転生聖女!2度目の人生は推し(捨てられた王子)に溺愛されてます

りんりん

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4、レオン護衛騎士

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『ありがとう。
 これから、僕が全力でアナタをお守りします』

 推しは聖女になると決めた私にこう約束した。

 きっとこの人はあの時のリオン王子に違いない。

「ねえ。今まで一体どこに隠れていたのよ。
 王宮にあがってから、ずーと探してたんだから」

 やっと会えた喜びで涙があふれそうになるのを、グッとこらえて彼の顔を見上げる。

 なのに、なのに。

 そこには尊い推しの姿はなかった。

「私はどこにも隠れていません。
 常に王様のお側に控えていましたが。
 聖女様は実に面白い事を言うのですね」

 唇を引き結んだ厳しい顔で、ポカンとする私を見下ろすのは王様の護衛騎士。

 レオンだった。 

「なーんだ。つまらない。
 レオンだったの……」

 心底落胆した。

 悪いと思いながらも、ガクリと肩を落として太くて長いため息をついてしまう。


 けれど、生真面目な彼を当惑させる気は心底ない。

「良かったじゃない。
 悪魔よりレオンの方が千倍マシだもん」
と自分で自分をなぐさめる。

 レオンは王宮一強い騎士である。

 日焼けした肌に琥珀色の鋭い瞳。

 服の上からでもわかる鍛えあげられた身体の上には、りりしい短髪の整った顔。

 レオンと王様が並ぶと、一対の美しい彫刻のようだった。

 髪の色も瞳の色もまるで違うのに、同じ芸術家から同じ石で彫られたような、とてもよく似た像である。

 レオンはまさか前王様の隠し子? なんちゃってね。

 女たらしだったというサルラ王なら、やりかねないか。

「聖女様。
 王様はすでにお着きです。
 王様のいらっしゃるお部屋に案内しますので、私について来て下さい」

 レオンは私を身体から離すと、マントをヒラリと翻してきびすをかえした。

 マントが奇麗な半円を描いて宙に舞う。
 
 その瞬間だった。

 あまりに懐かしい柑橘系の香りがした。


「いい匂いね。
 昔、私が出会った推しと同じ香りだわ。
 私、鼻だけはいいんだから間違いないの。
 彼は言ってたわ。
 自分用に特別に調香してもらったって。
 ねえ。教えて。
 レオンはどこでそれを手に入れたの」
 
 先をいそぐ大きな背中に向かって、サラリと探りをいれてみる。

 王宮で暮らしていたんだもん。

 王子様の持ち物は唯一無二って事ぐらいは学習した。

 さっきのセリフといい、この香りといいどうも怪しい。

 ひょとしたら、レオンは推しについて何か知ってるんじゃないかな。

   1つの疑惑が頭に貼りついてはなれない。

 がぜん彼の正体を暴きたくなったじゃない。

 
 


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