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10、1度目の人生の最後

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「ポポ。頼みがある。
 オイラとロンを食ってくれ」

「マカの言うとおりにするざます。
 そうすればポポの体内の浄化ができるから」

 ふらつく私の耳元で、キラキラ輝きながらマカとロンが可愛い声で囁く。 

「ありがとう。
 でも、それってマカとロンが死んでしまうって……」
ことじゃん、て言いたいのに、唇がしびれて最後まで言葉にできない。 

「エリザ様。
 私は記憶だけ消すようにと、お願いしたはずですぞ。
 それなのに。
 なんていうことをしでかしてくれたんですか!」

「ああああ。神よ。
 哀れな聖女様をお救い下さいませ。アーメン」

 宰相の罵声と教皇の祈りの声が重なった時だった。

「兄上。
 いったいオレのポポに何をしたんだ!
 もうこれ以上黙ってはいられない!」

 今まで寡黙に扉の側で控えていたレオンが声をはり、目をつり上げている。

「ふええええーーー」

 レオンのあまりに想定外の言葉に驚きすぎて、ついマヌケな声を上げてしまう。

「しっかりして。
 王様はレオンの兄上じゃないでしょ。
 それにオレのポポって、どういう意味なのよう」

 必死に口をパクパクさせて一生懸命レオンに伝えようとしたけれど、ゼエゼエと呼吸が荒くなって、うまくいかない。

「最後にもう1度、村へ帰りたかったべ」

 脳内に再生された自然豊かなペペス村の光景や、私を拾ってくれたチチやカカの優しい笑顔に頬をゆるめたと同時に足がふらついて、床に倒れそうになった。

 が、突然横から伸びてきた太い腕に身体をギュツと抱きとめられる。

「こんな事になると知っていたら、ポポをペペス村に迎えに行くんじゃなかった。
 ポポ。しっかりしろ。
 毒はオレがすぐに吸い出してやるぞ」

 ちょっと待ったあ。

 レオンたら、勘違いしてるよ。

 村に迎えに来たのはレオンじゃないって。

 リオン様だって。

 ちゃんと教えてあげなくっちゃいけないのに、激しい眠気に襲われて目を閉じてしまう。

 フフフ。案外レオンってバカなんだね。
ってニヤケた時、柔らかい何かが私の唇にグイッと重ねられた。

 それは息ができないほど、長いキスだったの。

「ど、どうして、レ、レオンが、わ、私に口付けするのよ。
 い、意味わからないじゃない」

 今度はなんとか言葉にできた。

「それは本当はオレが……」

 レオンは途中で言葉をきると、綺麗な顔を苦しそうにゆがめながら支離滅裂な言葉をはく。

「ペペス村へ行ったリオン王子だから」

 そっか。これは妄想なんだ。私の頭はもうすっかり毒されてるってわけね。

 っと思った瞬間、レオンの分厚い胸の中にグイと引き寄せられた。

 と同時に永遠の私の推しの爽やかな香りが鼻孔を通りぬけ、フッと意識が明るくなる。

 ねえ。

 やっぱりレオンは私の推しだった
のね。

 でも、レオンはリオンじゃないし、王様の専属護衛騎士よ。

 話が全然みえない。

 ああ、モヤモヤイライラするよー。

 こんな気持ちのままで死にたくない。

 もっと生きたいよー、

 ギュッとマブタをつぶって祈りまくる。

 けど、ダメだった。

 とうとう私は完全に意識を手放してしまったのだ。

 こうして1度目の人生がつんだ。








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