのってるだけなんだから。
マカとロンはリオン王様みたいな大人になるんじゃないわよ」
吐き捨てるように言うと、右手はマカと左手はロンと手をつないでいた私は、リオン王に冷たい視線をむけた。
「わあ。最悪」
その瞬間アイツと目と目があってしまったのだ。
しかも、その時。
アイツはまるで不快な物でも見たように、ギュッと眉をよせたのよ。
「2度目の人生でもやっぱり私達の相性は悪そうね。
そうだ、思いだしわ。
王様が町を視察する時には、護衛騎士の何人かは平民を装って町にまぎれこんでいたことを。
どうやらレオンは今日はそっち担当のようね。
町をぶらついて探してみましょう」
私はマカとロンの手をひいて、人影がまばらになった方へ歩きはじめる。
「うん。わかった。
はやくポポがレオンに会えますよーに」
マカとロンが同時に可愛い声をだす。
「2人ともありがとう」
ニコッとして、大通りから少し離れた裏通りにさしかかった時だった。
「たいへんだ。たいへんだぞ。
さっき男が刺さされた!」
青い顔をした男が反対方向から、猛スピードで駆けてきたのは。
「やば。
オイラ、なんだか胸がザワザワするぞ」
「ワタクシも同じざます」
精霊達の勘は人間の何百倍も鋭い。
悪い予感に、すでにマカとロンは涙目になっているじゃない。
「刺された男ってレオンなのよね。
たぶん……」
そんなのヤだ。
まだ何も始まってもいないのに、もう終わりだなんて。
これじゃ、転生した意味がない。
心がポッキリと折れそうだったけど、まだ確定じゃないのよ、と自分を励まして気持ちを強くもつ。
「行くわよ! マカ、ロン」
猛ダッシュで現場へ向かうと、恋しい推しが血まみれになって道に倒れていたのだ。
とりあえず、推しを見つけました。
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