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9、2人の悪魔 エリザ視点

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「元聖女様。
 はやくこれを飲んで全てをお忘れ下さい。
 ここで起きた事はなかった事になりますから。
 そうすれば、リオン様もどうする事もできませんわ」
と、私はポポに毒薬を差し出した。

 そう毒薬を。

 記憶を消す薬なんて生やさしいモンじゃない。

 持っている私の知識を総動員させて作った、レベルの高い毒欲だった。

「わかったわ」

 そうとも知らずポポは、私の美しい手からガラス瓶を受け取ると、一気に飲みほした。

 これで聖女はおわった!

「私の記憶を消すだけじゃなかったの。
 エ、エ、エリザ。
 い、い、いったいどうしたなの?」

 心の中で高笑いしていると、ポポが真っ赤な血をはきながら声をしぼりだした。

「決まってるじゃない。
 オマエが目障りだったからよ」

 どうしてっかて?

 私はとっくに気がついていたから。

 ポポは出来損ない聖女なんかじゃない。

 それどころか、最強の魔法の使い手であることに。

 しかもリオン様は本当はポポにひかれている。(リオン様がまだ自分の気持ちに気がついていないのが幸いだったけど)

 もしも、なにかのきっかけで。

 リオン様とポポ聖女が愛し合うようになったら、シュメールをつぶす事は100パーセント不可能になるだろう。

 ポポは真実の愛に出会った時、最強の力を発揮する。そんな予感がしたから。

 私がポポを初めて見たのは、王宮で催されたリオ王の誕生パーテイの夜だった。

「計画どおり、シュメールへ到着したわ」

 翼のように両手を広げて母国から飛び立った私が、王宮のバラ園に到着した時だ。

 背後から低い男の呟きがした。

「聖女のヤツめ。
 オレを見るたび、『ちがう。私の推しはこの人じゃない』ってほざきやがって。
 今度言ったら首をへし折ってやるぞ。
 こんな事なら、オレがペペス村に聖女を迎えにいけばよかった。
 そうしていれば、今頃聖女はオレを愛したはずだから。
 クソっ。なんでこんな事を考えるのだ」

 とっさに草の茂みにかくれ、ソウッと男の様子をうかがう。

「あ!」

 私は思わず、驚きの声をあげそた。

 月明かりに照らされたその男の顔は、彫刻のように美しい。

「あれは間違いなくリオン王だわ。
 笑っちゃうほどサルラにそっくりね。
 リオン王は聖女に片思い中ってわけか」

 なぜかイラッとした。

 フンと鼻をならして、リオン王の視線の先をおえば、キラキラと輝く光の粒子に包まれた少女が夜空を仰いでいる。

「ねえマカとロン。
 さっきの大きな流れ星に願ったんだ。
 はやく聖女をやめれますよーに、って」

「ポポ。そうなったらオイラと結婚してくれ」

「ポポ。そうなったら私とどこかでお菓子のお店を開くざます」 

 抜群の聴力をもつ私の耳には彼らの会話が届き、抜群の視力をもつ私の目は精霊の姿をとらえた。

「あんなに普通に精霊と話せるなんて、あの子の潜在魔力は驚くほど強いはずよ。
 覚醒する前に手をうたないと」

 私は勢いよくリオ王の前に飛び出すと、さっそくリオ王に魅了魔法をかけたのだ。



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