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16、ポポのにこにこ堂

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「大通りに面しているからお客さんを呼びやすそうね。
 うん。気に入ったわ」

 借りたばかりの小さなお店の前に、胸の前で両手をくんで立つ。

 アーチ型の扉を開くとすぐ店舗用の空間が現れ、その奥に住居用の部屋が2つ。

 くわえて2階にも2部屋ある。

「これだけあれば3人で暮らすには十分ね。
 マカとロンは私と同じ部屋でいいでしょ」

 そう言ってかがみこむと、そばにいる男の子と女の子の頭をヨシヨシとなでた。

「オイラとポポは将来結婚するんだから、全然問題ないぞ」

 丸顔でふわふわの金髪、青い半ズボンをはいた男の子が偉そうに胸をはる。

「マカはもう忘れたの?
 精霊と人間は結婚できないって事を」

 眉尻を下げると、今度は赤いスカートをはいた金色の巻き毛の女の子がキリリとした声をあげた。

「ポポ。
 マカみないなバカはほっとけばいいざんす」
と。

「そーうね。
 でもロンのその言葉使いはほっとけないわ。 小さな女の子が、ざます言葉っておかしいでしょ。
 もう2人ともどーして、家に入ったとたん人間の姿なんかになったのよ」 

「ポポはここでお菓子屋を始めるんだろ。
 ならオイラが協力するしかないじゃん。
 お菓子の精霊マカ様が水を扱えば、たちまち世界1美味しい水になるんだからな。
   この水を使えば最高のお菓子ができるってわけ」

「マカが水なら、ワタクシは火の使い手ざんす。
 この火で焼くお菓子は宇宙1美味しいざんすよ」

 なにげにマカにマウントをとったロンが、フンと鼻をならす。

「2人とも私のお店を手伝ってくれる為に、人間に化けたって事ね」

「うん!」

 2人が同時に声をあげた。

 それってものすごーく可愛いんですけど。

「そっか。ありがとう。
 じゃあ、さっそくお店の準備にとりかかるわね」

 パチパチと瞬きして魔法を駆使する。

 とたんに色々な物が、あっという間に空っぽの空間に収まってゆくのだ。

 お店には白いテーブルに同じ色の椅子。

 お菓子をつくる調理器具。

 住居にはベッド、お茶をする丸いテーブル、花瓶……。

 最後は窓に明るい色のカーテン。

 で、とりあえず全てが完了した。

「さすがポポ。仕事がはやいざます」

「本当は魔法に頼りたくないんだけど、ちょっとでも早く推しを探したいから使っちゃった。
 2度目の人生だけど、1度目の記憶と魔力が残っているのはありがたいわ」

 ニカッと笑顔でそう言ったものの、何か重大な事を忘れているようでコテンと首を傾けて考えてみる。

「たいへん。
 チチとカカに魔法郵便をだすのをすっかり忘れていたわ!」

 パチンと手をうつと、あわててスカートのポケットから魔法ビンセンをとりだし、ビンセンにむかって話し始めるのだ。

「チチ、カカ。
 無事に王都に到着しました。
 でね。
 王都でお菓子のお店を開く事になったの。
 場所は王宮の近くにあるタール市場の中。
 お店の名前は決まったら教えるね。
 そういうわけで、私はとっても元気だよ。
 チチとカカも身体に気をつけてね!」
と。

 このビンセンは音声で記録するしくみになっているから、面倒くさがりの私には最適なのだ。 

 そうだ。

 今、お店の名前をひらめいたわ。

「にこにこ堂」ってどうかな。

 私のお菓子を食べた人がにこにこ笑顔になれるようにと願いをこめたの。
 



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